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目次 「前向きな職場に」が空回りする原因 言葉を行動に変えるチームビルディング リスナーさんからのご質問、激詰め上司への処方箋 「30分後に謝りに行く」リーダーが示す組織文化の変え方 Potage株式会社代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  組織開発の専門家であり「シンクリ!」相談所所長の、株式会社ZENTech(以下、ZENTech)の代表取締役社長CEO 金亨哲さん(ひょんちょるさん)、そして感情知性EQの専門家であり副所長の私・河原あずさ、ナビゲーターのきのせまりさんの3人でお届けする音声番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」。その第3回放送が配信されました。今回はその内容をレポートしていきます。 「前向きな職場に」が空回りする原因  今回の放送で取り上げたのは、こんなお悩みです。  「前向きな職場に」という職場方針が発表された直後の打ち合わせで、同僚が上司から必要以上に感情的な激詰めを食らっていた。「前向きってスローガンだけだな」「前向きなつもりなのは上司だけだな」。それに上司は気づいていないし、気づく気配もきっかけもない。気づかせてあげるリスクが高すぎてやりたくないーー。全方位的に諦めています、という切実なご相談です。  ひょんちょるさんは、この相談に対して「非常にあるある」だと反応しました。スローガンと実態がまったくかみ合っていない状況。こうした「言葉が宙に浮いている」光景は日常的に起きています。  ここで問題の根っこにあるのは、抽象的なスローガンが生む「解釈のズレ」です。私は言葉を使う仕事をしていますので、1on1やファシリテーションの場面で常に気をつけていることがあります。それは「言葉の定義」です。 よく使われるスローガン的なキーワードと、一人ひとりが思い描く解釈が全然違うということは、本当によく起きます 。たとえば「成長」という言葉一つとっても、思い描く成長の姿も速度も人によってまったく異なる。その捉え方の違いが、マネジメントにおける深刻なすれ違いの温床になるのです。  ひょんちょるさんからは「挑戦」という言葉も同様にズレが生じやすいと指摘がありました。 挑戦しろと言われても、新しい営業先のドアをノックするだけで挑戦だと感じる人もいれば、外に飛び出して新商材を売りさばくことを挑戦と捉える人もいる 。言葉の粒度がまったく違うのです。チームビルディングの土台となる相互理解が、 実はスローガンひとつで簡単に崩れてしまう 。これは、中間管理職にとっても見過ごせない問題です。 言葉を行動に変えるチームビルディング  では、こうした解釈のズレをどう解消すればいいのでしょうか。ファシリテーションの王道としては、 「場面を想起させる」手法が有効 です。「前向きな職場の状態ってどんな状態?」という問いを全員に投げかけ、それぞれが思い描く姿を出し合う。すると、おそらく全員が違う答えを返してくるはずです。 そこを揃えにいく対話型マネジメントの実践こそが、チームビルディングの第一歩 になります。  しかも、もう一つ大事なのは、「前向きとはこういうことである」と上から定義を押し付けることが、果たして「前向き」なのかという、メタ的な問いも生まれてくるということです。 みんながしっくりくる範囲で、前向きの方向性を見つけつつ、Aさんにとってはこれが、Bさんにとってはこれが前向きな行動なのだと、個々の違いにも着目して相互理解を深めていくことが重要 です。  ここで、ひょんちょるさんが興味深い事例を紹介してくれました。ある企業では、 心理的安全性の高い職場を作るために、あえて「心理的安全性」という言葉を徹底的に使わなかった というのです。心理的安全性という言葉を聞くと、どうしても 「ぬるい職場なのでは」と誤解する 人が出てきてしまう。だから、たとえば「話しやすい職場を作りませんか」と言い換える。話しやすい職場を作ることにNOと言う人は、そうそういません。   抽象的なスローガンではなく、具体的な行動指針に落とし込む 。数値化しやすいもの、みんなが腹落ちしやすい言葉に変換する。それだけで、組織文化の醸成における浸透の難易度はぐっと下がります。これは現場で使えるチームビルディングの技術です。 リスナーさんからのご質問、激詰め上司への処方箋  では、相談者の方は具体的にどうすればいいのでしょうか。  ひょんちょるさんは、こうアドバイスしました。「全方位的に上司を変えようとするのは難易度が高すぎる。 特定のシチュエーションで、こういう行動はなくしてほしい、こういう行動を増やしてほしいというピンポイントの気づきを渡すほうが、ずっとライトにできるはず 」。  これは、EQを活用したコーチング的アプローチそのものです。 EQとは、自分や他者の感情を理解し、適切に扱う能力のこと 。部下育成がうまくいかないと感じている管理職の方も少なくないと思いますが、相手の行動を丸ごと否定するのではなく、具体的な場面にフォーカスしてフィードバックを返すことが、マネジメントの質を変える鍵になります。  たとえば、上司が素敵な声がけをしたときに、すかさず称賛を返す。「課長のあの一言、すごく良かったです」と伝えるだけでも、上司は「こういう行動をすると部下が喜ぶんだ」と学習します。 その小さなフィードバックの積み重ねが、この場合でいくと、激詰めの場面を徐々に減らしていくことにつながる のです。  管理職が向いていないのではないか、自分のリーダーシップに自信がないと悩んでいる方もいるかもしれません。しかし、 大切なのは完璧なリーダーになることではなく、こうした「小さな一点突破」のコミュニケーションを日常的に実践できるかどうか 。EQの視点を持つことで、相手の感情に配慮したコーチング的な関わり方が自然にできるようになっていきます。 「30分後に謝りに行く」リーダーが示す組織文化の変え方  放送の中で、ひょんちょるさんが紹介してくれたエピソードが非常に印象的でした。ある硬い組織のトップの方が、研修の場で語ったそうです。  「 時間がタイトなとき、どうしても強い言葉を使ってしまうことがある。でも、30分後に必ず謝りに行くようにしている。部下にも『強い言葉を使ってしまうことがあるけれど、30分後に必ず謝りに行くから、一旦聞いておいてほしい』と周知している 」と。  これはまさに 「バルネラビリティ(弱さの自己開示)」の実践 です。人事やマネジメントの世界で注目されている概念で、自分の弱さをさらけ出せるリーダーになりましょうという考え方です。「自分にはこういうところがあるからごめん、ちゃんと後で謝るから」と言えること。 自分に非があったとオープンにできること。これは非常に心理的安全性の高いマネジメントであり、共感型リーダーシップの真骨頂 です。  叱ること自体がダメなわけではありません。ネガティブなフィードバックも時には必要です。大事なのは、 その後にどうコミュニケーションを取るか。そして、「自分はこういう人間なんだ」ということを、いいところも悪いところも含めて開示できる関係性のベースがあるかどうか。こ の小さな自己開示の積み重ねこそが、組織文化を内側から変えていく力になります。  最後に、きのせさんがこう振り返ってくれました。 「心理的安全性のある職場を作っていくには、小さな行動の積み重ねがとっても大事。その行動に落ちる言葉をみんなで目線合わせしていかないと、まるっとまとめても、なかなか心理的安全性は得られないんだなと改めて感じました」。 まさにその通りです。 壮大なスローガンよりも、日々の言葉を丁寧に揃えること。行動に対して、互いにフィードバックを返すこと。自分の弱さを認めてオープンにすること。 そうした地道なチームビルディングの先に、心理的安全性あふれるチームが育っていきます。  「シンクリ!」では、引き続き皆さんのリアルなお悩みに、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のEQの知見を掛け合わせながら、解決のヒントを探っていきます。   stand.fm のコメント欄では、放送の感想やご質問、お悩み相談を受け付けています。皆さんから届くヒントの種が、番組のトークの題材になっていきますので、ぜひ気軽に投げ込んでくださいね。

2026年4月14日

最終更新日:

スローガンだけでは組織文化は変わらない!心理的安全性を高めるチームビルディングのヒント

「前向きな職場」が空回りするのはなぜ?心理的安全性と組織文化の関係を、チームビルディングの専門家たちが実例で解説します。

河原あずさ(Potage代表)

