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【目次】 AI時代になぜリーダーは「休めない」のか EQから読み解く「休み下手リーダー」の正体 心理的安全性を保つ「代替行動」というリーダーの休み方 「休めるリーダー」が組織文化とチームを変える  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、混ぜ合わせることで新しい価値を生み出す。そんな思いで日々、コミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。  心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと、ナビゲーターのきのせまりさんと一緒に音声配信番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」をお届けしています。今回は第6回放送の内容を、記事としてお届けします。 006ai時代のリーダーが「休めない」本当の理由とは?eqで読み解く心理的安全性と代替行動の作り方  ゴールデンウィーク明けの収録となった今回は、いつもと趣向を変えて、所長であるひょんちょるさんから副所長の私にお悩み相談を投げかけてもらう回となりました。テーマはずばり「休み下手なリーダーは、どうしたら休めるのか」。中間管理職やプレイングマネージャー、そしてチームを率いるすべての方にとって、他人事ではないテーマだと感じます。 AI時代になぜリーダーは「休めない」のか  ひょんちょるさんからの相談はこんな内容でした。  「連休があっても、休むのがめちゃくちゃ下手くそなんです。AIが出てきてから、なおさら休みにくくなった感覚があって。EQの観点から、どう休むといいのかを聞いてみたい」。  心当たりがありすぎて、思わず深くうなずいてしまいました。AIは本来、人を楽にするために進化しているはずなのに、使えば使うほど仕事が増えていく感覚。これはひょんちょるさんも同じだと言います。「アウトプットは速くなったけれど、処理する情報量はどんどん増えていて、楽になった感じがしない。空いた時間を全部また、AIに費やしてしまっている・・」。  隙間時間ができたら、とりあえずプロンプトを投げて裏で回しておく。ご飯を食べる前にもAIを動かしておかないと、なんだか損した気持ちになる。気がつけば、AIを動かす隙間で自分が仕事をしているような、本末転倒な状態です。プレイングマネージャーとして現場と管理の両方を抱えるリーダーの皆さんも、このような罠にハマっているかもしれません。  ひょんちょるさんから出てきたもう一つの疲労ポイントが、部下が出してくるアウトプットの質の問題です。「いかにもAIで作りました」というものが増え、勘所のずれた成果物にツッコミを入れる役を、上司が一手に引き受けることになる。  もちろん中身がしっかりしていれば問題はありません。けれど、一度もやったことのない仕事をAIに丸投げしてしまうと、絶対に成立しない箇所が紛れ込みます。その違和感の発見と修正を、中間管理職が担う構造になっている職場は少なくないのかもしれません。AIで効率化したはずの時間が、別のところで燃え尽きの種になっている。これは、今向き合うべきテーマだと感じます。 EQから読み解く「休み下手リーダー」の正体  EQ(感情知能)の観点で見ると、私たちにはある共通点があります。それは「自分活用」というパラメーターが高いタイプだということ。自分で自分の行動を促していく力がめっぽう強く、同時並行でいろいろな物事を進めるのが三度の飯より好物なのです。  EQ検査(EQPI)を多くのマネージャーに実施していると、リーダーシップを発揮している方ほど、この行動力のパラメーターが高い傾向があります。それ自体は強みなのですが、休むという文脈においては、まさに諸刃の剣になります。  このタイプの人は、ストレスを感じると「休む」のではなく「別の作業を始めてストレス解消する」という、なかなか根深い癖があります。プロンプトを打つ手が止められないのも、この延長線上にある現象です。思考の壁打ち相手であるAIが、頭のオーバーヒートを助長して、擦り切れるまで考え続けてしまう。  理想を言えば、1日10分でもいいから振り返りの時間を作って、ぼーっと脳のデフラグをすることが大事です。ただ、多動なタイプほど「何も考えずにぼーっとする」のが苦手だから多動なのであって、頭でわかっていても体が勝手に動いてしまう。この性質を理解しないまま「休みなさい」と言われても、リーダー自身が自分を責めるだけで終わってしまいます。まずはこのメカニズムを認めることが、心理的安全性を自分自身に向ける第一歩になります。 心理的安全性を保つ「代替行動」というリーダーの休み方  では、どうするか。私が最近実践しているのは「代替行動」を自分にインストールするやり方です。  最近、神奈川県の二宮町に引っ越しまして、家から5分ほどの場所に「自分を整える場所」を作ってしまいました。ビルの3階の部屋に人工芝を敷き、オーディオ一式を新調し、レコードプレーヤーも置いて。朝起きたらその場所に行って、1曲、何もしないでレコードを聴く。それを自分に課しています。  多動な人は、ぼーっとすること自体は苦手でも、ルーティンとして組み込んでしまえば「事務所に行ってレコードを回したい」というプログラムに書き換わります。ある種、AIのプロンプトを打つ代わりの「代替行動」をセットして、行動の癖を別のところに付け替えてしまう発想です。一度書き換わると続いてしまうのも、多動タイプの特性ですから、これが意外と相性がいい。  禁煙のときに「タバコを吸いたくなったらレモンドロップを口に入れる」という古典的なテクニックがありますが、考え方としては同じです。やめさせるのではなく、別の行動にすり替える。コーチングの現場でも、こうした行動置換のアプローチは王道です。  代替行動を設計するときのコツは、五感を使って、できるだけスクリーンと左脳から離れる行動にすることです。  走る、筋トレする、散歩する、料理する。フィジカルな行動はどれも切り替えに役立ちます。音楽も、五感全体を包み込むような没入感が得られるので相性がいい。逆に、散歩しながらAudibleを聴いたりポッドキャストを聴いたりするのは、走るという身体的な行動に「知識を得たい」という二つ目を乗せてしまっているので、リリース効果は薄くなります。これは耳が痛いリーダーも多いはずです。  ひょんちょるさんは散歩で頭を整えるタイプだそうですが、「散歩を楽しくするアプリをクロードコードで作ってしまって、逆に神経が乱れる」という、いかにもなオチも飛び出していました。AIで解決しようとした瞬間に、目的が裏返ってしまうあるあるです。  知り合いの起業家にフルマラソンが大好きな方がいるのですが、「走っているうちにいろんなことがどうでもよくなって、思考整理にいい」とおっしゃっていました。何かに集中するために走るのではなく、何も考えられなくなるために走る。それくらいシンプルな仕掛けでいいのだと思います。 「休めるリーダー」が組織文化とチームを変える  心理的安全性の議論は、ともすればチームメンバーやプレイヤー側の話に寄りがちです。けれど、リーダー自身に余白がない状態では、対話型マネジメントも1on1も機能しません。余裕がない人間同士は、どうしても心理的安全性のない振る舞いを互いに引き出してしまいやすくなるからです。  逆に、リーダーが代替行動を持ち、五感で自分を整える時間を確保できていると、部下の話を聞くときの解像度が変わります。ツッコミ役にならざるを得ない場面でも、攻撃的な指摘ではなく、共感型リーダーシップに根ざしたフィードバックを返しやすくなる。これは、メンバーとの向き合いの質を変え、結果として組織文化そのものを少しずつ書き換えていきます。  今までの自分とは全く違うパターンの行動を一つ設定して、そこにスイッチを移していく。中間管理職、プレイングマネージャー、起業家、すべてのリーダーにとって、この「代替行動」発想は燃え尽きを防ぐ実装可能なチームビルディング戦略になります。  番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」では、これからもリーダーが現場で抱えるリアルなモヤモヤを、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のEQ・コミュニティの知見を掛け合わせながら解いていきます。  お便り、ひょんちょるグッズアイデア、いずれも所員一同お待ちしています。

2026年5月27日

最終更新日:

AI時代のリーダーが「休めない」本当の理由とは?EQで読み解く心理的安全性と代替行動の作り方 

AI時代に疲弊するリーダー必読。EQの視点で読み解く「休み下手」の正体と、五感を取り戻す代替行動術、対話型マネジメントに重要なリーダー自身の休み方を紹介。

河原あずさと36.5編集部

——関電不動産開発・営業推進部様での研修より 【目次】 1.ここまでの歩みと、今回の位置づけ 2.「発信力」というテーマについて 3.「相手の反応を勝手に解釈して、自分で飲み込んでしまう」 4.「関係性を壊したくないから、言わなかった」 5.「1mmだけ動かす」という発想 6.次のテーマへ——EQ研修を一過性で終わらせないために 7.研修の様子をもっと知りたい方へ  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  今年度のEQ研修を、関電不動産開発・営業推進部のみなさんと行ってきました。今回の記事では、研修後に受講生でもあるえなりさん・リンナさんと対談した内容をもとにお伝えします。  研修にあたり、関電不動産開発さんにいただいたテーマは「発信力」。「発信力」というキーワードの裏には、「言いたいことがあったのに、つい飲み込んでしまった」「相手の反応を先回りして気を遣い、結局お願いできなかった」。そんな、組織の中で誰もが一度は経験したことのある場面がありました。   ここまでの歩みと、今回の位置づけ    関電不動産開発・営業推進部のみなさんとは、昨年7月のEQPI受検から半年をかけて、「自分を知る → 他者を知る → 信頼を構築する」というプロセスをご一緒してきました。 昨年度の取り組みはこちら  新年度の今回は、その積み重ねの上に乗せた次のテーマです。研修の副題は「状況を『1mm』動かす関係構築実践法」。「発信」と聞くとSNSやプレゼンの技術を思い浮かべる人もいるかもしれませんが、実際に扱ったのは、日常業務の中でのコミュニケーションです。   「発信力」というテーマについて  そもそも今回の研修は、本研修窓口のえなりさんからの、こんな言葉から始まりました。「社外でいろんな方と接し共に事業を検討する場面、社内で他部署と連携する場面、そういった中で他者をモチベートしたり、自分の考えを伝えていく力を高めていきたい」。最初に聞いた時は、私も「外向きの発信」を想像してしまったのですが、お話を伺ううちに、見えてきた像は少し違うものでした。    発信力を広く捉え直すと、それはEQそのものなのではないか。人は誰でも、何かを発信し、何かを受信しています。その小さな、相手とのやりとりの解像度を上げることが、結果として、組織の中での発信力につながっていく。そんな仮説のもとで、今回の研修を組み立てました。 ここから、受講してくださったえなりさん、リンナさんの声を取り入れながら、研修の様子をお伝えしますね。   「相手の反応を勝手に解釈して、自分で飲み込んでしまう」 研修後にえなりさんが話してくださった気づきは、このようなものでした。    「相手はこう思っているだろうと勝手に解釈・遠慮して、お願いせずに自分でやってしまう傾向があった」。けれどロープレで実際に対話してみると、「気にしていたことは、起こらなかった」。余計な不安や、勝手に設定していた前提に、自分自身が縛られていたことに気づいた、と。    研修の中で、私は「言葉を飲み込む理由」には大きく4つのパターンがあるとお話ししました。「関係を壊したくない」「言っても効果が見えない」「うまく言葉にならない」「伝え方を間違えた」の4つです。そのどれもが、その瞬間は合理的に判断したつもりで、実は感情的な前提に縛られていることが多いのではないでしょうか。    えなりさんのケースは、典型的な「関係を壊したくない」型。気が利く方、責任感が強い方ほど陥りやすい癖でもあります。  ここで「感情を抑える」のではなく、「飲み込む前に、自分の中で何が起きているかを観察する」時にEQが活きます。   「関係性を壊したくないから、言わなかった」  もう一人、リンナさんも、気づきを話してくれました。  「他人を気にして自分の意見をこらえる傾向、というEQ診断の結果が、まさにその通りだった」と。 今回はなんと部長さんとのペアワークでした。普段は遠慮しがちなことも、思い切って素直に伝えてみたら、「言ってみても、別に恥ずかしくなかった」「関係性は壊れなかったどころか、ベストな方向に議論が進んだ」。  そして、こんな言葉も。 「相手に感情移入しすぎていた自分にも気づいた。一歩引いて、自分を見るのも大事」。   共感(相手に入り込む)と俯瞰(一歩離れて見る)を行き来する力。このように、個々人の共感と俯瞰が鍛えられると、組織の中でのコミュニケーションは、たしかに変わっていくのではないでしょうか。   「1mmだけ動かす」という発想  今回の研修の副題に「1mm」という言葉を入れたのには、理由があります。発信力研修と聞くと、「相手を動かす」というイメージに寄りがちかもしれません。けれどEQの文脈では、その方向に行きすぎないようにしたい、という思いがありました。組織の文化、利害関係、ヒエラルキー、これまでの人間関係。そういった構造は、いきなり大きくは変わらないものではないでしょうか。    だからこそ、「1mmだけずらす」という発想が役に立ちます。沈黙が続いた会議で一つだけ質問を投げてみる。資料を渡すだけでなく一言だけ添えてみる。そうした、一見ささやかな振る舞いが、状況を動かす最小単位になります。誰かが一言を発すると、それにつられて別の人ももう一言、声を出しやすくなる。会議の空気が、少しだけ柔らかくなる。日々のやりとりに、ほんのわずかな余裕が生まれる。そんな小さな連鎖が積み重なって、組織全体のコミュニケーションが、いつのまにか変わっていく。そんなイメージです。    えなりさんが研修の最後に「明日からすぐ、業務やプライベートにも展開できるサイズ感だった」と話してくださったのは、まさにこの「1mm」の感覚を掴んでくれたからではないかと思います。   次のテーマへ——EQ研修を一過性で終わらせないために  研修の終わり際、リンナさんがこんな言葉をくれました。「自分の中に潜在的に隠れている課題や壁を、どうやって取っ払うか。そんなテーマの研修があったら、自分にとって気づきを得るきっかけになると思う」。ここに、次のテーマの種があるかもしれません。    EQ診断は、一過性のイベントではなく、チームの状況に合わせて互いの理解を少しずつ深めていくのに使っていけるもの。改めて、私自身もそう感じた一日でした。    研修の様子をもっと知りたい方へ  研修当日のえなりさん・リンナさんとの対談はVoicy「コミュニティ思考AtoZ(河原あずさのチャンネル)」と、Voicy「ビル開発女子の働くとオフィスの話(関電不動産開発様のチャンネル)」の両方で配信中です。受講直後の生の声を聴いていただけます。ぜひ聴いてみていただけたら嬉しいです。 また「自分やチームのEQが、いま、どんな状態なのか」が気になった方は、よろしければPotageのEQPI診断もご活用ください。Potage公式LINEから、ご案内をお送りしています。