目次 板挟みの正体──上と下から引っ張られる消耗の構造 なぜ「もっと頑張れ」では変わらないのか 「整える」という視点──鍛えるでも放任でもない距離感 板挟みはあなたのせいではない、でも変えられる 板挟みの正体──上と下から引っ張られる消耗の構造  中間管理職という役割で板挟みに苦しんでいる方は、少なくないのではないでしょうか。上からは「数字を出せ」「若手を育てろ」「定期的に1on1を実施しろ」「心理的安全性のあるチームをつくれ」と、次々に高度な要求が降ってきます。一方、下からは「もっと関わってほしい」「でも細かく干渉しないでほしい」という、矛盾したメッセージが届く。そして、自分自身のプレイヤーとしての業務量は一切減りません。  なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。  答えはシンプルです。今の日本企業の多くが、 「プレイヤーとして優秀だった人」を、そのままの業務量を抱えさせた状態で管理職に昇格させるという構造を取り続けているから です。  彼ら彼女らは、もともと現場の最前線で成果を出してきたトップパフォーマーたちです。当然、その人が現場から完全に抜けてしまえば、短期的にはチームの数字が回りません。だから昇格したあとも「プレイングマネージャー」として、重要顧客や難易度の高い実務を抱えたままになります。しかも「マネージャーとは何か」と誰に教わるわけでもなく、「自分でどうするかは考えなさい」と現場に放り出されるわけです。  そんな中間管理職が、やっとの思いで1on1の時間を捻出したとしましょう。けれども頭の片隅には未処理のタスクがちらついていて、PCの通知音が鳴るたびに視線が泳いでしまう。部下は、その微妙な空気を残酷なほど正確に察知します。「ああ、この人は忙しいんだな」「本当は自分の話をじっくり聞きたいわけではないんだろうな」──そう感じた若手は、それ以上相談して時間を奪うのは申し訳ないと遠慮し始めます。良かれと思って設定したはずの面談が、逆に若手の心を少しずつ遠ざけていく。これは 個人の努力で解決できる次元を超えた、「構造的なエラー」 と言えるのではないでしょうか。 なぜ「もっと頑張れ」では変わらないのか  若手の離職やチームの機能不全に危機感を抱いた企業が、こぞってマネジメント研修を実施します。1on1のやり方、傾聴技法、効果的なフィードバックの手法。どれも大切です。けれども、どれだけ質の高い研修を受けても現場が変わらないケースが後を絶ちません。その理由は明確です。 問題の本質が「スキルの欠如」ではなく、「構造の欠陥」と「感情認識の希薄化」にあるから です。  忙しすぎる中間管理職を追い詰めているのは、実は物理的な忙しさだけではありません。その 正体は「感情の混乱」 です。やるべきことと、やらなくていいことの仕分けができなくなっている──そんな心理状態に陥っています。  以前、ある企業の中間管理職の方との対話で、ハッとさせられる言葉がありました。「頭ではわかっているんです。でも、次から次へと降ってくるタスクの前で、どれが本当にやるべきことで、どれがやらなくていいことなのか、もう分けられなくなっているんです」。  これは、たとえるなら、肩こりがひどくなりすぎた身体のような状態かもしれません。首や肩がガチガチに固まってしまうと、自分ではどこが凝っているのかすら、もうわからなくなりますよね。痛みに慣れてしまって、本来の楽な状態がどんなだったか思い出せなくなる。中間管理職の「感情の混乱」も、それとよく似ています。あらゆる業務が自分を経由しないと進まない「組織のボトルネック」と化してしまい、一部の過剰な当事者意識が、チーム全体のパフォーマンスを静かに落としていくのです。  EQ(感情知能)の文脈では、この状態を「現状認識力の不足」と呼んでいます。EQのポテンシャルが低いのではありません。あまりのプレッシャーによって、感情と適切な距離を取る「ニュートラルな状態」を失い、現状を的確に認識する力を失っているだけなのです。EQとは感情を押し殺す技術ではなく、感情を情報として読み取る力です。その力が、忙しさの渦の中で埋もれてしまっています。 【ここまでのポイント】 板挟みは個人の努力では解決できない構造的なエラー 問題の本質は感情の混乱と構造の欠陥 スキルより先に「感情を整える」ことが必要    「整える」という視点──鍛えるでも放任でもない距離感  では、どうすればいいのでしょうか。  私たちPotageは、中間管理職の課題に向き合うとき、「鍛える」とか「がんばらせる」という言葉を使いません。意図的に 「整える」 という言葉を選んでいます。余計な緊張の糸を優しくほどいて、その人が本来持っている力と感情が自然に発揮できる状態に戻していく。それが「整える」の意味です。  私はよく、この「整える」をピアノの調律師にたとえます。調律師は、自分で鍵盤を弾いて演奏するわけではありません。一本一本の弦に耳を澄ませて、張り詰めすぎている弦は少しだけ緩め、緩みすぎている弦には少しだけ張りを与える。そうやって、すべての弦がちょうどいいバランスで響き合う状態をつくっていきます。一本の弦だけが限界まで張り詰めていたら、どんなに美しい曲を弾こうとしても、そこだけ音が割れてしまいますよね。組織もまったく同じではないでしょうか。  中間管理職に求められる「寄り添い」も、この調律師の姿勢と重なります。それは、べったり張り付いて部下の一挙手一投足に口を出す「過干渉」でもなければ、「君を信頼しているから自由にやっていいよ」と手を離す「放任」でもありません。部下に関心を持ちつつも干渉しすぎない、自立した距離感を保つこと。ニュートラルな位置に立ち、本当に必要なタイミングでだけ適切なチューニングをかける。それが真の心理的安全性を支えるマネジメントなのかもしれません。  では、具体的に何から始められるでしょうか。小さな、しかし確かな一歩を2つご紹介します。 1.1on1の問いをEQ的に変えてみる  「今、困っていることは?」という業務ベースの問いではなく、「最近の仕事で、いちばん心が動いた場面は?」と聞いてみてください。この問いには、相手のモチベーションの源泉や、目に見えないストレスなど、感情のヒントが詰まっています。そしてその答えを、チームの構造として「どこにボトルネックが隠れているのか」を見つける手がかりにしてみてください。 2.週に一度、15分の「定点観測」の時間を取る  自身の業務の手をいったん完全に止めて、チーム全体を俯瞰で眺める時間を確保してみてください。「今、うちのチームの弦はどこが緊張しすぎているか? どこが緩みすぎているか?」を調律師の視点で考えてみる。この定点観測の習慣が、手遅れになる前の小さなチューニングを可能にします。 板挟みはあなたのせいではない、でも変えられる  板挟みは、構造の問題です。個人の努力には限界があります。  日本の多くの組織が抱える課題の中心には、いつも責任感ゆえに孤独に戦う中間管理職の姿があります。彼ら彼女らを責めるのではなく、構造の犠牲者として救い出すこと。そしてチームが持続的に成果を出せる 「構造と環境」 を整えることこそが、中間管理職の本来のミッションなのかもしれません。 自分自身がプレイヤーとして目先の成果を出すことではなく、メンバーが自律的に動きやすく、失敗から学べる安全なチームをつくること。その視点の転換が、板挟みから抜け出す第一歩になるのではないでしょうか。  あなたのチームの弦は、今どこが張り詰めていますか。   ▼ もっと深く知りたい方へ この記事の元になったCOMEMO記事「EQ時代の中間管理職サバイバル論①」では、構造的な課題と感情の混乱についてさらに詳しく解説しています。  EQ時代の中間管理職サバイバル論①(COMEMO)

2026年4月12日

最終更新日:

中間管理職の「板挟み」はなぜ起きるのか。その正体と、抜け出すための視点

中間管理職の板挟みは、あなたのせいではありません。上と下から引っ張られる消耗の構造を理解し、EQと心理的安全性の実践で、新しい距離感を築く方法。

河原あずさ(Potage代表)

目次 リスナー最大の悩み「石像会議」。誰も発言しない会議が生まれる構造とは 「会議の面積」を最小化し、ファシリテーションで発言を引き出す EQを活かした意思決定とセンスギビング まとめ:心理的安全性の高いチームビルディングは一歩ずつ  Potage株式会社代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  組織開発の専門家であり「シンクリ!」相談所所長の、 株式会社ZENTech の代表取締役社長CEO 金亨哲さん(ひょんちょるさん)、そして感情知性EQの専門家であり副所長の私・河原あずさ、ナビゲーターのきのせまりさんの3人でお届けする音声番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」。その第2回放送が配信されました。今回はその内容をレポートしていきます。 リスナー最大の悩み「石像会議」。誰も発言しない会議が生まれる構造とは  事前アンケートで「あなたが最も処方箋が欲しいモヤモヤは何ですか?」と聞いたところ、一番多かった回答が「石像会議」でした。 石像会議とは、リーダーや声の大きい人だけが話していて、他のメンバーは石像のように黙っている会議 のこと。マネジメントの現場では、リーダーは「なんとか前に進めなきゃ」と思っている一方で、メンバーは「また、あの人ばっかり話してるな」と感じている。双方にすれ違いが生じている、典型的な会議のパターンです。  ひょんちょるさんは、石像会議が生まれる 大きな要因のひとつとして参加人数の多さを指摘 しました。「あの人を呼んだなら、この人も呼ばないと角が立つ」「一応いた方がいいかも」という配慮が積み重なり、発言しづらい空気が生まれてしまう。呼ばれた側も「なぜ自分がここにいるのか」が分からず、黙り込んでしまう。さらに、なぜ呼ばれたか分からない人がいること自体が、他の参加者の発言を萎縮させるという悪循環も生まれます。リーダーシップやファシリテーションの問題以前に、 会議の「構造」そのものが心理的安全性を損なっている場合が少なくない のです。 「会議の面積」を最小化し、ファシリテーションで発言を引き出す  では、石像会議をどう変えていけばいいのか。放送では具体的な処方箋が語られました。  まず、ひょんちょるさんが紹介してくれたのが 「会議の面積を最小にする」 という考え方です。これは、あるクライアントさんで使われていた共通言語だそうです。 会議の「面積」とは、参加人数×時間のこと 。つまり、人数を減らし、時間も短くすることで、会議にかかる工数を最小化しようというマネジメントの発想です。 アジェンダに関係ない人を極力呼ばず、役割がきっちり明確な最少人数で会議を行う 。これだけで、心理的安全性の高い議論が生まれやすくなります。  人数を絞った上で大切になるのが、発言量を均等にするファシリテーションです。ひょんちょるさんは、 ファシリテーターを毎回輪番にすることを提案 していました。同じテーマの会議でも、 ファシリテーターが変わると発言する人の構成も変わり、回数を重ねるごとにチーム内の発言の多様性が生まれる そうです。  私からは 「あえて喋らせない時間を作る」 というティップスをお伝えしました。議論に入る前にまず 全員に意見を書いてもらい、集めて読み上げてから話し合いを始めるというやり方 です。喋るのが苦手でも、書いてと言われると書ける人、意外と多いんですよね。 記名せずに書いてもらえば、声に出しては言いづらい本音を拾うこともできますし、意見のばらつきを可視化することで全体像を掴んでから議論に入れるというメリットもあります 。  会議冒頭に アイスブレイクを短くやる ことも効果的です。 第1回放送 のタピオカミルクティーのワークのように、全員が声を出して参加する時間を最初に設けることで、場の心理的安全性が一気に高まります。 EQを活かした意思決定とセンスギビング  石像会議では声の大きい人の一声で物事が決まりがちですが、では心理的安全性の高い組織ではどう決めるのか。ひょんちょるさんの答えは明快でした。 「決めるまでの段階では多様な意見を出す。でも、決まった後は、たとえ自分が賛成していない部分があっても、チームでコミットする」 。そして、 決めるときは多数決ではなく、権限のある人がきちんと決める 。なぜなら、 多数決では少数意見を持つ人が置き去りにされ、長いものに巻かれる構造が生まれてしまうから です。  私たちは学級会の頃から多数決に慣れ親しんでいますが、マジョリティの意見が常に採用される仕組みでは、多様性や心理的安全性は担保されません。EQを活かしながらリーダーが責任を持って決断し、その意味をチームに伝えていく。これが、心理的安全性の高い組織におけるリーダーシップのあり方です。  この文脈で話題に上がったのが「センスメイキング」と「センスギビング」という概念です。 センスメイキングとは、上から降りてきた目標や不条理な状況の中で「なぜこれをやるのか」という意味を自分で見つけること 。そして センスギビングとは、見つけた意味を部下や組織に渡すこと です。ひょんちょるさんは、多数決で決めたがるリーダーは、上から降りてきたものをそのまま流しかねない人だと指摘しました。 自分たちで意味を見つけ、それをチームに手渡せるかどうか。これがマネジメントの質を左右し、心理的安全性の高い組織文化をつくる鍵になる のです。  センスメイキングはそれなりにできる方が多い一方で、 課題はセンスギビングの方 だなと私は感じました。自分の中では腹落ちしていても、その解釈をメンバーに届けることは簡単ではありません。理解していることと、それを相手に伝えて行動につなげることは別の技術です。ひょんちょるさんは「何度も何度も、違う伝え方で伝えるしかない」と話していました。1on1で伝えるのと全体会議で伝えるのでは違うし、文章と口頭でも違う。 一回で全部渡そうとせず、小さく小分けにして、頻度を多めに出していく 。これが大事なのだと思います。  私自身も、社内ポッドキャストという取り組みを今年から始めました。週に1回、10分程度、私が経営の視点で見ている景色や意思決定の背景を話して、文字起こしと一緒にSlackに投稿しています。ひょんちょるさんも、ウィークリーレポートをSlackに貼って、メンバーの活躍のハイライトなども含めて発信しているそうです。 日々のこうした蓄積が、少しずつセンスをギブしていくことにつながる 。チームビルディングの基盤となる組織文化は、こうした地道なコミュニケーションの積み重ねでつくられていくのだと、お互いの実践を共有しながら実感しました。 まとめ:心理的安全性の高いチームビルディングは一歩ずつ  放送の最後には、ナビゲーターのきのせまりさんから、リスナーのコメントが紹介されました。手探りで始めた番組に声が届くのは、本当にうれしいことです。コメントは stand.fm で受け付けています。放送の感想や質問、なんでも大歓迎ですので、ぜひどしどしお便りをお寄せください。  今回のシンクリ!第2回では「石像会議」をテーマに、心理的安全性の高い会議づくりのヒントをたくさん語り合いました。 ポイントを整理すると、会議の面積を最小にすること(人数と時間を絞る)、ファシリテーションの工夫で発言を引き出すこと、そして意思決定はリーダーが責任を持って行い、センスギビングとしてその意味をチームに伝え続けることの3つ です。  どれも一気に変える必要はありません。ひとつずつ、小さく試していく。その積み重ねが、石像会議を心理的安全性あふれる対話の場に変えていくのだと思います。マネジメントに悩むすべてのリーダーにとって、この記事がチームビルディングの何かのヒントになればうれしいです。  次回のシンクリ!もお楽しみに。 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 先行10名様限定・特別価格でご案内しています。

2026年4月6日

最終更新日:

“自分ばかり話してる”と悩む管理職へ――石像会議を変える心理的安全性とリーダーシップの技術

「石像会議」に悩むリーダーへ。心理的安全性の高いチームをつくるには、会議の構造を見直すリーダーシップとEQを活かしたファシリテーションが鍵です。

河原あずさと36.5編集部

「メンバーに寄り添いなさい」「1on1をちゃんとやりなさい」……管理職へのそうした要請は年々増えています。頭ではわかっていても、プレイング業務を抱えながら実践するのは簡単ではないのではないでしょうか。  本記事では、心理的安全性とマネジメント能力の関係を整理した上で、EQ(感情知能)をベースにした具体的な実践ステップを紹介します。「何から手をつければいいかわからない」という方にとって、一つの手がかりになれば幸いです。   目次 心理的安全性が上がらない、本当のボトルネック 課長職が直面している現実 マネジメント能力を阻む「手放せない」問題 手放しができると、何が変わるか 心理的安全性を高める3つの実践ステップ まとめ Potage36.5公式LINE   心理的安全性が上がらない、本当のボトルネック  エンゲージメントサーベイの結果をさまざまな企業で見ていると、ある共通の傾向が浮かび上がります。 課長職あたりの中間管理職のエンゲージメントの高低と、若手社員のエンゲージメントの高低に、一定の相関がある ということです。  管理職が疲弊していると、その空気がチーム全体に伝播し、若手のモチベーションも下がっていく。 心理的安全性が上がりきらないボトルネックは、多くの場合、中間管理職にある のです。 課長職が直面している現実  今の課長職の方々が置かれている状況は、こんな構造になっていることが多いのではないでしょうか。 プレイヤーとして優秀なまま、管理職に昇格する プレイング業務を抱えたまま「人も見なさい」と要請される 1on1・スキル開発・キャリア支援……役割が次々と積み上がる 結果として、メンバーとの向き合いが後回しになる  この状態が続くと、若手は「ちゃんと見てくれていない」と感じ、心が離れていきます。1on1の形骸化は、心理的安全性が崩れ始めているサインのひとつかもしれません。   マネジメント能力を阻む「手放せない」問題  マネジメント能力の向上を考える上で、 多くの管理職の方が直面する壁が「手放し」の問題 です。 手放し:自分が担っているプレイヤー業務を、メンバーに委ねること   優秀なプレイヤーほど「自分がやった方が早い」「この仕事は自分にしかできない」という感覚を持ちやすいものです。しかしこの状態が続く限り、チームと向き合う時間は生まれません。 手放しができると、何が変わるか メンバーにやりがいのある仕事が行き渡る マネージャー自身に余裕が生まれ、チームと向き合えるようになる 心理的安全性が高まる好循環が始まる    逆に手放しができないままだと、管理職のエンゲージメントが下がり、若手のエンゲージメントも下がるという悪循環に陥りやすくなります。1on1は設定されていても、課長がアップアップの状態では「忙しいんだから」という空気が端々に出てしまう。その空気を敏感に感じ取った部下は、少しずつ心を閉ざしていくのです。   心理的安全性を高める3つの実践ステップ  では、具体的にどう動けばいいのでしょうか。ここでは、EQ(感情知能)を軸にした3つのステップを紹介します。 EQとは、ニュートラルに物事の状態を捉え、感情との距離感を自分なりに調整する力のこと です。 STEP 1:EQで「手放し」の判断軸をつくる  手放しが苦手な方の多くは、「任せたら品質が下がるのでは」「メンバーに負担をかけてしまうのでは」という不安を抱えています。EQを知ることで、こうした自分の感情を客観視しながら「本当に自分がやるべきことか」を冷静に見極めやすくなります。  EQを知り活かせる人ほど手放しが上手で、チームメンバーとの向き合いもうまくいっている傾向があります。まず、自分自身の感情の動きを観察することが第一歩です。 STEP 2:メンバーの特性を見極め、チームを「調律」する  仕事をメンバーに任せ、その動きを定点観測しながら、得意・不得意やモチベーションの源泉を見極めていきます。その上で、役割を整理していきます。 攻める役割:提案・推進が得意なメンバー 守る役割:品質・安定を担うメンバー 受け止める役割:調整・フォローが得意なメンバー  この構造が整ってくると、メンバーの得意に合わせた役割分担が定着し、チームの関係性が少しずつ滑らかになっていきます。構造がうまく機能し始めると、メンバーは自走の中で動き出すことが多いのです。 STEP 3:声がけで「関係性のバグ」を早めに直す  チームのボトルネックは、往々にして「関係性のバグ」から生まれています。 メンバーの能力と、周囲の期待値のギャップ メンバー間に生じている、見えにくい摩擦  こうしたバグを見つけてポイントポイントで声がけをすることが、チームを「調律」していく要です。べったり管理するのでも、放任するのでもなく、 「あなたのことを見ていますよ」という関心を示しながら干渉しすぎない。この絶妙な距離感こそが、EQを活かした「寄り添い力」の本質 ではないでしょうか。   まとめ  ここまでの内容を整理します。  プレイヤーからマネージャーへのアップデートは、一朝一夕にはいきません。しかし、 EQの力を借りながら少しずつ自分なりの「寄り添い方」を見つけていくこと ……それが、チームの心理的安全性を育てる確かな一歩になるのではないでしょうか。 「現場で使えるヒント」を中心に、管理職の方に向けた内容を配信中。 以下のリンクから公式アカウントを友だち追加できます。 https://lin.ee/RkmgGuT 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 先行10名様限定・特別価格でご案内しています。 このテーマについて、Potage代表・河原あずさが 日経COMEMOでより深く語っています。 関心のある方はぜひ読んでみてください。

2026年4月6日

最終更新日:

課長職のマネジメント能力と心理的安全性を高める3つのアプローチ

「メンバーに寄り添いなさい」「1on1をちゃんとやりなさい」……管理職へのそうした要請は年々増えています。頭ではわかっていても、プレイング業務を抱えながら実践するのは簡単ではないのではないでしょうか。  本記事では、心理的安全性とマネジメント能力の関係を整理した上で、EQ(感情知能)をベースにした具体的な実践ステップを紹介します。「何から手をつければいいかわからない」という方にとって、一つの手がかりになれば幸いです。   目次 心理的安全性が上がらない、本当のボトルネック 課長職が直面している現実 マネジメント能力を阻む「手放せない」問題 手放しができると、何が変わるか 心理的安全性を高める3つの実践ステップ まとめ Potage36.5公式LINE   心理的安全性が上がらない、本当のボトルネック  エンゲージメントサーベイの結果をさまざまな企業で見ていると、ある共通の傾向が浮かび上がります。 課長職あたりの中間管理職のエンゲージメントの高低と、若手社員のエンゲージメントの高低に、一定の相関がある ということです。  管理職が疲弊していると、その空気がチーム全体に伝播し、若手の...