2026年5月26日

最終更新日:

「発信力」というテーマの裏にあった、本当の課題

関電不動産開発の発信力研修レポート。受講者のエナリさん、リンナさんとPotage河原あずさが、EQを軸に「状況を1mm動かす」関係構築や受講の感想を語り合います。

河原あずさと36.5編集部

ここに見出しを入力します これはプレースホルダの段落です。このテキストを独自のコンテンツに置き換えてください。 【目次】 1. 「管理職のストレスが限界」とは?──定義と背景 2. 3つのアプローチの違い|セルフケア・研修・構造の見直し 3. 管理職のストレスが「限界」に近づくとき、何が起きているか 4. 管理職をストレスの限界まで追い詰める5つの原因 5. 「もう限界」のサインを読み取るチェックリスト 6. 管理職本人ができる、限界を超える前の3つの対処 7. 人事・経営者が手を入れるべき、組織構造の3つの見直し 8. EQと心理的安全性の視点|「ストレス対処」ではなく「構造の見直し」へ 9. まとめ|管理職のストレスが限界に達する前に、構造に目を向ける  「もう限界かもしれない」と管理職本人が感じている。あるいは「うちの管理職が潰れてしまうのではないか」と人事・経営者が心配している──このキーワードに辿り着くのは、その両方の方ではないでしょうか。  この記事では、管理職をストレスの限界まで追い詰める原因を整理し、本人と組織それぞれの視点で対処の選択肢をまとめます。「個人の弱さ」ではなく「役割の構造」として見直すヒントをお届けします。 「管理職のストレスが限界」とは?──定義と背景  「管理職のストレスが限界」という状態は、次のように整理できます。  業務量・責任・人間関係のストレスが継続的かつ複合的にかかっている状態 本人の自覚より先に、身体や周囲との関係に変化が表れていることがある 「個人のスキル不足」ではなく「中間管理職という役割の構造」から生じている問題 放置すると休職・離職・チームの機能不全へ進行するリスクが高い  つまり、「管理職のストレスが限界」は、本人の弱さや努力不足の話ではありません。みなさんが見ているのは、いまの日本企業の中間管理職を取り巻く構造的な現象なのです。 3つのアプローチの違い|セルフケア・研修・構造の見直し  管理職のストレスへの打ち手は、大きく3つに分かれます。それぞれの違いを整理しました。  アプローチ 主な手段 効きどころ 限界 ① 個人のセルフケア 瞑想・運動・睡眠・休暇取得  一時的な回復  業務構造が変わらないと再発する ② 管理職研修の強化  レジリエンス研修・1on1研修 スキル・知識の底上げ 個人の負荷の総量は変わらない ③ 構造の見直し  役割設計・心理的安全性・EQ可視化 限界が生まれる手前で「整える」  短期で成果は出にくい  Potageが大切にしているのは、③の「構造の見直し」の視点です。①と②を否定するものではありません。ただ、症状の手前にある構造に目を向けないと、何度同じ研修をしても、限界は繰り返し戻ってきてしまうのではないでしょうか。 管理職のストレスが「限界」に近づくとき、何が起きているか  「管理職のストレスが限界」というキーワードで検索する人には、大きく二つの立場があります。一つは、当事者である管理職本人。「もう続けられないかもしれない」と感じ、答えを探している方です。もう一つは、人事・経営者・チームメンバーの立場で、「あの管理職が潰れてしまわないか」と心配している方です。  この記事は、その両方の方を意識して書いています。なぜなら、管理職のストレスが限界に近づくときに起きていることは、本人だけの問題ではなく、本人と組織の関係性のなかで生じている問題だからです。 自覚があるとは限らない  管理職に昇進する方の多くは、もともと責任感が強く、自分のしんどさを後回しにする傾向があります。だからこそ「自分はまだ大丈夫」と思っているうちに、知らないあいだに限界を超えてしまう。ある日突然、出社できなくなる、というケースが珍しくありません。 限界のサインは、まず周囲に表れることがある  本人より先にサインを察知するのは、たいてい周囲の人たちです。「いつもの返信が遅い」「会議での表情がいつもと違う」「ランチの誘いを丁寧に断り続けている」──そうした微細な変化が、本人の自覚より先に外に出てきます。  つまり、「限界かもしれない」という問いは、本人と周囲の両方が同時に持っておくとよいものなのです。 管理職をストレスの限界まで追い詰める5つの原因  ここからは原因を整理します。ただし、注意していただきたいのは、これから挙げる5つは「管理職個人のスキル不足」ではなく、中間管理職という役割そのものの構造から生まれるものだということです。  Potage代表の河原あずさは、よく整体師の比喩を用います。腕のいい整体師は、腰が痛い人の腰だけを揉まない。足や下半身、首の筋肉が引っ張り合っているから腰が痛い、と説明できます。同じように、管理職のストレスも「症状」だけを見ても解決には届きません。症状の手前にある構造に目を向ける必要があるのです。 ① 業務量と責任が同時に膨らみ続ける(プレイングマネージャー問題)  日本企業の多くで、管理職はプレイヤー業務を抱えたまま昇格します。いわゆる「プレイングマネージャー問題」です。  自分の業務はそのままに、部下の面倒見と、チームの数字の責任が乗ってくる。「忙しい」のではなく、「忙しさの種類が二重三重になる」のが管理職の実態だと言えるでしょう。 ② 上層部と現場の板挟み  経営からは高い成果を求められ、方針転換があれば即対応を迫られます。一方で、部下にはその意図を翻訳して伝え、納得感のある形で動いてもらわなければなりません。両方向に説明責任が発生するのが中間管理職という立ち位置です。 ③ 部下の働き方改革によるしわ寄せ  部下の残業時間に上限が設けられ、有給取得の推進が進むなかで、削減された業務分はしばしば管理職に戻ってきます。「自分が抱えればいい」という選択が、限界を遠ざけているように見えて、実は近づけているのです。 ④ 部下マネジメントの「答えのなさ」  業務の問題には答えがあります。しかし、人の感情や関係性の問題には、明確な答えがありません。「1on1をやれ」「寄り添え」と言われても、忙しさのなかで身が入らない。結果、部下からは「ちゃんと見てもらえていない」と感じられ、信頼が積み上がっていかない──この徒労感が管理職を消耗させます。 ⑤ 弱音を吐ける場所がない孤立構造  管理職になった瞬間、同じ目線で愚痴を言える相手がいなくなります。上には弱音を吐けず、下にも吐けない。同僚の管理職同士も、互いに忙しさを察し合って遠慮する。「しんどい」という言葉が組織のどこにも置けない状態が、限界を加速させてしまうのです。 「もう限界」のサインを読み取るチェックリスト  ここからは、限界のサインを「本人視点」と「周囲視点」の二つに分けて整理します。 本人が気づくサイン|2つのパターン  管理職本人に表れるサインは、大きく二つのパターンに分かれます。  一つ目は、過剰に動いてしまうパターンです。もともとストレスに繊細なタイプの方に多く見られます。本来は直視したくない疲労や不安があるとき、別の行動でそれをごまかそうとします。新しい案件に手を挙げる、副業を始める、夜のスケジュールを詰める──一見アクティブですが、本質的な負荷は解消されておらず、ある日パタッと燃え尽きるリスクがあります。  二つ目は、感情を麻痺させていくパターンです。ストレス耐性が比較的強いタイプに多く見られます。EQの観点では「平静」という因子が過剰に働いている状態で、感情の入り口にブロックを敷くことで、痛みを感じないようにしています。一見、落ち着いて見えるのですが、生身の人間である以上、疲労は確実に蓄積していきます。  このパターンでは、以下のような変化が表に出てくることがあります。 急に蕁麻疹が出る、頭痛・腹痛が増えるなどの身体的変調 休日に一日中寝ていないと回復しない 親しかった人との距離が増し、自分から遠ざかってしまう 表情に感情が出にくくなる、本音が見えにくいと言われる  いずれも、自分でも理由をうまく説明できない違和感として現れます。 周囲(人事・上司・同僚)が気づくサイン  周囲は、本人が言葉にする前のサインを拾える立場にあります。 