河原あずさと36.5編集部

目次 心理的安全性は「仲良しクラブ」ではない ぬるま湯にしないフィードバックの技術「Good・Uniqueness・More」 チームの意識を「外」に向ける指針を立てる 心理的安全性は「厳しさ」と両立する  マネジメントや組織づくりに関する現場の声を聞いていると、繰り返し出てくる問いがあります。それは 「心理的安全性を大事にすると、組織がぬるま湯になりませんか?」 というものです。  先日、ある40代の経営者の方からこんなお話をいただきました。 「私はスタッフを強く信頼しています。ただ、仕事上で褒めることはほとんどありません。上司や組織からの承認を求める意識が主体になると、日々の意識が内向きになる気がするんです」 と。心理的安全性を高めることが、結果的にメンバーの意識を内側に閉じさせてしまうのではないか。そんな懸念をお持ちだったのです。  実はこの疑問、多くの管理職やリーダーの方が感じているのではないでしょうか。今回は「心理的安全性」と「ぬるま湯」の違いを掘り下げながら、チームを前に進める対話の技術についてお伝えします。 心理的安全性は「仲良しクラブ」ではない  心理的安全性という言葉を聞くと、「みんな仲良し」「和気あいあい」といったイメージを持たれる方が少なくないかもしれません。しかし、 心理的安全性の本来の定義は、チームの中で自分の本音をオープンに言い合える関係性が築けているかどうか、ということ です。  つまり、相手にとってプラスなことだけでなく、 改善が必要なことについてもしっかりと伝えられる関係性ができあがっている状態 を指します。その背景にあるのは、人格を否定されないという安心感です。「あなた自身のことは尊重している。あなたの考え方も大切にしている。ただ、チームとしてはこちらの方向を向いていきたい」――そう率直に言い合えるのが、心理的安全性の高い組織なのです。  心理的安全性という概念が広まった背景には、Googleのリサーチが有名ですが、そこにはストレートにモノを言い合える組織を目指すアメリカのスタートアップ文化の影響も見え隠れしています。 決して「優しいだけの場」をつくることが、心理的安全性のゴールではない のです。  ここで気をつけたいのは、心理的安全性の高い組織は、お互いの承認欲求を満たすための場ではないということです。  何に対しても「いいね、いいね」と肯定する。 相手との関係性を傷つけたくないから、本当は違うと思っていても口をつぐむ。これは忖度であり、むしろ心理的安全性が低い状態 の表れではないでしょうか。 言いたいことを言えず、周りの顔色をうかがっている。これこそがぬるま湯の正体 なのです。  つまり、心理的安全性とぬるま湯は正反対のもの。 ぬるま湯は「本音を言わない関係」、心理的安全性は「本音を言い合える関係」 。この違いを明確にしておくことが、チームづくりの出発点になります。 ぬるま湯にしないフィードバックの技術「Good・Uniqueness・More」  では、心理的安全性を保ちながら、率直なフィードバックをするにはどうすればいいのでしょうか。Potageが実践しているのが 「Good・Uniqueness・More」 というフレームワークです。   最初のGoodは、まず相手のいいところを伝える こと。「ここがすごくいいと思います」「ありがとうございます」と、ポジティブなフィードバックから入ります。  次の Uniquenessは、相手の個性を認める言葉を伝える こと。「これは〇〇さんらしい考え方ですね」「〇〇さんの経験が生きていますね」と、その人だからこその価値を言葉にします。ここで大切なのは、一旦相手のことを受け入れるということ。 「あなた自身のことは否定していない。あなたの考え方は尊重している」というメッセージを、まず届ける のです。  そしてMoreは、さらに良くするための問いかけです。 「チームとしてはこの方向を目指しているので、もっと良くしていくには、どうしていったらいいと思いますか?」と、相手と一緒に考えるプロセスをつくり ます。  ポイントは、上から指示するのではなく 「問いかける」 こと。 相手の考えを引き出しながら、チームの方向性とのすり合わせを一緒に行っていく 。このプロセスそのものが、心理的安全性を高めていくのです。  「まず褒める」ことから入るという話はシンクリでもしています。よろしければこちらの記事も参考にしてみてください。 チームの意識を「外」に向ける指針を立てる  心理的安全性がぬるま湯にならないために、もうひとつ大切なことがあります。それは、 チームの意識を「外」に向ける指針を明確にすること です。  お客さんに向き合う。社会に役立つ組織であり続ける。そうしたチームとしてのゴールを、 経営者やリーダーがきちんと言葉にして伝えることで、メンバーの意識は「周囲からの承認」ではなく「社会やお客さんへの価値提供」へと自然に向かっていきます 。  外向きの指針があるからこそ、フィードバックにも軸が生まれます。「チームとして目指している方向はこちらだから」という共通のゴールがあればこそ、率直な対話が建設的なものになるのです。 心理的安全性は「厳しさ」と両立する  「心理的安全性を大切にすると、チームがぬるま湯になるのでは」という問いに対する答えは、むしろ逆かもしれません。本当に心理的安全性が高い組織は、お互いに厳しいことも言い合える。そしてそれが言えるのは、 「何を言っても、この関係性は壊れない」という信頼が土台にあるから です。  もちろん、Good・Uniqueness・Moreのフレームも、一朝一夕で身につくものではなく、日々の実践と振り返りの中で少しずつ磨かれていくものです。  心理的安全性とは、居心地のいいぬるま湯をつくることではなく、お互いの成長のために本音を伝え合える土壌を耕すこと。その土壌があってはじめて、チームは外に向かって力強く動き出すのかもしれません。  あなたのチームでは、本音を伝え合える関係性が育っていますか? 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 先行10名様限定・特別価格でご案内しています。

2026年4月6日

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心理的安全性とぬるま湯の違いとは?チームが変わる対話術

「心理的安全性=ぬるま湯」は誤解。厳しさと両立するフィードバック術と、チームの意識を外に向ける対話の技術を解説します。

河原あずさと36.5編集部

目次 「挑戦因子」が低い組織の正体 「アリバイ提言」と「叩き台をぶっ叩く会議」 今日から使える2つのアプローチは、「行動の称賛」と「斜に構えないワーク」  Potage株式会社代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  このたび、新しいポッドキャスト番組「 シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所 」(略して「シンクリ」)がスタートしました。 株式会社ZENTech (以下、ZENTech)の代表取締役社長CEOである金亨哲さん(ひょんちょるさん)と私の二人で、リスナーの皆さんから届く「チームビルディング」や「マネジメント」にまつわるお悩みに答えていく番組です。ナビゲーターにはきのせまりさんをお迎えしています。  ZENTechは2018年から「心理的安全性」という概念を世の中に広げるために活動してきた会社で、共同代表の石井さんが出された「心理的安全性のつくりかた」という書籍でご存じの方も多いかもしれません。心理的安全性を軸とした組織開発コンサルティングを通じて、さまざまな企業や組織の組織文化づくりに取り組まれています。一方の私は「コミュニティ思考」という考え方をベースに、EQ(感情知能)を活用した組織の関係性づくりや、チームがもっとよく動くための伴走支援をしています。そんな二人が「心理的安全性」と「チームビルディング」をテーマにお悩みに答えていくというのが、この番組の趣旨です。 「挑戦因子」が低い組織の正体   記念すべき第1回の放送では、早速リスナーさんからお悩みが届きました。 「新しいサービスを考えていこう」「今までの提供サービスを見直していこう」というチームにおける相談です。メンバーが自分の業務の延長線上でしか考えず、具体的な提案がない。結局リーダーが一生懸命考えて叩き台を出し、それに対して意見交換が始まるという状況。相談者の方はこのチームのメンバーで、「これならAIと話してた方がマシだし、早い」と感じているようです。  マネジメントの現場で、チームから主体的なアイデアが出てこないことに悩むリーダーは決して少なくないでしょう。  このお悩みに対して、ひょんちょるさんが指摘したのが「挑戦因子」の問題でした。ZENTechが提供している心理的安全性の診断サービス「SAFETY ZONE」では、心理的安全性を4つの因子で測定しています。「新規事業部」や「DX推進室」といった名前がついたチームなのに、4つの因子のうち「挑戦因子」が特に低いという現象がしばしば見られるそうです。イノベーションを求められているはずのチームで、なぜ挑戦が起きないのか。 それは「ちゃんと結果を出さなきゃいけない」というプレッシャーが強くのしかかり、失敗を恐れるあまり誰も最初の一歩を踏み出せない状態に陥っているから です。チームビルディングの観点から言えば、「新規事業部」や「DX推進室」といったチームの役割と実態が乖離してしまっている状態ともいえます。 「アリバイ提言」と「叩き台をぶっ叩く会議」  ひょんちょるさんは、ある事例も紹介してくれました。 会議の中で「とにかく意見は出しておこう」という空気がある現場の事例です。 発言すること自体が「仕事をした証」になっていて、本当の意味でプロジェクトを前に進めようという意見ではない。いわば「アリバイ提言」です。「会議に参加した意味はあるよ、なぜなら発言したから」――そしてその発言すらも、「お前発言してないじゃないか」と言われることを避けるための予防線だったりする……これはチームマネジメント上、非常にもったいない状態です。1on1やチームの会議で対話が形骸化していると感じたことのある方は、この構造に心当たりがあるのではないでしょうか。  きのせさんからは、会社員時代の経験として 「声の大きい人がバーッと話してしまい、他の人が『私もそう思います』と続くだけ」 という状況を挙げてくれました。一応みんな発言はしている。でも、本当の意味で意見が混ぜ合わされているかは疑問という、まさに心理的安全性が担保されていないチームで起こりがちな光景です。リーダーシップを発揮しているつもりの人が、実は周囲の発言を抑制しているということは、チームビルディングの現場では珍しくありません。  私自身も、大企業の新規事業部署でこうした場面に出くわしてきました。シリコンバレーで学んだデザイン思考の中に「Yes, and(イエス・アンド)」という手法があって、相手の意見に「それいいね、それでさ」とちょい足ししていく連鎖でアイデアを膨らませていくのがコツなのですが、実際にやってみると 、 斜に構えたコメントが多かったり、「叩き台」なのにでっかいハンマーで暴力的にぶっ叩いて割ってしまう人がいたりする状況によく出くわします。 リスクを取らないように探り合うチームもあれば、評論家ばかりで何も前に進まないチームもあります。 今日から使える2つのアプローチは、「行動の称賛」と「斜に構えないワーク」  こうした状況に対して、ひょんちょるさんが提案してくれたのは 「まずチャレンジした行動そのものを称賛する」というアプローチ でした。リーダーが叩き台を出してくれたなら、中身の議論に入る前に、その行動自体を「ここまでやってくれてありがとうございます」「このポイントってめちゃくちゃ素敵ですね」と認める。 行動への称賛があってからフィードバックを寄せていけば、次もやろうという気持ちにみんながなれる。 これはEQ(感情知能)の観点でいえば、相手の感情を認識し、適切に応答するというEQを活かした実践そのものです。  否定しなくても意見は出せるのだから、「加えて、なんかここって僕としてはこういう観点もあるかなと思ったんですけど」という「イエス・アンド」の言い方で、建設的な対話が生まれていきます。コーチングの世界でも「承認」から入ることの重要性はよく語られますが、チームの会議の場面でも、まったく同じ原則が当てはまるのです。  私からは 「斜に構える・構えないワーク」というアイスブレイクを紹介しました。タピオカミルクティーの画像を見せて、最初の1分間は「斜に構えた態度」で語ってもらう手法です。 「だいぶブーム終わったよね」みたいなコメントが飛び交った後、次の1分間は「斜に構えない態度」で絶賛してもらいます。「これは一時的なブームじゃない、定着した台湾文化の象徴だ」と。そして最後に、どちらが心地よかったかを振り返ってもらうのです。当然、斜に構えない方が気持ちいいとおっしゃる方が多いです。しかもこの切り替えは、スイッチひとつでできるんですよ、という話をします。いろいろなお題で試したのですが、タピオカミルクティーが一番ちょうどいいということに行き着きました。 (アイスブレイクに関しては こちら の記事でもお読みいただけます)  ひょんちょるさんが言う「まず褒める」というコミュニケーションも、 結局は一人ひとりが自分の中でスイッチを入れられるかどうか。 だからこそ、 チームの対話を始める前にこのアイスブレイクで体感してもらって、「この場では斜に構えない方でいきましょう」という合意形成をしてから始める。 それだけで場の空気はずいぶん変わります。心理的安全性を高めるチームビルディングの第一歩として、ぜひ皆さんも会議で試してみてください。  こんなふうに、今日明日からすぐに使えるマネジメントのテクニックや、現場のリアルで生っぽい話をお届けできるのが「 シンクリ 」の強みだと思っています。心理的安全性やEQといった概念は、知識として知っているだけでは組織文化は変わりません。日々の対話の中で一つひとつ実践していくことで、チームは少しずつ、でも確実に変わっていきます。  これからも皆さんのチームビルディングやマネジメントにまつわるお悩みに、所長・ひょんちょるさんと副所長・河原あずさの二人で前のめりに答えていきます。ぜひ番組を聴いていただけるとうれしいです。お悩みは こちら からお寄せください。