返信のテンポやトーンが「いつもと違う」 会議での発言数・表情・姿勢の微細な変化 雑談やランチへの参加が減る、誘いを丁寧に断り続ける 数字の説明が淡白になる、感情の起伏が見えなくなる  「いつもと違う」「普通と違う」を見逃さないこと。これは個人のスキルというより、組織の観察力の問題なのです。 ここまでのポイント 管理職のストレスは「個人の弱さ」ではなく「役割の構造」から生まれている 限界には2つのパターン(過動/麻痺)があり、本人より周囲が先に気づくことが多い 「いつもと違う」を拾える組織と拾えない組織がある。 管理職本人ができる、限界を超える前の3つの対処  ここからは、管理職本人へのメッセージです。「もう限界かもしれない」と感じているなら、辞める・逃げるを決断する前に、試していただきたいことがあります。 ① 自分の感情を「観る」──EQの出発点  EQ(感情知能)とは、感情を押し殺す技術ではありません。感情を情報として読み取る力のことです。  怒り、不安、徒労感を抑え込むのではなく、「いま、自分はこういう感情を持っているな」と気づくこと。それだけで、感情に巻き込まれる時間が短くなります。しんどさを言葉にできるようになると、対処の選択肢も見えてきます。  逆に、感情を麻痺させてしまうと、「何がしんどいのかも分からない」状態に入り、回復の入り口を見失ってしまうのです。 ② 「手放す」という第四の選択肢を持つ  限界を感じたとき、人は「戦う」「逃げる」「話す」のどれかを選ぼうとします。RPGで言えば、戦闘画面のコマンドのようなものです。これに加えて、Potageが大切にしているのが「手放す」という第四の選択肢です。  手放すとは、自分が抱えている行動を棚卸しし、「自分にとって本当に必要ではないもの」を周りに渡していくことです。特に管理職の場合、プレイング業務を意識的にチームメンバーに渡していくことが鍵になります。  全部を渡さなくてもかまいません。定例ミーティングを一つ抜ける、抱えていたプロジェクトを一段下に移すだけで、隙間が生まれます。その隙間こそが、気持ちの余裕につながり、ようやくチームと向き合う土台が「整う」のです。 ③ 弱みを出すことを自分に許可する(バルネラビリティ)  バルネラビリティ(脆弱性)という考え方があります。「困っている」「助けてほしい」と口に出せるかどうか、というシンプルな問いです。  管理職になると、弱みを見せてはいけないと自分に縛りをかけがちです。しかし、完璧な管理職などいません。「いま自分はここに困っている」と表明することは、責任放棄ではなく、チームとしてのパフォーマンスを上げる第一歩なのです。  管理職が弱みを出せると、部下もまた、自分の弱みを出せるようになります。 人事・経営者が手を入れるべき、組織構造の3つの見直し  ここからは、人事・経営者の立場の方へのメッセージです。管理職のストレスを「個人の問題」として研修で対処しようとしても、限界があります。手を入れるとよいのは、もう一段奥の構造です。 ① 「研修」より先に「役割設計」を見直す  管理職向けのレジリエンス研修やストレスマネジメント研修は、もちろん無駄ではありません。ただし、それだけで解決する問題ではない、というのが現場の実感です。  日本企業では、待遇を上げる方法が「管理職に昇格させること」しかない、という構造的なエラーが残っています。プレイヤーとして優秀な方が、プレイング業務を抱えたまま管理職になり、そこに人の面倒と数字の責任が乗る。この役割設計自体を見直さなければ、研修は対症療法にしかなりません。  「いまの管理職に乗っている業務量・権限・期待値は、本当に一人で背負えるサイズになっているか」を、まず問うことから始めるのが大切ではないでしょうか。 ② 心理的安全性のあるチームをつくる土台を整える  心理的安全性は、研修やワークショップで一度に「インストール」できるものではありません。日々の関係性のなかで、少しずつ醸成される土壌だと考えています。  ここで見落とされやすいのが、心理的安全性は部下のためだけにあるのではなく、管理職自身のためにもあるということです。管理職が「しんどい」を口にできない組織で、部下に「本音を言ってほしい」と言うのは、矛盾しているのではないでしょうか。土壌は、管理職から先に整えていく必要があります。 ③ EQと「得意」の可視化で、チームの役割を組み替える  心理的安全性を構造として支えるには、メンバー一人ひとりの感情の傾向を可視化することが有効です。  Potageが提供している「EQPI」(感情知能を測定するアセスメント)を使うと、感情の使い方の癖、苦手なコミュニケーションのパターンが見えてきます。  感情の癖は、そのまま「人と関わるときの得意・不得意」につながります。共感は強いが踏み込むのが苦手な人、決断は速いが他人の感情の機微を拾いにくい人──そうしたパターンが可視化されると、いまその方に振っている役割が、得意の方向と合っているかが見えてくるのです。  合っていなければ、調整し、合っている部分はしっかり評価する。これを繰り返すと、チーム全体が「得意なことに尖っていく」組織へと変わっていきます。 EQと心理的安全性の視点|「ストレス対処」ではなく「構造の見直し」へ  ここまでの内容を、Potage代表・河原あずさの言葉で改めて整理します。   仮にマネージャーが「もう限界です」と手を挙げたとき、それは「あなたが我慢すればいい」という問題でしょうか。プレイング業務を残されたまま、人を見ろと言われ、数字の責任を背負っている。管理職向けの研修も大事かもしれないけれど、それだけで解決する問題ではない、と私は思っています。   腕のいい整体師は、腰が痛い人の腰を揉まない。足や下半身、首の筋肉が引っ張り合っているから腰が痛い、と説明します。中間管理職のしんどさも同じで、「症状ではなく構造」を見ないと、本当の解決にはたどり着かないのではないでしょうか。 症状ではなく構造を見る  管理職本人へのケアと、組織構造の見直しは、両輪です。片方だけでは持続しません。「管理職を鍛える」のではなく、「役割の構造を整える」。この言葉の置き換えが、Potageのスタンスを最もよく表していると考えています。 EQが個人と組織をつなぐ鍵になる  EQとは、自分や周囲の感情を「情報」として読み取る力です。自分のなかに「いま、限界が近いかもしれない」というサインが立ち上がったとき、それを見逃さずに受け取れる──そういう感度のことだと考えています。  管理職本人がこの感度を持っていれば、限界が「限界」になりきる前に、立ち止まることができます。そして、チームに心理的安全性があれば、「しんどい」と声に出すハードルが下がり、SOSが早く出せる関係になっていきます。  個人と組織の両面に効くのが、EQと心理的安全性のアプローチなのです。 まずは「いま」を可視化する一歩  次の一歩は、難しいものではありません。自分自身、あるいはチームの「いま」の状態を、客観的に見える形にすること。EQPI診断を一人で受けてみる、チームで受けてみる、というのは、その入り口の一つだと言ってよいでしょう。 まとめ|管理職のストレスが限界に達する前に、構造に目を向ける  管理職のストレスは、本人だけの問題ではありません。本人と組織の関係性、そして役割そのものの設計が、いまの状態を生んでいます。  管理職本人の方へ。「もう限界」と感じたとき、戦う・逃げる・話すに加えて、「手放す」という選択肢があることを思い出していただきたいのです。自分の感情を観る、抱えているものを棚卸しする、弱みを表明する。その三つが、限界の手前で立ち止まる力になります。  人事・経営者の方へ。研修で個人を鍛えるだけでなく、同時に役割設計と心理的安全性の土壌を見直してみてください。管理職が「しんどい」と言える組織は、部下も本音を出せる組織です。土壌は、管理職から先に「整える」必要があるのではないでしょうか。 「いま」を可視化する一歩へ  管理職・チームづくりに悩む方へ。EQと心理的安全性に関する実践情報をお届けしています。また、EQPI診断のLINE限定キャンペーンも時折行っています。よければご登録ください。 あわせて読みたい(日経COMEMO)  このテーマについて、Potage代表・河原あずさが日経COMEMOで、「忙しすぎる中間管理職シリーズ」として詳しく語っています。

2026年5月29日

最終更新日:

「管理職のストレスが限界…」と感じたら|本人と組織で見直す7つの視点

中間管理職のストレスが限界に近づくサインと原因を整理。本人ができる対処と、人事・経営者が見直すべき組織構造の視点まで、EQと心理的安全性の観点から解説します。

河原あずさと36.5編集部

【目次】 1. 「あずさんが怖い」から始まった社長の悩み相談 2. 心理的安全性の土台は「一人ひとりとの関係性の質」にある 3. フルリモート時代のチームビルディングに必要な「文化祭体験」 4. 自己開示こそがEQを活かしたリーダーシップの出発点    Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織の中でそれらを混ぜ合わせることで新しい価値を創出する。そんな想いで日々、コミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。  音声配信番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」、今回もお届けします。心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと、ナビゲーターのきのせさんと一緒に、リスナーの皆さんからいただいたお悩みに向き合っていく番組です。  今回はちょっと趣向を変えまして、相談者は......なんと僕自身です。副所長が所長に泣きつく回、とでも言いましょうか。  Potageという会社を始めて6期目。業務委託のメンバーも含めると10人ほどの規模になりました。人が増えてくる中で、それまで「僕がやったことのこぼれ球をメンバーが拾う」というスタイルで回していたものが、ちゃんとチームに向き合うマネジメントが求められるフェーズに変わってきた。もともとそういうマネジメントが苦手で会社を飛び出した口ですから、正直「これで大丈夫なのか」という不安がありました。  最近はスタッフから「あずさんってちょっと怖い」と言われることがあって。考え事をしながら話を聞いていると、つい部長面になってしまうらしいのです。外向きには明るいキャラクターで発信しているのに、社内ではそう見られているというギャップに、なかなか悩ましいものがありました。  そんな僕の悩みに、社長歴14年という大先輩であるひょんちょるさんがどう答えてくれたのか。今回はその内容をお届けします。 「あずさんが怖い」から始まった社長の悩み相談  今回相談したかったのは、「組織が大きくなる中で、社長としてのマネジメントをどう変えていけばいいのか」ということです。個人会社の延長でやっていたものが、10人規模になると、チームとしての組織づくりに正面から向き合わなければならない。中間管理職を置くほどの規模ではないけれど、社長が一人で全員を見るには限界があるという悩みです。  僕自身、もともとそういうマネジメントが苦手で会社を辞めて起業した人間です。だからこそ、「このままのやり方でいいのか」という不安があった。かといって、マネジメントを学べば解決するという単純な話でもない。組織文化をどう育てていくかという、もっと根本的な問いに向き合う必要が出てきました。  もう一つの悩みが、「あずさんってちょっと怖い」問題です。「外にいるときの社長は基本めちゃくちゃく頑張っているので、社内や家の中まであのテンションだと思わない方がいい」と、ひょんちょるさんが言いました。外向きには「ビジネス芸人」のようなテンションで場を盛り上げるけれど、本来は根暗なところがあることってありますよね。特に新しいメンバーにとっては、外向きの明るいあずさんしか知らないわけで、社内で真顔になっている姿を見たときに「怖い」と感じてしまうのは無理もないのかもしれません。  年齢を重ねるにつれて、意図せず「権威側」に回ってしまうというリーダーシップの悩みについても語り合いました。自分の中の「らしさ」と、外から求められる役割とのギャップ。EQの観点で言えば、自分の感情の特性を正しく理解し、それを周囲に開示できるかどうかが、リーダーシップの質を左右するのだと、お互いに確認し合えた瞬間でした。 心理的安全性の土台は「一人ひとりとの関係性の質」にある  ひょんちょるさんの最初のアドバイスは、非常にシンプルかつ本質的なものでした。「10人ぐらいの規模であれば、まず一人ひとりとの関係性を深めることをやりきる」。  大手企業でもよくあることだそうですが、「来年から1on1をやらなきゃいけない」という制度先行の形で始まる1on1は、関係性の土台がないまま進むので、メンバーにとっては「何を聞かれるんだろう」という緊張の時間でしかない。形骸化した1on1をいくら回数重ねても、メンバーが本音を引き出せる対話にはなりません。  大事なのは、制度の手前にある関係性の質です。ダニエル・キムさんの「成功の循環」でも語られている通り、関係の質が全ての起点になります。そこを飛ばして、いきなりマネジメントの「型」を入れても、組織文化は育たないのです。  ひょんちょるさんが重視するのは、サシで飲みに行けるか、ランチを一緒に食べられるかという、もっと手前にある関係性の質です。そういう質の関係性ができていると、メンバーは困ったときに自然とDMで「ちょっと困ってるんですけど」と連絡をくれるようになる。すると「怖い」という印象も自然に消えていく。心理的安全性の土台は、制度ではなく、こうした日常の対話の積み重ねの中にあるのです。  ひょんちょるさん自身も、出張先にメンバーがいたらすぐに飲みに誘うのだそうです。最近の大阪出張の際に、メンバーから「飲みに行きましょう」と連絡が来て、互いを知り合うきっかけになったというエピソードも。距離感が近づくと、耳が痛いフィードバックもしてくれるようになるし、社内の状況についてわからないことをちゃんと質問してくれる環境ができる。そうした関わりが自然と生まれるのが、関係性の質を高める大きなメリットです。  だからこそ、自分のキャラクターを忖度なしに知ってもらう時間が必要だと、ひょんちょるさんは指摘してくれました。ランチなどの場を通じて「自分はこんな人間なんだよ」と開示していく。それはまさに、自己開示の実践であり、チームの心理的安全性を高める対話型マネジメントの第一歩なのです。 フルリモート時代のチームビルディングに必要な「文化祭体験」  Potageはフルリモートの会社です。オンラインだとどうしてもアポイントが要件ベースになるし、阿吽の呼吸のようなものが作りづらい。この難しさについても、ひょんちょるさんに率直にぶつけてみました。ひょんちょるさんの会社ZENTechも実はフルリモートで始まった会社で、沖縄をはじめ各地にメンバーがいるそうです。  ひょんちょるさんが指摘したフルリモートの最大の課題は「最後の1割を完成させる瞬間の力強さがないこと」でした。企画やプロジェクトの9割までは一人でも進められるけれど、最後の1割が実は一番重い。その最後の詰めをみんなで一緒にやる体験を意図的に作ることが、組織の一体感を生むのだと。  僕自身、まとめる作業を一人でやってしまいがちなタイプでした。でもそこをあえてみんなのイベントにする。その感性が、最終的にチームの関係の質を高めるのです。  具体的には例えば、合宿やオフィスに集まる日を設けて「この日にみんなで完成させよう」という場をつくる。ひょんちょるさんはこれを「文化祭体験」と表現してくれました。年に1回でもいいから、お客さんに何かが届く瞬間をみんなで見る、みんなで作るという共有体験があると、チームの結束力はまったく違ってくる。ZENTechでは「心理的安全性アワード」というイベントが、まさにその文化祭体験の役割を果たしているそうです。  イベントやコミュニティの仕事を長くやってきた身として、フェイス・トゥ・フェイスの共同作業の熱量に勝るものはない、という原点に改めて立ち戻らされた思いです。特別なツールや大がかりなチームビルディング施策ではなく、「みんなで一つのものを完成させる」というシンプルな体験が、組織文化を育てる種になるのです。 自己開示こそがEQを活かしたリーダーシップの出発点  今回の放送は、僕自身が悩みを打ち明けるという、いつもとは少し違う回になりました。ひょんちょるさんが最後に「今日自体が自己開示の時間になっていますね」と言ってくれたのが印象的です。  ナビゲーターのきのせさんも「どういう場で、どういう感情を共にするかが大事。リアルに場を共有して、仮に知らない一面が出てきてもびっくりしないような関係性をつくること」と、まさに今回のポイントをまとめてくれました。  自分の弱さや悩みを開示すること。それは社長やリーダーにとっては勇気のいることかもしれません。でも、その開示こそが関係の質を高め、心理的安全性の土台をつくる。EQの観点で言えば、自分の感情を正しく認識し、それを適切に表現する力が、共感型のリーダーシップの出発点になるのです。  今回の放送を通じて見えてきたのは、明日からでも始められる3つの実践です。一つ目は、一人ひとりとの関係性を丁寧に深めること。二つ目は、自分のキャラクターを正直に見せること。そして三つ目は、年に一度でもいいから共同体験をつくること。どれも特別な制度やツールが必要なわけではなく、よりよい組織づくりの一歩として、すぐに実行できることばかりです。  「シンクリ!」では、こうした現場のリアルな悩みに対して、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のコミュニティ・EQの知見を掛け合わせて、解決のヒントをお届けしています。  「こんなことで悩んでいるのは自分だけかも」——そう思っている方のモヤモヤこそが、誰かのチームを救うヒントになるかもしれません。ぜひ番組へのお便りもお待ちしています。音声配信という、文字よりも温度の伝わる場所で、皆さんと「つながれる」ことを楽しみにしています。