2026年3月11日

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"叩き台をぶっ叩く会議"から卒業しよう。心理的安全性を高めるチームビルディングの第一歩|ポッドキャスト『シンクリ』始動

心理的安全性を高めるために、会議でできることがあります。「行動の称賛」と「斜に構えないワーク」——すぐ実践できる2つのアプローチを、専門家との対話から解説します。

河原あずさ(Potage代表)

「心理的安全性」という言葉の陰で。 皆さんも、「心理的安全性」という言葉を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。Googleが提唱し、人事・組織開発の文脈で急速に広まったこの概念は、今や多くのビジネス書や研修プログラムにも登場します。ところが、言葉が浸透すればするほど、現場ではこんな矛盾も生まれています。 「本音を言ったら関係が壊れそうで、結局うまく取り繕ってしまう」 「衝突を避け続けているうちに、チームとして成果が出なくなった」 「部下には安全な場を提供したいのに、管理職である自分自身がプレッシャーで押しつぶされそう」 これらは、決して特定の職場だけの話でありません。多くの管理職が、日々こうした葛藤を抱えながらチームを動かしています。心理的安全性は「理想」として語られる一方で、本当の意味で実現するのは簡単なことではないのかもしれません。 心理的安全性の本質は、「ぬるさ」ではなく「強さ」にある ここで改めて確認しておきたいのが、心理的安全性の本質です。それは単に「なんでも言い合える仲良しチーム」を目指すことではありません。 成果に向けて、安心して意見を交わせる状態を指します。言い換えれば、衝突を恐れず、建設的な対話を通じて組織が前進していける基盤のことです。 そして、その基盤を実装するうえで欠かせないのが、もう一つのキーワード、EQ(感情知能)です。感情を抑え込んだり、見て見ぬふりをするのではなく、 感情をきちんと認識し、プラスの力に転換していく技術。この「感情を扱う力」が、心理的安全性を"絵に描いた餅"で終わらせないための鍵となるんです。 二つの専門知識が交わる場所──Podcast『シンクリ』誕生 こうした課題意識から生まれたのが、新たなPodcast番組『心理的安全性あふれるチーム作り相談所』(略称:シンクリ)です。 「感情をプラスの力に変える」をビジョンにEQ開発を展開するPotage株式会社と、心理的安全性の計測および組織開発支援を手がける 株式会社ZENTech (東京都千代田区、代表取締役:金亨哲)。それぞれの領域で組織変革の最前線に立つ両社が共同制作し、2026年3月5日(木)より配信をスタートします。 対象は主に管理職。成果と関係性を両立させるチームづくりを、心理的安全性とEQという二つのレンズで深掘りしていく音声コンテンツです。 番組の構成と今後の展開 3月は、ZENTechとPotageの両代表による対話を通じて、心理的安全性と感情の側面から、よくあるケースに基づいて基礎的な話を整理します。4月以降は、テーマをさらに拡張し、時に外部ゲストを迎えて議論を深めていく予定です。ゲスト情報を含む番組最新情報はこちらで受け取れます。 Potage 36.5 公式LINE: https://lin.ee/71BXD7w リスナー限定特典 第1回放送内で発表される「合言葉」を専用フォームにご入力いただいた方へ、以下を無料プレゼントいたします。 ZENTech監修 :  心理的安全性事例集 Potage監修: シンクリ所長 金亨哲氏のEQ診断大公開!(音声コンテンツ) 応募フォーム: https://forms.gle/9Zy22qj49A9MqBin9 番組概要 番組名: 心理的安全性あふれるチームづくり相談所(略称:シンクリ) 配信開始日: 2026年3月5日(木) / 隔週木曜日配信 配信媒体:  stand.fm / Spotify / Apple Podcast / Amazon Music / Voicy 初回放送を聴く: https://stand.fm/episodes/69a73144bd9945cb0f5bd2da メイン出演者:現場を知る二人のプロフェッショナル 金 亨哲氏(株式会社ZENTech 代表取締役社長) 日本生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。2018年に創業期から株式会社ZENTechへ参画し、2022年より代表取締役社長。心理的安全性の高い組織・チームづくりを軸に、通信、SIer、鉄道、自動車、製造など大手企業の組織カルチャー変革を支援。加えてテクノロジーの知見を活かし、現場の変容を促すチームリーダー向けWebサービス/モバイルアプリのプロダクトマネジメントも担う。働きがいある会社づくりの専門家。 河原 あずさ(Potage株式会社 代表取締役) 富士通、シリコンバレー駐在(新規事業開発)などを経て独立。2021年にPotage株式会社を設立。感情を「経営資源」として捉え直し、経営層の意思決定から事業部の関係性設計まで一気通貫で支援する「Your CEQO」を提供。大手企業からスタートアップまで幅広い組織変革に伴走している。EQ(感情知能)を軸に、成果と関係性を両立させる「EQ経営」の実装を推進している。 番組の特徴 管理職の葛藤に真正面から向き合う 理論と現場のリアルを往復 <テーマ例> なぜ私たちは本音で向き合えないのか 「優しさ」と「成果」の関係 1on1が機能しない本質的理由 管理職が自分の感情を扱う技術 チームが本音でぶつかれない理由は、意外と感情の扱い方にヒントがあるかもしれません。まずは一度、耳を傾けていただけると嬉しいです。 初回放送を聴く: https://stand.fm/episodes/69a73144bd9945cb0f5bd2da

2026年3月11日

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なぜ、あなたのチームは本音でぶつかれないのか。心理的安全性とEQで問い直す新Podcast『シンクリ』を、26年3月5日に配信開始

なぜ、あなたのチームは本音でぶつかれないのか。心理的安全性とEQで問い直す新Podcast『シンクリ』を配信開始

河原あずさ(Potage代表)