2026年5月13日

最終更新日:

「社長が怖い」と言われたら?心理的安全性とEQで変える組織づくりの第一歩

10人規模の組織で社長が向き合う心理的安全性の課題。自己開示と関係性の質を起点に、フルリモート時代のチームづくりに必要な実践を、EQの視点から3つ紹介します。

河原あずさと36.5編集部

【目次】 1. 「なんで俺なんだよ」と叫ぶ同僚を行動分析で紐解く 2. EQの視点から感情のトリガーを理解する 3. トップの行動変化が組織全体を動かす 4. 不満を建設的な対話に変えるチームの行動規範づくり  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織の中でそれらを混ぜ合わせることで新しい価値を創出する。そんな想いでコミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。  心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと一緒にお届けしている音声配信番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」。ナビゲーターのきのせまりさんを交えた3人で、リスナーの皆さんからいただいたお悩みに答えていく番組です。  今回の放送で取り上げたのは、多くの職場で「あるある」と頷かれそうなお悩みでした。チームの心理的安全性を脅かす「困ったちゃん」にどう向き合うか。行動分析とEQという2つの切り口から、チームビルディングの実践的なヒントを探ります。 「なんで俺なんだよ」と叫ぶ同僚を行動分析で紐解く  今回いただいたお便りは、こんな内容でした。 「仕事をアサインすると常に『なんで俺なんだよ』と大声で不満を口にする。常に文句を言いながら仕事をしているチームメンバーがいて、チームの心理的安全性が損なわれているように感じます」  サラリーマン人生がそこそこ長い私としても、なんとも見覚えのある光景です。誰もが一度は心当たりがあるのではないでしょうか。いわゆるチームの中の「困ったちゃん」問題です。  ひょんちょるさんは、こうした相談はクライアント企業でもよく耳にするといいます。ただし、同時に強調していたのは「個人にフォーカスして『この人が困ったちゃんだ』とレッテルを貼ることは避けたい」ということ。一方で、その人の存在によってチーム全体の心理的安全性が下がっているという事実に、マネジメントとしてしっかり向き合う必要があるとも語っていました。本人も悪気があるわけではなく、テンポや言葉の表現がずれているだけで周囲に悪影響を及ぼしてしまっている・・そういうケースが現場では少なくないのだそうです。  そこでひょんちょるさんが提案したのが「行動分析」というアプローチです。これは、人の行動を「きっかけ」「行動」「見返り」という3つの要素に分解して分析するフレームワークです。「なんで俺なんだよ」と言う行動には、必ず「きっかけ」がある。この場合は仕事のアサインですね。そして行動の後には「見返り」がある。周囲が気を遣ってくれたり、話を聞いてくれたりすることが、本人にとっての見返りになっている可能性があるのです。  であれば、その「見返り」の部分をデザインし直すことで、行動そのものを変えていける。不満を声に出しても周りが過剰に反応しない、あるいは別の望ましい行動に対してポジティブな見返りを与えるといった工夫をすることで、行動のパターンを変えていこうというわけです。これはマネジメントにおける非常に実践的なアプローチだと感じました。  この話を聞いていて、私は子育てとの共通点を強く感じました。子どもがかまってほしくてかんしゃくを起こしたとき、そこで過剰に構ってしまうと、子どもは「こうすれば注目してもらえる」と学習してしまいます。かといって完全に放置すると別の問題が生じるので、バランスが難しい。ひょんちょるさんも「見返りが大きすぎると、またやればいいと学習してしまう。これは人間に限った話ではなく、俯瞰してみると動物全般に共通する行動原理です」と話していました。ポイントは、こうした構造を理解して、どのように向き合うか。感情論ではなく、行動の構造を冷静に見つめ直すという視点が、チームビルディングにおいても重要なのです。 EQの視点から感情のトリガーを理解する  EQ(感情知能)の世界でも、似たアプローチがあります。感情が動くときには必ずトリガーがあり、人はその感情の動きをもとに特定の行動をとる。自分の感情の乱れを観察するときは自己分析を、他者の行動を理解するときは他者分析をする。そして、その人がどういう感情の動きをしているのかを観察・類推し、コミュニケーションのやり方を変えていく。ひょんちょるさんの行動分析と、私のEQアプローチは、実は非常に近いところにあるのです。  ひょんちょるさんも「表面に出ている行動と、本人が内側で思っていることは違う可能性がある。だからこそ、まずは行動の部分を是正するアプローチが有効なのでは」と語っていました。「なんで俺なんだよ」と口にする方も、実際には「自分ばかりに負担がかかっている」という不安や不満を抱えているのかもしれない。行動とEQ(感情)、両面から捉えることで、リーダーシップやコーチングの精度が上がり、より立体的な理解が可能になるのだと思います。 トップの行動変化が組織全体を動かす  放送の中で、ひょんちょるさんがとても象徴的なエピソードを共有してくれました。ある会社の役員の方が、部下が持ってきた10ページの提案書のうち、最初の1ページだけ読んで「分かった、こういうことだろう」と結論づけてしまう。残り9ページにはまったく違う内容が書いてあるのに、部下は「はい、そうです」としか言えない状態だったそうです。  行動分析と研修を通じてこの課題に向き合ったところ、その役員の方はなんと自ら「これからは人の話を最後まで聞きます」と宣言。パソコンに「最後まで聞く」と書いたテープを貼り、実際に行動を変えたのだそうです。さらに、数百人規模の部門会議でも「今まで申し訳なかった。これからはちゃんと最後まで聞く」と公言されたとのこと。  面白いのはその連鎖反応です。役員が最後まで聞くようになったことで、今度は部下たちが「10ページ全部読まれるなら、10ページ全部ちゃんと作らないと」と意識が変わった。上から行動が変わることで、組織全体のアウトプットの質が上がっていったというのです。  これは、組織文化の変革における非常に重要な示唆を含んでいます。ボトムアップで頑張っている人はたくさんいるけれど、どこかでトップが変わらないと、やがて疲弊して諦めてしまう人が出てくる。トップの一つの行動変化が組織全体に与えるインパクトは、想像以上に大きいのです。ひょんちょるさんは「トップにどうやって伝えていくか、トップが変わることをどうデザインしていくかは常に意識している」と話していました。ミドルマネジメントやボトムの努力ももちろん大事ですが、トップダウンの変化をいかに仕掛けるかが、組織文化を変えるカギになるということですね。 不満を建設的な対話に変えるチームの行動規範づくり  では、質問者の方のケースに戻りましょう。不満を言い続けるメンバーに対して、周囲のリアクションを変えていくことが第一歩です。ひょんちょるさんによれば、1回で学習は起きないので、1〜2ヶ月ほどその行動に対して、マネージャーや周囲が「違う反応を取り続ける」ことが大切。それでもなお同じ行動を続けるのは相当タフなケースで、多くの場合は周囲の反応が変わることで、本人も変化していくとのことでした。  加えて重要なのが、チームとしての行動規範を明確にすることです。ひょんちょるさんはスポーツの例を挙げていました。たとえばWBCで「スモールベースボール」というコンセプトが掲げられれば、選手たちはどういう行動が求められているかが明確になる。同じように、チームが「うちではこういう行動を大切にしている」「こういう行動を評価する」と明示していれば、メンバーは自然とその方向に向かっていくのです。  そして、不満を言っている当人については、不満の「言い方」も大事です。「なんで俺なんだよ」と叫ぶのではなく、「今、こういうタスクを抱えていて、この時期にこの優先度の仕事が入ると厳しい部分があります」と合理的に伝えられるようになれば、同じ「不満」でも、チームにとって建設的な対話に変わります。ビジネスの場では合理的判断の積み重ねが求められるからこそ、周囲が判断しやすい形で意見を伝える力は、全員が身につけるべきスキルなのだと思います。  今回の放送では、チームの心理的安全性を脅かす「困ったちゃん」問題に対して、行動分析やEQといった切り口から実践的なアプローチを考えました。行動の構造を見つめ直し、チーム全体でリアクションを変えていく。トップから率先して変化し、組織文化を動かす。そしてチームビルディングの一環として行動規範を言語化し、不満を建設的な対話に変えていく。そういった取り組みの積み重ねが、心理的安全性の高いチームづくりにつながるのだと感じました。  「シンクリ!」では、こうした現場のリアルな悩みに対し、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のコミュニティ・EQの知見を掛け合わせて、解決のヒントを探っていきます。「こんなことで悩んでいるのは自分だけじゃないか」と思っているあなたのモヤモヤこそが、誰かのチームを救うヒントになるかもしれません。ぜひ、番組へのお便りもお待ちしています。

2026年4月28日

最終更新日:

チームの心理的安全性を壊す「困ったちゃん」問題の処方箋 行動分析×EQで組織文化を変える

チームの心理的安全性を脅かす「困ったちゃん」にどう向き合うか。行動分析とEQの視点から、不満を建設的な対話に変えるチームづくりのヒントを紹介します。

河原あずさと36.5編集部

【目次】 1. 感情マネジメントとは|感情を「抑える」ことではない 2. なぜ今、管理職に感情マネジメントが求められているのか 3. 感情マネジメントができないと、チームに何が起きるか 4. 感情マネジメントを実践する3つのステップ 5. 管理職が日常で取り入れられる感情マネジメントの習慣 6. チームで実践する感情マネジメント|個人スキルで閉じない 7. まとめ|感情マネジメントは「管理する」より「整える」もの 管理職・チームづくりに悩む方へ、EQと心理的安全性の実践情報をLINEでお届けしています ▶ 登録してみる  職場で、感情に振り回される瞬間はありませんか。  会議中、理不尽な指摘にカッとなりそうになる。部下の態度にモヤモヤしながら、笑顔を保ち続ける。上からの方針と現場の声のはざまで、心がすり減っていく。  「感情マネジメント」という言葉には、こうした場面で「自分を抑え込む」イメージがつきまといます。けれど、本当にそれだけなのでしょうか。  この記事では、感情マネジメントの本当の意味を、「抑える」ではなく「感情を整える」という視点から整理していきます。あわせて、中間管理職のみなさんがつまずきやすい構造的な理由と、明日から試せる3つのステップについてもお伝えします。 この記事でわかること 感情マネジメントの本当の意味(「抑える」ではなく「整える」) 中間管理職が感情マネジメントでつまずく、構造的な理由 感情マネジメントを実践する 「気づく・受け止める・選び直す」 の3ステップ チーム全体で感情マネジメントを機能させる視点 早わかり|感情マネジメントと関連概念の違い 概念 主な焦点 アプローチ 感情マネジメント 感情との付き合い方 気づき、整え、活かす 感情コントロール 感情そのものの抑制 我慢する/感じないようにする アンガーマネジメント 怒りの感情への対処 衝動を鎮めるテクニック EQ(感情知能)とは  本記事で繰り返し登場する EQ(Emotional Intelligence Quotient・感情知能) とは、自分や相手の感情を情報として適切に読み取り、判断や関係づくりに活かす力のことです。感情を押し殺したり、抑え込んだりする技術ではありません。Potageでは、EQを「感情とどう付き合うかを扱う力」として位置づけています。 1. 感情マネジメントとは|感情を「抑える」ことではない 感情マネジメントの定義  感情マネジメントとは、自分や周囲の感情を認識し、理解し、整え、活かす力のことです。  大事なポイントは、感情そのものをなくしたり、無理に変えたりすることではない、という点です。怒りや不安、モヤモヤは、起きないようにするものではなく、起きたときにどう扱うかが問われているスキルだと、Potageは捉えています。  Potageでは、この感情マネジメントのことを「感情を整える」と呼んでいます。 感情コントロールとの違い  よく混同されるのが、「感情コントロール」や「メンタルタフネス」といった言葉です。  コントロールという言葉には、制御する・我慢する・感じないようにする、というニュアンスが含まれます。感情の周りに防波堤のようなブロックを立て、外からの刺激が入らないように自分を鈍感にしていく方向です。  一見、これは強さのように見えるかもしれません。しかし、800名以上のEQ診断を行ってきたPotage代表・河原あずさ(EQPIアナリスト)は、こう語ります。   「機械と一緒で、何かを制御し続けていると、どこかで故障するんですね。EQの考え方はそうではなくて、『故障しない自分』をつくっていくということです」  感情を抑え込み続けると、人との距離が生まれやすくなったり、共感が伝わらず冷たい印象を持たれたり、どこかで反動が来てしまったり・・・といった不都合が起こりがちです。  感情マネジメントが目指すのは、感情の波をなくすことではないのです。感情の波はあっていいものとして、乗りこなす力を育てていく。そんなイメージではないでしょうか。 感情マネジメントの4つの要素  感情マネジメントは、次の4つの力の組み合わせで成り立っていると言われます。 要素 内容 ①識別 今、自分や相手にどんな感情が起きているかに気づく ②理解 その感情がなぜ起きているのか、背景を読み解く ③調整  感情に飲まれず、状況に応じて整える ④活用  感情を判断や行動、関係づくりの力に変える  一般的な解説では、この4つが横並びで紹介されることが多いかもしれません。Potageでは、これらを実際に使える順番に並び替えた「時系列の実践プロセス」として整理しています。詳しくは、後半の「3つのステップ」でお伝えしていきます。 2. なぜ今、管理職に感情マネジメントが求められているのか 板挟みの中で感情がすり減る中間管理職の現実  経営からは「もっと数字を」と言われ、現場からは「もう限界です」と言われる。自分もプレイヤーとして動かざるを得ず、感情を置いていくしかない毎日。  中間管理職のみなさんが感情マネジメントに関心を持つ背景には、こうした板挟みの現実があります。怒りも不安も戸惑いも、感じている余裕がないまま飲み込んで、次の打ち合わせへ向かう。そんな日々を送っている方は、少なくないのではないでしょうか。 関連記事:中間管理職の「板挟み」はなぜ起きるのか。その正体と、抜け出すための視点 「個人のスキル不足」で片付けていいのか  書籍や研修で語られる感情マネジメントは、そのほとんどが「個人のスキル」として解説されています。アンガーマネジメント、リフレーミング、言語化どれも有効な技術ではあります。  ただ、それだけで管理職のしんどさが解消するかというと、毎日を走り抜けているみなさんの実感としては、もう少し複雑なところがあるのではないでしょうか。  「感情的になる自分が悪い」「もっと上手く処理できない自分のせいだ」。こうして自責のループに入ってしまう管理職の方から、Potageでは、これまで多くのご相談を受けてきました。 組織構造が管理職の感情を苦しめている  腰が痛いとき、腕のいい整体師は腰そのものを揉まないと言います。足や下半身、首の筋肉が互いに引っ張り合って腰に負担がかかっている。そう、症状ではなく構造を語れるのがプロの仕事ではないでしょうか。  感情マネジメントも、同じ構造で捉え直すことができます。  河原あずさは、現場で見えてきたことを次のように語ります。  「今の世の中は、本当に複雑じゃないですか。予期せぬことが起きる不確実な状況の中で、敏感な方はそうしたなか、時に感情に流されて間違った判断をする。そういうループに陥りがちなんです」  組織の意思決定が複雑化し、変化のスピードも上がる中で、感情の揺れを一人で抱える管理職の負担は増える一方かもしれません。これは、個人のスキル不足の問題ではなく、組織構造の問題でもあると、Potageは考えています。 3. 感情マネジメントができないと、チームに何が起きるか 部下が本音を言わなくなる  リーダーの感情が不安定なとき、部下はまず「触れない方が安全」と判断します。相談や提案を控え、当たり障りのない報告だけを繰り返す。本音は水面下に沈んでいきます。  感情マネジメントは、リーダー個人の快適さのためだけのスキルではありません。部下の発言の安全度を左右する、チームのインフラのようなものではないでしょうか。 リーダーの感情がチームの空気に影響する  リーダーが朝、どんな顔で席に着くか。会議で苛立ちを見せるか、落ち着いているか。小さな表情の揺れが、チームの空気に少なからず影響を与えていきます。  もちろん、チームの雰囲気がリーダー一人の感情で決まるわけではありません。メンバー同士の関係性や、組織全体の構造も大きく関わっています。ただ、リーダーの感情の揺れが大きいまま放置されると、メンバーが本音を出しにくくなり、率直な意見やアイデアが場に出にくくなる傾向はあると言えそうです。 「忖度の空気」が心理的安全性を奪う  言いたいことが言えない状態が固定化すると、表面的には穏やかでも、実態は「何も言えない職場」になっていきます。これは、Potageが「偽の心理的安全性」と呼んでいる状態です。  関連記事:「偽の心理的安全性」に要注意!チームの忖度が隠す本当の課題と解決策] ここまでのポイント 感情マネジメントは「抑え込む力」ではなく「整える力」である 中間管理職のしんどさは、個人のスキルではなく組織構造の問題でもある リーダーの感情は、チーム全体の発言の安全度にも影響する 感情マネジメントやチームづくりについて、より実践的な情報をLINEでお届けしています  ▶ 登録はこちら 4. 感情マネジメントを実践する3つのステップ  ここからは、感情マネジメントを日々の実践に落とし込むための、Potage独自の3ステップをご紹介します。先に挙げた4要素(識別・理解・調整・活用)を、実際に使える順番で並び替えたものです。  順番は、「気づく → 受け止める → 選び直す」。 ステップ1|気づく:感情に名前をつける  すべてはここから始まります。自分の中に今、どんな感情が起きているか。「イライラしている」「不安を感じている」「本当は悲しい」。名前をつけるだけで、感情の輪郭がはっきりしてきます。  多くの場合、感情は身体のサインとして先に現れます。肩が硬い、胸が詰まる、呼吸が浅い。こうした身体感覚に目を向けることで、気づきの精度が上がっていくのです。  言語化が苦手な方は、「少しモヤっとした」「なんか疲れた」など、ざっくりした言葉から始めて構いません。 ステップ2|受け止める:判断せずに観察する  次に大事なのは、気づいた感情を「良い・悪い」で裁かないことです。  「こんなことで怒る自分はダメだ」「不安を感じるのは弱い証拠だ」。こうした自己判断は、感情を深く埋めるだけで、解決にはつながりません。感情は、今の自分の状態を知らせるサインとして扱うのが基本だと、Potageは捉えています。  少し離れた場所から「なるほど、今、自分はこう感じているんだな」と眺める感覚。メタ認知とも呼ばれる、このワンクッションが感情マネジメントの核になります。 ステップ3|選び直す:行動を意図的に決める  気づいて、受け止めたうえで、ようやく「どう振る舞うか」を選び直す余地が生まれます。  怒りが強いときは6秒数える(アンガーマネジメントの6秒ルール)。出来事の意味づけを変える(リフレーミング)。自分の気持ちを主語にして伝える(DESC法)。使えるテクニックはいくつもあります。  河原あずさは、感情のプラスとマイナスの両方について、こう表現しています。  「マイナスの時には、マイナスに触れている時なりの振る舞いをしながら、感情を作っていく。プラスの時には、その活かし方を知る。結果的に、よりしなやかな感情の乗りこなし方が生まれていくんです」  感情を消すのではなく、その状態から最も適した一歩を選び直す。これが「整える」ということの実像ではないでしょうか。 5. 管理職が日常で取り入れられる感情マネジメントの習慣 感情を言葉にする習慣をつくる  日記やメモ、1on1での自己開示など、感情を言語化する時間を日常に組み込んでいくと、ステップ1「気づく」の解像度が上がります。1行でも構いません。毎日続けることに意味があります。 アンガーマネジメントの「6秒ルール」  怒りの感情は、ピークから6秒ほどで少し落ち着くと言われています。カッとした瞬間にその場で判断せず、6つ数える。ごく単純ですが、言葉を荒らげる前の「間」を確保する習慣として有効です。 身体感覚で感情をキャッチする  感情に気づくのが苦手な方は、頭で考えるより、身体に聞く方が早い場合があります。肩・胸・呼吸・表情。1日3回、身体の状態をスキャンしてみる。それだけでも感情の輪郭が浮かんでくるのです。 信頼できる相手と対話する  感情は、一人で抱えるより、誰かに話すことで整っていくものです。パートナー、同僚、メンター、コーチ。信頼できる相手との定期的な対話の場を持てるかどうかが、長期的な感情マネジメントに大きく影響するのではないでしょうか。 6. チームで実践する感情マネジメント|個人スキルで閉じない  感情マネジメントを、リーダー一人の負担にしてしまうと、どこかで限界が来ます。大事なのは、チーム全体で共有する視点を持つことだと、Potageは考えています。 感情の扱い方を「チームの共通言語」にする  メンバー同士が、感情について話してもいい。「今日はちょっとモヤっとしています」と言える。こうした共通の語彙がチームに育つと、互いの状態が見えやすくなり、連携の質が変わっていきます。  関連記事:[心理的安全性を育むマネジメント&チームビルディング3つの原則](#) EQ(感情知能)は「自分を活かす力」  冒頭でふれたEQ(感情知能)について、河原あずさは次のように語っています。   「EQというのは、『自分を活かす力』なんです。寄り添い傾向の強い日本のビジネスパーソンは、調和を取るのは得意なんだけれど、利害のズレを調整するのが苦手。でも、相手の感情と自分の感情を読んだ上で、こういう言い方なら角が立たない、こう伝えれば伝わる——そういう自分なりの伝え方をマスターすると、感情と感情の間に橋をかけられるようになるんです」  感情マネジメントは「自分を抑える技術」ではなく、「自分と相手を活かす技術」として捉え直すと、見える景色が変わってくるかもしれません。 EQPI診断で自分とチームの現在地を知る  自分の感情の「クセ」は、自分では意外と見えにくいものです。寄り添い傾向が強いのか、感情にブロックをかけがちなのか、感情認知の強弱はどうか。こうした特性は、EQPI診断で客観的に捉えることができます。  Potageでは、64タイプの性格分類を取り入れた新しいレポートをご提供しています。自分自身と、チームの現在地を整理したい方は、ぜひ一度試してみてください。 EQPI診断のお申し込みはこちら 7. まとめ|感情マネジメントは「管理する」より「整える」もの  感情マネジメントとは、感情を抑え込む技術ではなく、気づき・受け止め・選び直す力のことです。 - 感情の波はあっていい - 自分のクセを知り、チームの共通言語にしていく - 個人のスキルで閉じず、組織構造とセットで捉える  ここまでお読みくださったみなさんは、すでに最初の「気づく」を一緒に踏み出しています。ここから先は、日常の中で少しずつ「整える」を重ねながら、チームの空気をゆっくり変えていく。そんな歩み方が、一番自然なのかもしれません。  Potageは、そのプロセスに、伴走していきたいと考えています。 こうしたテーマについて、Potage代表・河原あずさが日経COMEMOで詳しく語っています。ご興味ある方はぜひ、以下のバナーからご一読ください。