目次 心理的安全性とは何か 偽の心理的安全性とは? 忖度が生まれるメカニズム 偽の心理的安全性を見抜くサイン 管理職ができる改善アクション Potage36.5公式LINE  「うちのチームは何でも言い合える」……そう感じているチームほど、実は忖度に支配された"偽の心理的安全性"に陥っているかもしれません。  声の大きい人への同調が無意識に起きている組織では、本音の対話が封じられ、チームビルディングが停滞してしまいます。こうした状態を抜け出す鍵になるのが、 管理職の振る舞いとEQ(感情知能)を軸にした小さな対話の積み重ね です。 心理的安全性とは何か  心理的安全性という言葉を、ここ数年で耳にする機会がずいぶん増えました。ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、「このチームで発言しても、自分が否定されたり罰せられたりしないと信じられる状態」のことを指します。  よく誤解されるのですが、心理的安全性とは「仲が良いこと」ではありません。 異論や違和感を、安心して口にできること。それが本来の意味です。チームビルディングの文脈でも、この心理的安全性は土台になります。 偽の心理的安全性とは?  EQをベースにしたチームビルディングや組織開発の研修の場で、こんなやり取りがよく見られます。  「皆さんのチームには心理的安全性がありますか?」  そう問いかけると、多くの方が「うちはあると思います」と答えます。ところが、研修を依頼した人事や経営層からは、事前にこんな声が出ていることが少なくありません。  「うちは本音で対話できていなくて……」  現場とマネジメント層で、認識がまるで違う……こうした不思議な現象は、実は多くの組織で繰り返し起きています。本記事ではこの状態を「偽の心理的安全性」と呼びます。 忖度が生まれるメカニズム  研修の場では、こんなやり取りが起きることがあります。  誰かが「うちは心理的安全性が高いですよ」と言う。すると、周囲がすっと同調する。しかし、ここで立ち止まって考えてみる必要があります。本当にそうだろうか、と。  声の大きい人に対して、「実は私は少し違う意見です」と言えるでしょうか。場の空気を壊すかもしれない、関係性がぎくしゃくするかもしれない……そう思うと、本音は引っ込められてしまうこともよくあります。  それは安心ではなく、忖度です。表面的には穏やかかもしれません。しかし、チームビルディングの観点では、挑戦や対話が止まり始めているサインともいえます。 ここまでのポイント 心理的安全性とは「仲が良いこと」ではなく異論を安心して言える状態のこと   「うちは心理的安全性がある」と感じているチームほど忖度による"偽の状態"に陥りやすい 忖度は「安心」ではなく「空気を読んだ沈黙」。チームビルディングが止まるサイン 偽の心理的安全性を見抜く3つのサイン  では、管理職として何を見ればよいのでしょうか。多くの現場で共通して見られるサインには、次のようなものがあります。 1. 会議で反対意見がほとんど出ない  議論がスムーズすぎるときほど、注意が必要です。 2. 決定後に裏で不満が出る  会議では全員賛成。しかし後から本音が漏れる。この構造は危険信号です。 3. 発言する人が固定化している  若手や静かなメンバーがほとんど話していない場合、心理的安全性は限定的かもしれません。 管理職ができる改善アクション  偽物を本物に変える鍵は 、制度よりも振る舞いにあります。ま ずは、 管理職自身が「異論を歓迎する姿勢」を示すことがポイントです。 「他に意見はない?」ではなく、 「違う見方があれば、ぜひ聞きたい」と具体的に伝えてみましょう。そして、全体の場で出ない声を、1on1などで丁寧に拾うのです。  さらに重要なのが、EQの視点です。 自分の中に生まれた小さな違和感に気づくこと 、それがとてもたいせつです。 「今、少しモヤっとしたな」と感じられるかどうか……。 本当の心理的安全性は、「本音を言おう」と号令をかけて生まれるものではありません。  小さな自己開示の積み重ねの中で、少しずつ育まれていきます。 あなたのチームの心理的安全性は「本物」ですか?  心理的安全性という言葉が広がること自体は、とても良いことです。けれど、言葉だけが先行して、「うちは大丈夫」と思い込んでしまうことほど、怖いことはありません。  あなたのチームでは、メンバーが本音で語り合えていますか。 誰かの一声に、無意識に空気を合わせてしまっていないでしょうか。  もし、ほんの少しでも心当たりがあるなら…それは「偽の心理的安全性」に向き合う、最初のサインなのかもしれません。    EQを軸にした信頼関係構築とチームビルディングのプロジェクトを実施した、関電不動産様の事例は こちら からお読みいただけます。 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 先行10名様限定・特別価格でご案内しています。

2026年4月6日

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「偽の心理的安全性」とは?忖度がチームビルディングを止める本当の理由

心理的安全性が「ある」と即答するチームほど、実は忖度に支配された「偽の心理的安全性」に陥っている可能性があります。

河原あずさと36.5編集部

目次 「ポゼッション率」という視点がチームビルディングを変える 心理的安全性の高いチームは「25%ずつ」で話している 均等な発言から始まる「違いを活かす」チームづくり ファシリテーションは「凸凹を見つけて組み合わせる」技術 あなたのチームのポゼッション率は、どうなっていますか? 「ポゼッション率」という視点がチームビルディングを変える  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  ワークショップやチームビルディングの現場に立つ中で、私が大事にしている指標があります。それが「会話のポゼッション率」です。  ポゼッション率といえば、サッカーを思い浮かべる方が多いかもしれません。90分の試合の中で、どちらのチームがどれくらいボールを保持していたかを示す数値です。浦和レッズが53%、鹿島アントラーズが47%。そんな具合に、ゲームの主導権がどちらにあったかを読み解くための指標として使われています。  この概念を、チーム内の会話に転用してみます。すると、チームビルディングにおいて見落とされがちな、とても大事なことが浮かび上がってきます。 心理的安全性の高いチームは「25%ずつ」で話している  ここで皆さんに問いかけてみたいのですが、4人のチームで会話をしているとき、理想的なポゼッション率の配分って、どれくらいだと思いますか。  答えは、25%ずつです。  これは私の現場感覚だけでなく、心理的安全性の研究からも裏付けられていることです。心理的安全性の高い組織では、メンバー間の発言量がほぼ均等になっているという特徴がある。逆にいえば、発言量に大きな偏りがあるチームは、心理的安全性が低い状態にある可能性が高いということです。  たとえば、リーダー格のAさんが全体の70%を話していて、残りの3人が10%ずつ。あるいは、経験年数の近い2人が合わせて80%、若手2人で20%。こうした光景は、どの職場でも見覚えがあるのではないでしょうか。  声の大きい人に発言が偏ると、何が起きるでしょうか。発言量の多い人は「いい議論ができている」と感じているかもしれません。しかし発言量の少ない人は、本音を言えないまま、顔色をうかがい、忖度し、「まとまっといたほうが楽だな」と口をつぐんでいる ......そこには、表面化しにくい意識のギャップが横たわっています。この「気持ちよく話しているつもりの人」と「黙っている人」のあいだにある溝こそが、チームの一体感を蝕む原因になっているのです。 均等な発言から始まる「違いを活かす」チームづくり  では 、心理的安全性の高いチームは何が違うのか。それは、メンバー同士がお互いの発言量を意識し、自然と均等になるように配慮しているという点です。  Aさんが話し始めて、少し長くなったなと感じたら、「ところでBさんは、この件についてどう思いますか?」と振る。Bさんの意見を聞いたら、「Cさんはどうですか?」と広げていく。こうして全員がテーブルの上に自分の考えを並べることで、はじめてチームとしての合意形成が動き出すのです。  ここで 重要なのは、全員が同じ意見を持つことではありません。むしろ大事なのは、それぞれの「違い」が見えるようになることです。  チームビルディングにおいて、違いは排除すべきものではなく、活かすべきものです。全く同じ人間が4人集まっても、チームはうまく機能しません。なぜなら、価値というものは「違い」から生まれるからです。  パズルのピースを想像してみてください。ひとつひとつのピースには、出っ張っているところと凹んでいるところがあります。これはそのまま、一人ひとりの得意と苦手に言い換えられる。 出 っ張りと凹みが噛み合うからこそ、ピースは組み合わさり、一枚の絵が完成するのです。 ファシリテーションは「凸凹を見つけて組み合わせる」技術  僕がチームビルディングの現場で心がけているのは、まず会話のポゼッション率を均等に近づけること。そしてその次に、一人ひとりの「凸凹の形」を見極めていくことです。  均等に発言できる場をつくると、それぞれのメンバーがどんなことに関心を持っていて、何を得意とし、何に苦手意識を持っているかが、自然と見えてきます。年次も役職も関係なく、対等な立場で意見を交わせる状態。それがあってはじめて、メンバーの凸凹の輪郭がはっきりしてくるのです。   ファシリテーションとは、単に会議を進行することではありません。発言のバランスをデザインしながら、メンバーそれぞれの個性を引き出し、その組み合わせを見つけていくプロセスです 。誰かの凹みを、別の誰かの出っ張りで補う。その掛け合わせの中から、 一人では描けなかった絵が浮かび上がってくる。  僕はこれを「コミュニティ型組織開発」と呼んでいますが、 その根底にあるのは、多様な「個」が打ち消しあうのではなく、溶け合うことで新しい価値を生み出すという考え方です。 心理的安全性は、その溶け合いが起きるための土壌にほかなりません。 あなたのチームのポゼッション率は、どうなっていますか?  ここまで読んでくださった方に、ひとつ試していただきたいことがあります。次のミーティングで、チームメンバーの発言量を意識して観察してみてください。  誰がどれくらい話していますか。話していない人はいませんか。その人は、本当に「話すことがない」のでしょうか。それとも「話せない空気」があるのでしょうか。  会話のポゼッション率は、チームの健康状態を映し出すバロメーターです。数値化する必要はありません。ただ、意識を向けるだけで、見えてくるものがあるはずです。  そして、 もしポゼッション率に偏りがあると感じたら、「ところで、〇〇さんはどう思いますか?」というひと言を投げかけてみてください。その小さな問いかけが、チームの心理的安全性を育てる最初の一歩になるかもしれません。  強いチームは、違いを恐れません。違いを見つけ、違いを面白がり、違いを活かして、まだ見ぬ絵を一緒に描いていく。その出発点は、全員が安心して声を出せる場をつくることにあります。  あなたのチームには、まだ聞こえていない声が眠っているかもしれません。その声に耳を傾けることが、チームの新しい可能性を拓くきっかけになるのだと、僕は信じています。 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 先行10名様限定・特別価格でご案内しています。

2026年4月6日

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会話のポゼッション率で高まるチームの心理的安全性

心理的安全性を高める鍵は「会話のポゼッション率」。発言量の偏りを見直し、違いを活かすチームビルディングの具体策を解説。

河原あずさ(Potage代表)