2026年5月11日

最終更新日:

感情マネジメントとは?「抑え込む」から「整える」へ変える3つのステップ

ビジネスの現場で感情に振り回されていませんか。本記事では、管理職のための感情マネジメントの方法を「抑える」ではなく「整える」視点から、3つのステップで解説します。

河原あずさと36.5編集部

1on1ミーティングとは?定義と基本を解説 1on1ミーティングが注目される3つの背景 1on1ミーティングの目的とは?4つの役割を解説 1on1ミーティングを実施する4つのメリット 1on1が形骸化する原因とは?よくある失敗パターン 1on1ミーティングの進め方|3つのステップで解説 1on1ミーティングで話すべきテーマ6選 1on1の効果を高める5つのポイント まとめ|1on1の目的を明確にすることが成功の第一歩  「1on1ミーティングをやっているけれど、なんだか形骸化している気がする」「部下と何を話せばいいのかわからない」  そんな悩みを抱えている管理職の方は少なくないのではないでしょうか。  1on1ミーティングは、部下の成長を支援するための重要な場として多くの企業で導入されています。しかし、その本当の目的を理解しないまま実施してしまうと、単なる進捗確認の場になってしまったり、上司が一方的に話す時間になってしまったりすることがあります。  本記事では、1on1ミーティングの本質的な目的から、形骸化を防ぐための進め方、話すべきテーマまで、詳しく解説していきます。 1on1ミーティングとは?定義と基本を解説  1on1ミーティングとは、上司と部下が1対1で行う定期的な対話の場です。通常の業務報告や進捗確認とは異なり、部下の成長支援やキャリア形成、業務上の悩みや課題について話し合うことを目的としています。  実施頻度は週1回から月1回程度が一般的で、1回あたり30分程度で行われることが多いです。  日本では、2012年頃にヤフー株式会社が全社的に導入したことをきっかけに広まりました。当時、組織改革の一環として導入された1on1は、部下の成長を支援するための仕組みとして注目を集め、その後多くの企業に取り入れられるようになりました。  多くの方が「1on1は部下の話を聞く時間」と理解しているかもしれません。確かにそれは正しい認識です。しかし、実際の現場を見てみると、この常識は意外なほど簡単に崩れてしまうことがあります。  研修の場で管理職の方々の1on1を観察すると、気づかないうちに上司が話し続けているケースや、部下が当たり障りのない報告だけで時間を過ごしているケースが少なくありません。 1on1と評価面談・OJTの違い  1on1ミーティングと評価面談は、一見似ているようで目的が大きく異なります。  評価面談は、特定の時期に部下の業績を公式に評価し、フィードバックを行う場です。上司が主体となり、評価基準に基づいて成果を振り返ります。一方、1on1ミーティングは部下が主体となり、成長のための対話を行う場です。評価を下すのではなく、部下が安心して本音を話せる雰囲気の中で、課題や悩みを共有します。 項目 1on1ミーティング 評価面談 OJT 主体 部下 上司 上司・先輩 目的 成長支援・関係構築 業績評価・目標設定 業務スキル伝達 頻度 週1回〜月1回 半期〜年1回 随時 雰囲気 リラックス・対話的 フォーマル・公式 実務的 1on1ミーティングが注目される3つの背景  なぜ今、1on1ミーティングがこれほど注目されているのでしょうか。その背景には、従来の面談やコミュニケーションだけでは対応しきれない、現代の職場環境の変化があります。 背景①:リモートワークによるコミュニケーション不足  リモートワークが一般化したことで、対面でのコミュニケーション機会が大幅に減少しました。同じ部門のメンバーであっても、直接顔を合わせる機会が週に数回、あるいはそれ以下という状況も珍しくありません。  従来であれば、オフィスでの何気ない会話や、ランチタイムの雑談を通じて把握できていた部下の状態が、見えにくくなっています。意識的に1対1で対話する場を設けなければ、部下が何に悩み、何を考えているのかを把握することが難しくなっているのです。 背景②:キャリア・働き方の多様化  フリーランス、副業、時短勤務、フレックスタイムなど、働き方の選択肢は年々多様化しています。これに伴い、社員一人ひとりのキャリア観やニーズも多様化しています。  画一的なマネジメントでは、こうした多様なニーズに対応することが難しくなっています。1on1を通じて個別に対話することで、それぞれに適したサポートを提供することが可能になります。 背景③:VUCA時代と自律型人材の必要性  現代のビジネス環境は、VUCA(Volatility:変動性、Uncertainty:不確実性、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性)と呼ばれる特徴を持っています。このような環境下では、上司の指示を待つのではなく、自ら考え行動できる自律型人材が求められます。  従来の「上司が指示を出し、部下が従う」というマネジメントスタイルでは、変化の激しい環境に対応しきれなくなっています。1on1を通じて部下の主体性を引き出し、自律的に成長していける環境を整えることが、これからのマネジメントには求められています。 1on1ミーティングの目的とは?4つの役割を解説  1on1ミーティングの目的は、単に「部下の話を聞くこと」だけではありません。その先にある、より大きな目的を理解することが重要です。  1on1の本質は、上司が「センサー」として機能することにあります。部下が何を感じ、何を考えているのか。それをしっかりと吸収し、チーム全体の状況を把握するためのアンテナとして働くことが求められるのです。  チームメンバー全員との1on1を継続的に行っていくと、やがて「チーム全体のモヤモヤ地図」のようなものが見えてきます。誰が誰に対してどんな不満や違和感を抱えているのか、どこにコミュニケーションの詰まりがあるのか。そうした関係性の全体像が、上司の頭の中で可視化されていくのです。 目的①:部下の成長支援  1on1ミーティングの最も基本的な目的は、部下の成長を支援することです。  人材育成の分野では、「経験学習サイクル」という考え方があります。これは、経験→内省→概念化→実践というサイクルを回すことで学習が深まるという理論です。1on1は、このサイクルの中でも特に「内省」を促す場として機能します。  ここで重要なのは、「行動のヒント」だけでなく「考え方のヒント」を提供するという視点です。  魚釣りのたとえで言えば、魚を与えるのでも、よく釣れる場所を教えるのでも、一緒に釣ってあげるのでもありません。「どういう考え方をすれば魚が釣れるようになるのか」という思考の枠組みを伝えることが、長期的な成長につながります。  「こうすればいい」という行動の指示ではなく、「こういう風に考えると、もしかしたら行動が変わるかもしれませんね」という形で、部下自身が気づきを得られるような関わり方を意識することが大切です。 目的②:信頼関係の構築と心理的安全性  1on1ミーティングは、上司と部下の信頼関係を構築するための重要な場でもあります。  ここで前提となるのが、心理的安全性の醸成です。心理的安全性とは、「このチームでは、自分の意見を言っても否定されない」「失敗しても責められない」と感じられる状態のことです。  心理的安全性が低い状態では、部下は本音を話すことができません。定期的に1対1で対話する時間を持ち、部下の話に真剣に耳を傾けることで、少しずつ信頼関係が構築されていきます。「この上司には本音を話しても大丈夫」という安心感が生まれることで、1on1の質が高まっていきます。 目的③:組織力の強化とエンゲージメント向上  1on1を通じて部下一人ひとりが成長していくことは、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。  チームメンバー全員との1on1を通じて「モヤモヤ地図」を描き、どこにコミュニケーションの詰まりがあるのかを把握する。そして、その詰まりを解消するための働きかけを行っていく。これは、いわば「チームの調律」とも言えるプロセスです。  ピアノの調律師が弦の緊張状態をチェックし、締めたり緩めたりして正しい音が鳴るように調整するように、マネージャーもチームメンバーの状態を見ながら、適切な関わり方を調整していく必要があります。 目的④:離職防止と早期の課題発見  1on1ミーティングは、離職防止にも効果を発揮します。  部下が退職を決意する前には、必ず何らかの不安や不満を抱えている時期があります。しかし、その段階で上司がそれに気づけなければ、手遅れになってしまうことがあります。  1on1を通じて定期的に対話することで、部下の小さな変化や悩みを早期に察知することができます。「最近少し元気がないな」「何か気になることがありそうだ」といったサインに気づき、早めに対処することで、離職を未然に防ぐことができるのです。 1on1ミーティングを実施する4つのメリット  1on1ミーティングを効果的に実施することで、以下のようなメリットが期待できます。 ・部下のモチベーション向上:定期的なフィードバックやキャリアについての対話を通じて、「自分の成長を見てくれている」という実感を持てるようになります。 ・主体性の向上:答えを与えるのではなく、問いを通じて考えさせることで、部下が自ら考え行動する力が身についていきます。 ・課題の早期発見:定期的な対話を通じて、問題が大きくなる前に察知し、対処することができます。 ・上司自身のマネジメント力向上:部下の話を聴き、適切な問いかけをするスキルが磨かれ、マネジメント力が向上します。 1on1が形骸化する原因とは?よくある失敗パターン  「1on1をやっているけど意味がない」「時間の無駄に感じる」という声を聞くことがあります。その原因として、以下のようなパターンが考えられます。 上司が一方的に話してしまう  部下の話を聞く場であるはずが、気づいたら上司が自分の経験談や持論を延々と話していた——そんなケースは少なくありません。  これには構造的な理由があります。話を聞き続けるためには、相手から引き出すスキルが必要です。それは結構大変なことなので、つい自分が話す方に流れてしまいがちです。「聞く」より「話す」方が楽だからこそ、意識しないとこのパターンに陥ってしまいます。 業務報告会になってしまう  1on1が単なる進捗確認の場になってしまい、部下の成長支援という本来の目的が果たせていないケースです。部下も「報告すればいい」と思ってしまい、本音を話す場にはなりません。 部下が「やり過ごしモード」になっている  部下の側からすると、「この時間をやり過ごしたい」と思っていることも少なくありません。本音はできれば上司に隠しておきたい、あまり話す必要はないと考えているケースもあります。この背景には、心理的安全性の問題があります。  部下が安心して話せる環境を整えることが、1on1を機能させるための前提条件です。 1on1ミーティングの進め方|3つのステップで解説  ここからは、1on1ミーティングを効果的に進めるための具体的な流れを解説します。 ステップ①:事前準備(目的共有・テーマ設定)  1on1を有意義な時間にするためには、事前準備が欠かせません。  まず、1on1の目的を部下と共有しておきましょう。「評価の場ではなく、あなたの成長をサポートするための時間です」ということを伝えることで、部下も安心して臨めるようになります。  上司側は、前回の1on1で話した内容や、部下の最近の業務状況を振り返っておきます。部下側にも、話したいことや相談したいことを事前に考えておいてもらうと、より充実した対話ができます。 ステップ②:当日の流れ(アイスブレイク→本題→アクション設定)  当日の進め方としては、以下のような流れが一般的です。 1. アイスブレイク(5分程度):いきなり本題に入るのではなく、軽い雑談から始めます。「最近どうですか?」「週末は何かしましたか?」といった問いかけで、リラックスした雰囲気を作ります。 2. 本題(20分程度):部下が話したいテーマについて対話します。上司は聞き役に徹し、適切な問いかけを通じて部下の内省を促します。 3. 次回アクションの確認(5分程度):話し合った内容を踏まえて、次回までにどんなことに取り組むかを確認します。 ステップ③:実施後の振り返りと記録  1on1の後は、話した内容を簡単に記録しておきましょう。次回の1on1で振り返りができるようにするとともに、部下の成長の軌跡を追えるようになります。  また、1on1の進め方自体についても定期的に振り返り、改善していくことが大切です。 1on1ミーティングで話すべきテーマ6選  1on1ミーティングでは、以下のようなテーマについて話し合うことができます。 ・業務の悩み:日々の業務で困っていること、うまくいかないことについて話します。単なる進捗報告ではなく、「何に困っているか」「どうすれば解決できそうか」を一緒に考える姿勢が大切です。 ・キャリア:将来どうなりたいのか、そのために今何ができるのかについて対話します。部下が自分のキャリアについて考え、主体的に成長していこうとする姿勢を引き出します。 ・心身の健康:ストレスの状態や体調について、さりげなく確認します。「最近、仕事以外の時間はどう過ごしていますか?」といった質問から、部下の状態を把握することができます。 ・プライベート:仕事以外の話題を通じて、部下の価値観や興味関心を理解します。ただし、プライベートに踏み込みすぎないよう、部下が話したい範囲で聞くことが大切です。 ・目標設定:短期・中期の目標について対話し、達成に向けたサポートを行います。目標の進捗確認だけでなく、「なぜその目標を設定したのか」という動機づけの部分も大切にします。 ・会社の方針:会社や部門の方針について、部下がどう感じているかを聞きます。疑問や不安があれば、それに対して丁寧に説明することで、エンゲージメントの向上につながります。 1on1の効果を高める5つのポイント  1on1ミーティングの効果を高めるためのポイントを紹介します。 1. コーチングを基本に、ティーチングは最小限に  1on1では、答えを教えるのではなく、問いを通じて部下自身に考えさせることが基本です。重要なのは、「行動のヒント」よりも「考え方のヒント」を提供することです。「こうしたらいい」という指示ではなく、「こういう風に考えてみると、見え方が変わるかもしれませんね」という形で伝えます。 2. 傾聴を徹底する  部下の話を遮らず、最後まで聞くことを徹底します。相づちやうなずきで関心を示し、「ちゃんと聞いてもらえている」という安心感を持ってもらうことが大切です。 3. オープンクエスチョンを活用する  「はい」「いいえ」で終わるクローズドクエスチョンではなく、「どう感じましたか?」「どんな選択肢がありそうですか?」といったオープンクエスチョンを使うことで、部下の思考を広げることができます。 4. 沈黙を恐れない  部下が考えている時間を大切にしましょう。沈黙が続くと、つい上司が話し始めたくなりますが、部下が内省している時間かもしれません。少し待ってみることで、より深い気づきが生まれることがあります。 5. フィードバックの質を高める  フィードバックは具体的に、そしてタイムリーに行います。「良かったですね」ではなく、「〇〇の場面で△△したのが良かったと思います」というように、具体的な行動を指摘することで、部下の学びが深まります。 まとめ|1on1の目的を明確にすることが成功の第一歩  1on1ミーティングは、単なる「部下との面談」ではありません。上司が「センサー」としてチーム全体の状態を把握し、一人ひとりの成長を支援しながら、組織全体のパフォーマンスを高めていくための重要な取り組みです。  1on1ミーティングは、面倒に感じられることもあるかもしれません。忙しい中で時間を確保し、一人ひとりと向き合うことは、確かに労力を要します。  しかし、この積み重ねが、結局はマネージャー自身を楽にするのです。1on1を通じてチームの状態を把握し、問題を早期に解決していくことで、「後から大きな問題に対処する」という事態を防ぐことができます。  1on1を成功させる第一歩は、目的を明確にすることです。「なぜ1on1をやるのか」「この時間で何を実現したいのか」を上司自身が理解し、部下とも共有すること。それが、形骸化を防ぎ、1on1の効果を最大化するための出発点となります。 1on1の運用にお悩みの方へ チームの状態を可視化するEQ診断・1on1改善などのご相談を受け付けています。

2026年4月23日

最終更新日:

1on1の目的とは?効果を最大化する進め方と話すテーマを解説

1on1ミーティングの本質的な目的から、形骸化を防ぐ進め方、話すべきテーマまで解説。部下の成長支援と信頼関係構築を実現する1on1のポイントをマネージャー向けにお伝えします。

河原あずさ(Potage代表)