目次 凍りついた場の空気は最初の5分で決まる いきなり本題に入らないことが、心理的安全性を育む「最初の一歩」になる カメラロールが映し出す「その人らしさ」 チームビルディングは「共感の交差点」から始まる 場をつくる人が、まず自分を開く Potage36.5公式LINE  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。   ワークショップやチームビルディングの現場では、「最初の数分間で、いいアウトプットが出るかはほとんど決まる」とよく言われます。  初対面のメンバーが集められた研修やワークショップを想像してみてください。参加者たちは緊張した面持ちで席につき、お互いの様子をうかがいながら、誰も口を開かない――会場には、まるで凍りついたような空気が漂っています。「隣の人と自己紹介してください」と振ったものの、何を話せばいいかわからず沈黙が広がってしまう……そんなモヤモヤした経験をお持ちの方も、少なくないのではないでしょうか。  今回は、私がプロのファシリテーターとして数多くの現場で実践してきたアイスブレイクのアプローチを軸に、「心理的安全性」と「チームビルディング」の観点から、なぜ最初の5分がチームづくりの命運を分けるのかを深掘りしてみたいと思います。 凍りついた場の空気は最初の5分で決まる  場が凍り付いた状態で「さあ、アイデアを出しましょう」と号令をかけても、実のある議論が生まれるはずがありません。チームビルディングにおいて、最初にやるべきことは、この凍りついた空気を丁寧に溶かしていくこと、いわゆる「アイスブレイク」です。  ところが、このアイスブレイクというプロセス、軽視されがちなわりに、実はとても奥が深いんです。うまくいけば場の空気は一変しますが、失敗すると氷はむしろガチガチに固まってしまいます。これだと「アイス・メーカー」ですよね(笑)。 いきなり本題に入らないことが、心理的安全性を育む「最初の一歩」になる  では、どうすればこの氷を上手に溶かせるでしょうか。  ここで鍵になるのが「心理的安全性」です。どんな発言をしても自分が脅かされない、むしろ発話することがポジティブに受け止められるという安心感のことを言います。この感覚がなければ、人は本音を語れませんし、創造的な議論も生まれません。   ポイントは、いきなり仕事の話や本題に入らないことです。  仕事に絡めた自己紹介をさせると、参加者は「ちゃんとしたことを言わなければ」と身構えてしまいます。肩肘を張った発言は共感を生みにくく、結果として場はさらに硬直していきます。だからこそ、最初は本題から少し離れたところで「自分自身」を開いてもらうがあります。そのための仕掛けが、アイスブレイクワークです。 カメラロールが映し出す「その人らしさ」  僕が現場で実践しているアイスブレイクワークを、ひとつご紹介します。  やり方はシンプルです。まず、参加者全員にスマートフォンを取り出してもらいます。そしてカメラロールを開いて 「自分を最もよく表していると思う写真を一枚選んでください」 と伝える。選んだら、グループ内でその写真について1分間プレゼンしてもらう。たったそれだけです。  例えば、僕だったら、年子の息子と娘と一緒に写った家族写真を見せながら、「実は年子育児をしながら起業しているんです」と話すかもしれません。すると周りから「え、大変じゃないですか」と声がかかり、自然と会話が生まれていきます。  別の方は、自作のパエリアの写真を選ぶかもしれません。「え、これ自分で作ったんですか? レストランかと思いました」と驚きの声が上がって、また新しい対話が始まります。  このワークが便利なのは「誰でもできる」ということです。スマホは誰もが持っていて、カメラロールにはその人の日常や価値観が詰まっています。特別な準備もいらなければ、話す内容に正解も不正解もありません。だからこそ、人は自然と自分を開くことができるのです。  もうひとつの応用編として 「鞄の中から自分が大事にしているアイテムをひとつ取り出して、それについてプレゼンしてください」 というワークもあります。高級なボールペンを出す人もいれば、iPadのペンシルを取り出して「大事なのになくなりやすいんです」と笑いを誘う人もいます(僕です)。  そうした小さな自己開示を通じて、お互いへの「興味のベクトル」が交差し始める。この交差が大事なのです。 チームビルディングは「共感の交差点」から始まる   なぜ、このような自己紹介ワークが、チームビルディングにおいて有効なのかというと、共感が心理的安全性の土台になるからです。  「分かる」「自分もそうだ」という小さな共感の積み重ねが、「この場では自分を出していいんだ」という安心感を育てていきます。写真やアイテムを通じた自己紹介は、言葉だけの自己紹介よりも、はるかに「その人らしさ」が伝わりやすい……だからこそ共感が生まれやすく、場の温度が上がっていくのです。  みんながワイワイガヤガヤ話しながら、お互いのことを肯定し合える時間、いわゆる「ワイガヤ」の状態をまず作ることが、その後の議論やアイデア出しの質を大きく左右します。  ここで少し理論的な話を補足すると、 MITのダニエル・キム教授が提唱した「成功の循環モデル」では、組織の成果は「関係の質」から始まるとされています。 関係の質が高まれば、思考の質が上がり、行動の質が変わり、結果の質が向上する。そしてその「関係の質」を最初に耕す場こそが、アイスブレイクなのです。 場をつくる人が、まず自分を開く  最後に、ひとつだけ付け加えておきたいことがあります。  アイスブレイクで場の空気を変えるためには、ファシリテーター自身がまず自分を開くことが大切です。自己紹介ワークをするなら、最初に自分から写真を見せ、自分の話をする。完璧な自己紹介である必要はありません。むしろ、少し隙のある、人間味のあるエピソードのほうが、場の空気は柔らかくなります。「あの人も完璧じゃないんだ」という安心感が、参加者の肩の力をそっと抜いてくれるのです。  偉そうに語ってしまいましたが、僕自身も、アイスブレイクがうまくいかず空気がさらに凍りついてしまった経験が何度もあります。「あの振り方は違ったな」「もう少し自分から開けばよかったな」と、反省とアップデートの連続です。  「場をつくる」というのは、テクニックだけの話ではないのかもしれません。その場にいる一人ひとりが、少しだけ自分を開いてみる。 その勇気の連鎖が、凍りついた空気を溶かし、チームに温かい流れを生み出していく。アイスブレイクは、その流れの最初の一滴なのです。  あなたのチームの「最初の5分」は、どんな風に始まっていますか?​​​​​​​​​​​​​​​​ 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 先行10名様限定・特別価格でご案内しています。

2026年4月6日

最終更新日:

場の空気は最初の5分で決まる!心理的安全性を生むアイスブレイク術

アイスブレイクは単なる場つなぎではなく、チームビルディングの成否を左右する「最初の設計図」。心理的安全性は、参加者が「自分らしさ」を安心して表現できる、小さな成功体験の積み重ねから育まれます。スマホのカメラロールや鞄の中身といった、身近なものを使った自己紹介ワークが、凍った場の空気を溶かす鍵になります。

河原あずさ(Potage代表)

目次 「昭和のマネジメント」がチームを破壊する理由 心理的安全性を高める3つのコミュニケーション変革 1. 叱らない:「正解の押し付け」から「問いかけ」への転換 2. 自慢しない:「過去の栄光」ではなく「未来のゴール」にフォーカスする 3. 褒める:「個性の肯定的な言い換え」を組織の文化にする 日々の振る舞いが、チームの文化を創る Potage36.5公式LINE  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  数年前の話になるのですが、シリコンバレーで女性起業家の支援をされている堀江愛利さんからのお誘いで、ワシントンDCを拠点に起業家支援に尽力されている久野祐子先生のお話を伺う機会に恵まれました。  久野先生はご自身も起業家として大成功を収められた後、現在は次世代の支援に回られている素晴らしい方です。そのセッションの中で、すべてのチームに関わる人、特にマネジメント層に深く刻んでほしい「チームとの向き合い方の原則」の話がありました。  今回は、この教えを私なりに噛み砕き、これからの時代の「チームビルディング」 と 「心理的安全性」の観点から、なぜこの3つが組織の命運を分けるのかを深掘りしてみたいと思います。 「昭和のマネジメント」がチームを破壊する理由  日本の企業文化を振り返ると、かつての理想的な上司像とは「背中で語る」「ダメなことは厳しく叱責する」「飲み会で武勇伝を語る」「安易に褒めず、ハングリー精神を煽る」といったものでした。 長く美徳とされてきた、いわゆる「昭和のコミュニケーション」です。  しかし、今の時代にこの手法をそのまま持ち込むとどうなるでしょうか。 良かれと思ってやっている指導が、受け手からは「ただのマウント取り」や「押し付け」と変換されてしまいます。結果として、メンバーは萎縮し、自発的な提案は消え、組織の風通しは最悪の状態に陥ります。  では「令和のマネジメント」において最も重要なコミュニケーションはどのようなものでしょうか。  まず基礎となるのは「相手を対等なメンバーとして認めること」です。  役職は単なる「役割」の違いであり、人間としての上下ではありません。この対等なスタンスこそが、心理的安全性を醸成するための絶対条件なのです。今回の記事では久野さんが提示した「3つの原則」を軸に、マネジメント層が「対等な関係性」を築き、メンバーのポテンシャルを最大化するための強力なOS(オペレーティングシステム)となる「令和のマネジメントスタイル」について考えたいと思います。 心理的安全性を高める3つのコミュニケーション変革  久野さんがお話していた「心理的安全性あふれるコミュニケーションの原則」は以下の3つでした。 1. 叱らない:「正解の押し付け」から「問いかけ」への転換  「叱らないで、どうやって人を育てればいいのか?」と不安に思う方もいるでしょうが、自分の意見や正解を押し付けるのではなく、「問いかける」ことが、上司部下との対等な関係性を築く上では大事になります。  例えば、部下のパフォーマンスが期待に届かない時「なんでできないんだ?」と過去の失敗を詰めるのは、心理的安全性を著しく下げる行為です。 そうではなく、「どうしたらもっと良くなると思う?」「パフォーマンスを上げるためには、チームとして何が必要だろう?」と問いかけることで、相手の思考を促すことが重要なのです。  そして、相手が考え抜いた仮説を否定せず「じゃあ、まずはそれでやってみよう」と背中を押す。失敗しても受け止める度量を見せることも大事です。この「任せて、見守る」プロセスが、自律駆動型のチームビルディングには不可欠なのです。 2. 自慢しない:「過去の栄光」ではなく「未来のゴール」にフォーカスする  自慢話というのは、基本的に「過去の成功体験」への執着です。しかし、激しい変化に直面している現代のチームにとって重要なのは、過去の栄光ではなく「未来のゴール」です。  「俺の若い頃はこうやって乗り越えた」と語るのではなく、「今、私たちはどんなゴールに向かっているのか」「その未来を実現するために、今あるリソースで誰がどう振る舞うべきか」。マネジメント層にとって、常にこの「未来」と「現在」に視点を意識し続けることが、より重要な世の中になっているのです。  (未来に向けた建設的な対話に集中していれば、そもそも自慢話をしている余裕などないはずですよね?) 3. 褒める:「個性の肯定的な言い換え」を組織の文化にする  昔アメリカに住んでいた頃、アメリカ人はなんてポジティブなんだと日々痛感していました。特に感じていたのは、彼・彼女らが日常的に使う「あいづち」です。Goodにはじまり、Beatiful!Perfect!Awesome!I like it!と、あらゆるあいづちが肯定的で、日本人的な感覚だと、すごく不思議な気持ちだったのを覚えています。自分も使わないとなじめないので、日々使っていたんですけどね。けど、まるで自分が自分でないような感覚だったのを、未だに覚えています。  僕のように、アメリカ人のようにストレートに褒めちぎるのは、日本人の感覚だと少し気恥ずかしいと思うかたもいるかもしれません。そこでおすすめなのが「相手の特徴をポジティブな表現で捉え直す(リフレーミングする)」という技術です。  例えば、会議で発言が少ないメンバーに対し「寡黙だね(=もっと喋れ)」とネガティブに捉えるのではなく「じっくり物事を深く考えられる人だね」と言い換えてみる。少し個性が強いメンバーには「自分を素直に表現できる人だね」と伝える。  このように、個人の特性を肯定的に受け取る言葉の習慣化が、結果として相手を「認める(褒める)」ことにつながります。お互いの違いをポジティブに受け入れ合うことこそが、強いチームの証です。 日々の振る舞いが、チームの文化を創る  久野先生の振る舞いからは、自分が受けた恩を次の世代へ惜しみなく渡していく、シリコンバレーの「ペイ・フォワード(恩送り)」の精神を強く感じました。  心理的安全性は、立派なスローガンを掲げたからといって生まれるものではありません。日頃のコミュニケーションの、ほんの小さな改善の積み重ねから生まれます。新しく入ってきた人は、古参のメンバーやマネージャーの背中を見て育ちます。だからこそ、まずは組織を率いるリーダーから、「叱らない、自慢しない、褒める」という振る舞いへと変容していく必要があるのです。  偉そうに語ってしまいましたが、僕自身も、過去の事例を熱を入れて説明するうちに、意図せず武勇伝のように聞こえてしまっていないか、とハッとすることがあります。できるだけ謙虚に、フラットに物事を伝えるよう、日々反省とアップデートの連続です。  マネジメントは、終わりのない旅のようなものです。だからこそ、読者の皆さんと一緒に、これからも対等で温かい、そして成果を生み出すコミュニケーションを磨き続けていければと思います。 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 先行10名様限定・特別価格でご案内しています。

2026年4月6日

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心理的安全性を育むマネジメント&チームビルディング3つの原則

心理的安全性を高めるには、昭和型マネジメントからの脱却が不可欠。叱らない・自慢しない・褒めるの3原則で、リーダーの変容が組織文化をつくる方法を解説。

河原あずさ(Potage代表)

目次 心理的安全性が低い職場の特徴:チームビルディングが機能しない理由 形骸化した1on1とマネジメントを変える「対話」の技術 EQ(感情知能)が育む共感型リーダーシップ:弱さをさらけ出す強さ 組織文化の醸成は「小さなモヤモヤ」の解消から始まる  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織の中でそれらを混ぜ合わせることで新しい価値を創出する。そんな想いでコミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。  さて、この春、新しい試みをはじめることにしました。 心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと一緒に、音声配信番組を立ち上げます。その名も 「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」 です。ナビゲーターにはきのせまりさんを迎え、3人でお届けします。  多くの企業様からご相談をいただく中で、最も多い悩みの一つが「社内のチームづくり」です。制度を整え、ツールを導入しても、なぜかチームが機能しない。そこには常に、人の「感情」と「関係性」の課題が横たわっています。  本放送は3月からですが、先日収録したプレ放送の中で取り上げたお悩み相談が、現代の組織が抱える課題をあまりにも鮮明に映し出していたため、今回はその内容を深掘りします。「チームビルディング」「EQ」「心理的安全性」といったキーワードを軸に、優しそうに見えて実は冷たい職場の正体と、その解決策について考えてみたいと思います。 心理的安全性が低い職場の特徴:チームビルディングが機能しない理由  シンクリ!のプレ放送の収録にあたり、事前に募集したお悩みの中に、非常に考えさせられる投稿がありました。 「仕事がないので早く帰っています。『お手伝いすることはありますか?』と聞いても『いいよ』と言われるので、先輩たちは帰らないけれど、自分は多少の罪悪感を持ちつつ先に帰ります」  一見すると、無理に仕事を押し付けない「優しい職場」に見えるかもしれません。しかし、投稿者の方はそこに「罪悪感」と「モヤモヤ」を感じています。  ひょんちょるさんは放送の中で、この状況を「助け合いが生じていない状態」だと指摘しました。 心理的安全性が高いチームには、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」という4つの因子が必要だと言われていますが、この職場では、先輩たちが仕事を抱え込み、チーム内でのタスクのシェア=助け合いが機能していないのです。  ここから透けて見えるのは「チームビルディング」における構造的な欠陥です。 本来のチームビルディングとは、単に仲良くなるためのレクリエーションを行うことではありません。業務プロセスの中で、「誰が何を得意とし、今どのような状況にあるか」を可視化し、相互補完関係を作ることこそが本質なのです。  「帰っていいよ」という言葉は、優しさのように見えて、実は「あなたには頼まない」「自分でやったほうが早い」という、見えない拒絶の壁である可能性があります。そこには、真の意味での心理的安全性は存在しません。 形骸化した1on1とマネジメントを変える「対話」の技術  なぜ、先輩たちは仕事を後輩に渡せないのでしょうか。また、なぜ後輩は罪悪感を抱えたまま帰宅しなければならないのでしょうか。ここには「マネジメント」 と 「1on1」の質の課題が見え隠れします。  もし、この職場で機能する1on1が行われていれば、上司や先輩は「なぜ仕事を抱え込んでいるのか」を内省する機会を持てるはずです。また、後輩も「実は罪悪感を感じている」という本音を吐露できるはずです。  しかし、多くの現場で導入されている1on1は、「業務進捗の確認」だけの場になりがちで、形骸化しています。  必要なのは、管理としてのマネジメントではなく「対話型マネジメント」への転換です。 「対話」とは、単なるおしゃべりではありません。相手の背景や感情に深く耳を傾け、相互理解を深める技術です。   「なぜ自分は仕事を渡すことに抵抗があるのか?」   「後輩は今、どのような気持ちでチームを見ているのか?」  こうした問いを立て、対話を通じて解決策を探るプロセスこそが、現代のマネジメントには求められています。 EQ(感情知能)が育む共感型リーダーシップ:弱さをさらけ出す強さ  では、具体的にどうすればこの膠着状態を打破できるのでしょうか。 放送の中で私たちがたどり着いた一つの解は 「弱みの自己開示」 でした。ここで重要になるのが 「EQ(感情知能)」です。  EQとは、自分や他者の感情を理解し、適切に扱う能力のことです。 仕事を抱え込む先輩の心理には、「先輩として完璧でなければならない」「弱音を吐いてはいけない」という鎧があるのかもしれません。しかし、これからの時代に求められる「リーダーシップ」は、強さで引っ張るカリスマ型ではなく、共感と信頼で支えるサーバント型(支援型)です。  私が代表を務めるPotageでも、EQのトレーニングや検査を通じて、メンバー個々人の感情の癖や特性を可視化しています。 心理的安全性の高いチームを作るために最も効果的なのは、お互いの「弱み」や「苦手なこと」を共有することです。  「自分はここが苦手だから、助けてほしい」「あの人はここが苦手だから、自分がカバーしよう」  リーダーや先輩がまず自分の弱さをさらけ出す。これは、EQに基づいた高度な「コーチング」的アプローチでもあります。弱みを見せることは、恥ずかしいことではありません。むしろ、「あなたを信頼しているからこそ、自分の脆い部分を見せるのだ」という、強力な信頼のメッセージとなり、チームの結束を高めます。 組織文化の醸成は「小さなモヤモヤ」の解消から始まる  今回のお悩み相談にあったような「罪悪感」や「ちょっとした違和感」。 これを放置せず、対話のテーブルに乗せることができるかどうかが「組織文化」を醸成する分かれ道になります。   組織文化とは、経営理念という額縁の中にあるものではなく、日々のコミュニケーションの積み重ねの中に宿るものです。  もし、あなたがこの相談者さんと同じような状況にいるとしたら、勇気を出して「罪悪感を持っていること自体」を上司や同僚の皆さんに伝えてみてください。 「皆さんが残っているのに、自分だけ先に帰ることに罪悪感を感じてしまっていて、もっとチームの役に立ちたいんです」と、自分なりのEQを発揮して、感情を伝えてみるのです。  その小さな対話のきっかけが、形骸化した関係性にヒビを入れ、真に心理的安全性あふれるチームへと変革する第一歩になるはずです。  新番組「シンクリ!」では、こうした現場のリアルな悩みに対し、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のコミュニティ・EQの知見を掛け合わせて、解決のヒントを探っていきます。  3月から本放送がスタートします。 「こんなことで悩んでいるのは自分だけじゃないか」 そう思っているあなたのモヤモヤこそが、誰かのチームを救うヒントになるかもしれません。ぜひ、番組へのお便りもお待ちしています。  音声配信という、文字よりも温度の伝わる場所で、皆さんと「つながれる」ことを楽しみにしています。番組に関する最新情報は LINE でも配信していきます。よければこちらも、のぞいてみてください。

2026年3月11日

最終更新日:

心理的安全性を高める「対話型マネジメント」の本質とは?EQとチームビルディングで読み解く「帰れない職場」の正体

心理的安全性が低い職場の「優しそうで冷たい」構造を解説。対話型マネジメントとEQを軸に、チームの助け合いを機能させるヒントを探ります。

河原あずさ(Potage代表)

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