目次 「前向きな職場に」が空回りする原因 言葉を行動に変えるチームビルディング リスナーさんからのご質問、激詰め上司への処方箋 「30分後に謝りに行く」リーダーが示す組織文化の変え方 Potage株式会社代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  組織開発の専門家であり「シンクリ!」相談所所長の、株式会社ZENTech(以下、ZENTech)の代表取締役社長CEO 金亨哲さん(ひょんちょるさん)、そして感情知性EQの専門家であり副所長の私・河原あずさ、ナビゲーターのきのせまりさんの3人でお届けする音声番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」。その第3回放送が配信されました。今回はその内容をレポートしていきます。 「前向きな職場に」が空回りする原因  今回の放送で取り上げたのは、こんなお悩みです。  「前向きな職場に」という職場方針が発表された直後の打ち合わせで、同僚が上司から必要以上に感情的な激詰めを食らっていた。「前向きってスローガンだけだな」「前向きなつもりなのは上司だけだな」。それに上司は気づいていないし、気づく気配もきっかけもない。気づかせてあげるリスクが高すぎてやりたくないーー。全方位的に諦めています、という切実なご相談です。  ひょんちょるさんは、この相談に対して「非常にあるある」だと反応しました。スローガンと実態がまったくかみ合っていない状況。こうした「言葉が宙に浮いている」光景は日常的に起きています。  ここで問題の根っこにあるのは、抽象的なスローガンが生む「解釈のズレ」です。私は言葉を使う仕事をしていますので、1on1やファシリテーションの場面で常に気をつけていることがあります。それは「言葉の定義」です。よく使われるスローガン的なキーワードと、一人ひとりが思い描く解釈が全然違うということは、本当によく起きます。たとえば「成長」という言葉一つとっても、思い描く成長の姿も速度も人によってまったく異なる。その捉え方の違いが、マネジメントにおける深刻なすれ違いの温床になるのです。  ひょんちょるさんからは「挑戦」という言葉も同様にズレが生じやすいと指摘がありました。挑戦しろと言われても、新しい営業先のドアをノックするだけで挑戦だと感じる人もいれば、外に飛び出して新商材を売りさばくことを挑戦と捉える人もいる。言葉の粒度がまったく違うのです。チームビルディングの土台となる相互理解が、実はスローガンひとつで簡単に崩れてしまう。これは、中間管理職にとっても見過ごせない問題です。 言葉を行動に変えるチームビルディング  では、こうした解釈のズレをどう解消すればいいのでしょうか。ファシリテーションの王道としては、「場面を想起させる」手法が有効です。「前向きな職場の状態ってどんな状態?」という問いを全員に投げかけ、それぞれが思い描く姿を出し合う。すると、おそらく全員が違う答えを返してくるはずです。そこを揃えにいく対話型マネジメントの実践こそが、チームビルディングの第一歩になります。  しかも、もう一つ大事なのは、「前向きとはこういうことである」と上から定義を押し付けることが、果たして「前向き」なのかという、メタ的な問いも生まれてくるということです。みんながしっくりくる範囲で、前向きの方向性を見つけつつ、Aさんにとってはこれが、Bさんにとってはこれが前向きな行動なのだと、個々の違いにも着目して相互理解を深めていくことが重要です。  ここで、ひょんちょるさんが興味深い事例を紹介してくれました。ある企業では、心理的安全性の高い職場を作るために、あえて「心理的安全性」という言葉を徹底的に使わなかったというのです。心理的安全性という言葉を聞くと、どうしても「ぬるい職場なのでは」と誤解する人が出てきてしまう。だから、たとえば「話しやすい職場を作りませんか」と言い換える。話しやすい職場を作ることにNOと言う人は、そうそういません。  抽象的なスローガンではなく、具体的な行動指針に落とし込む。数値化しやすいもの、みんなが腹落ちしやすい言葉に変換する。それだけで、組織文化の醸成における浸透の難易度はぐっと下がります。これは現場で使えるチームビルディングの技術です。 リスナーさんからのご質問、激詰め上司への処方箋  では、相談者の方は具体的にどうすればいいのでしょうか。  ひょんちょるさんは、こうアドバイスしました。「全方位的に上司を変えようとするのは難易度が高すぎる。特定のシチュエーションで、こういう行動はなくしてほしい、こういう行動を増やしてほしいというピンポイントの気づきを渡すほうが、ずっとライトにできるはず」。  これは、EQを活用したコーチング的アプローチそのものです。EQとは、自分や他者の感情を理解し、適切に扱う能力のこと。部下育成がうまくいかないと感じている管理職の方も少なくないと思いますが、相手の行動を丸ごと否定するのではなく、具体的な場面にフォーカスしてフィードバックを返すことが、マネジメントの質を変える鍵になります。  たとえば、上司が素敵な声がけをしたときに、すかさず称賛を返す。「課長のあの一言、すごく良かったです」と伝えるだけでも、上司は「こういう行動をすると部下が喜ぶんだ」と学習します。その小さなフィードバックの積み重ねが、この場合でいくと、激詰めの場面を徐々に減らしていくことにつながるのです。  管理職が向いていないのではないか、自分のリーダーシップに自信がないと悩んでいる方もいるかもしれません。しかし、大切なのは完璧なリーダーになることではなく、こうした「小さな一点突破」のコミュニケーションを日常的に実践できるかどうか。EQの視点を持つことで、相手の感情に配慮したコーチング的な関わり方が自然にできるようになっていきます。 「30分後に謝りに行く」リーダーが示す組織文化の変え方  放送の中で、ひょんちょるさんが紹介してくれたエピソードが非常に印象的でした。ある硬い組織のトップの方が、研修の場で語ったそうです。  「時間がタイトなとき、どうしても強い言葉を使ってしまうことがある。でも、30分後に必ず謝りに行くようにしている。部下にも『強い言葉を使ってしまうことがあるけれど、30分後に必ず謝りに行くから、一旦聞いておいてほしい』と周知している」と。  これはまさに「バルネラビリティ(弱さの自己開示)」の実践です。人事やマネジメントの世界で注目されている概念で、自分の弱さをさらけ出せるリーダーになりましょうという考え方です。「自分にはこういうところがあるからごめん、ちゃんと後で謝るから」と言えること。自分に非があったとオープンにできること。これは非常に心理的安全性の高いマネジメントであり、共感型リーダーシップの真骨頂です。  叱ること自体がダメなわけではありません。ネガティブなフィードバックも時には必要です。大事なのは、その後にどうコミュニケーションを取るか。そして、「自分はこういう人間なんだ」ということを、いいところも悪いところも含めて開示できる関係性のベースがあるかどうか。この小さな自己開示の積み重ねこそが、組織文化を内側から変えていく力になります。  最後に、きのせさんがこう振り返ってくれました。「心理的安全性のある職場を作っていくには、小さな行動の積み重ねがとっても大事。その行動に落ちる言葉をみんなで目線合わせしていかないと、まるっとまとめても、なかなか心理的安全性は得られないんだなと改めて感じました」。まさにその通りです。壮大なスローガンよりも、日々の言葉を丁寧に揃えること。行動に対して、互いにフィードバックを返すこと。自分の弱さを認めてオープンにすること。そうした地道なチームビルディングの先に、心理的安全性あふれるチームが育っていきます。  「シンクリ!」では、引き続き皆さんのリアルなお悩みに、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のEQの知見を掛け合わせながら、解決のヒントを探っていきます。  stand.fmのコメント欄では、放送の感想やご質問、お悩み相談を受け付けています。皆さんから届くヒントの種が、番組のトークの題材になっていきますので、ぜひ気軽に投げ込んでくださいね。

2026年4月14日

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スローガンだけでは組織文化は変わらない!心理的安全性を高めるチームビルディングのヒント

「前向きな職場」が空回りするのはなぜ?心理的安全性と組織文化の関係を、チームビルディングの専門家たちが実例で解説します。

河原あずさ(Potage代表)

目次 板挟みの正体──上と下から引っ張られる消耗の構造 なぜ「もっと頑張れ」では変わらないのか 「整える」という視点──鍛えるでも放任でもない距離感 板挟みはあなたのせいではない、でも変えられる 板挟みの正体──上と下から引っ張られる消耗の構造  中間管理職という役割で板挟みに苦しんでいる方は、少なくないのではないでしょうか。上からは「数字を出せ」「若手を育てろ」「定期的に1on1を実施しろ」「心理的安全性のあるチームをつくれ」と、次々に高度な要求が降ってきます。一方、下からは「もっと関わってほしい」「でも細かく干渉しないでほしい」という、矛盾したメッセージが届く。そして、自分自身のプレイヤーとしての業務量は一切減りません。  なぜ、こんなことが起きるのでしょうか。  答えはシンプルです。今の日本企業の多くが、「プレイヤーとして優秀だった人」を、そのままの業務量を抱えさせた状態で管理職に昇格させるという構造を取り続けているからです。  彼ら彼女らは、もともと現場の最前線で成果を出してきたトップパフォーマーたちです。当然、その人が現場から完全に抜けてしまえば、短期的にはチームの数字が回りません。だから昇格したあとも「プレイングマネージャー」として、重要顧客や難易度の高い実務を抱えたままになります。しかも「マネージャーとは何か」と誰に教わるわけでもなく、「自分でどうするかは考えなさい」と現場に放り出されるわけです。  そんな中間管理職が、やっとの思いで1on1の時間を捻出したとしましょう。けれども頭の片隅には未処理のタスクがちらついていて、PCの通知音が鳴るたびに視線が泳いでしまう。部下は、その微妙な空気を残酷なほど正確に察知します。「ああ、この人は忙しいんだな」「本当は自分の話をじっくり聞きたいわけではないんだろうな」──そう感じた若手は、それ以上相談して時間を奪うのは申し訳ないと遠慮し始めます。良かれと思って設定したはずの面談が、逆に若手の心を少しずつ遠ざけていく。これは個人の努力で解決できる次元を超えた、「構造的なエラー」と言えるのではないでしょうか。 なぜ「もっと頑張れ」では変わらないのか  若手の離職やチームの機能不全に危機感を抱いた企業が、こぞってマネジメント研修を実施します。1on1のやり方、傾聴技法、効果的なフィードバックの手法。どれも大切です。けれども、どれだけ質の高い研修を受けても現場が変わらないケースが後を絶ちません。その理由は明確です。問題の本質が「スキルの欠如」ではなく、「構造の欠陥」と「感情認識の希薄化」にあるからです。  忙しすぎる中間管理職を追い詰めているのは、実は物理的な忙しさだけではありません。その正体は「感情の混乱」です。やるべきことと、やらなくていいことの仕分けができなくなっている──そんな心理状態に陥っています。  以前、ある企業の中間管理職の方との対話で、ハッとさせられる言葉がありました。「頭ではわかっているんです。でも、次から次へと降ってくるタスクの前で、どれが本当にやるべきことで、どれがやらなくていいことなのか、もう分けられなくなっているんです」。  これは、たとえるなら、肩こりがひどくなりすぎた身体のような状態かもしれません。首や肩がガチガチに固まってしまうと、自分ではどこが凝っているのかすら、もうわからなくなりますよね。痛みに慣れてしまって、本来の楽な状態がどんなだったか思い出せなくなる。中間管理職の「感情の混乱」も、それとよく似ています。あらゆる業務が自分を経由しないと進まない「組織のボトルネック」と化してしまい、一部の過剰な当事者意識が、チーム全体のパフォーマンスを静かに落としていくのです。  EQ(感情知能)の文脈では、この状態を「現状認識力の不足」と呼んでいます。EQのポテンシャルが低いのではありません。あまりのプレッシャーによって、感情と適切な距離を取る「ニュートラルな状態」を失い、現状を的確に認識する力を失っているだけなのです。EQとは感情を押し殺す技術ではなく、感情を情報として読み取る力です。その力が、忙しさの渦の中で埋もれてしまっています。 【ここまでのポイント】 板挟みは個人の努力では解決できない構造的なエラー 問題の本質は感情の混乱と構造の欠陥 スキルより先に「感情を整える」ことが必要    「整える」という視点──鍛えるでも放任でもない距離感  では、どうすればいいのでしょうか。  私たちPotageは、中間管理職の課題に向き合うとき、「鍛える」とか「がんばらせる」という言葉を使いません。意図的に「整える」という言葉を選んでいます。余計な緊張の糸を優しくほどいて、その人が本来持っている力と感情が自然に発揮できる状態に戻していく。それが「整える」の意味です。  私はよく、この「整える」をピアノの調律師にたとえます。調律師は、自分で鍵盤を弾いて演奏するわけではありません。一本一本の弦に耳を澄ませて、張り詰めすぎている弦は少しだけ緩め、緩みすぎている弦には少しだけ張りを与える。そうやって、すべての弦がちょうどいいバランスで響き合う状態をつくっていきます。一本の弦だけが限界まで張り詰めていたら、どんなに美しい曲を弾こうとしても、そこだけ音が割れてしまいますよね。組織もまったく同じではないでしょうか。  中間管理職に求められる「寄り添い」も、この調律師の姿勢と重なります。それは、べったり張り付いて部下の一挙手一投足に口を出す「過干渉」でもなければ、「君を信頼しているから自由にやっていいよ」と手を離す「放任」でもありません。部下に関心を持ちつつも干渉しすぎない、自立した距離感を保つこと。ニュートラルな位置に立ち、本当に必要なタイミングでだけ適切なチューニングをかける。それが真の心理的安全性を支えるマネジメントなのかもしれません。  では、具体的に何から始められるでしょうか。小さな、しかし確かな一歩を2つご紹介します。 1.1on1の問いをEQ的に変えてみる  「今、困っていることは?」という業務ベースの問いではなく、「最近の仕事で、いちばん心が動いた場面は?」と聞いてみてください。この問いには、相手のモチベーションの源泉や、目に見えないストレスなど、感情のヒントが詰まっています。そしてその答えを、チームの構造として「どこにボトルネックが隠れているのか」を見つける手がかりにしてみてください。 2.週に一度、15分の「定点観測」の時間を取る  自身の業務の手をいったん完全に止めて、チーム全体を俯瞰で眺める時間を確保してみてください。「今、うちのチームの弦はどこが緊張しすぎているか? どこが緩みすぎているか?」を調律師の視点で考えてみる。この定点観測の習慣が、手遅れになる前の小さなチューニングを可能にします。 板挟みはあなたのせいではない、でも変えられる  板挟みは、構造の問題です。個人の努力には限界があります。  日本の多くの組織が抱える課題の中心には、いつも責任感ゆえに孤独に戦う中間管理職の姿があります。彼ら彼女らを責めるのではなく、構造の犠牲者として救い出すこと。そしてチームが持続的に成果を出せる「構造と環境」を整えることこそが、中間管理職の本来のミッションなのかもしれません。 自分自身がプレイヤーとして目先の成果を出すことではなく、メンバーが自律的に動きやすく、失敗から学べる安全なチームをつくること。その視点の転換が、板挟みから抜け出す第一歩になるのではないでしょうか。  あなたのチームの弦は、今どこが張り詰めていますか。   ▼ もっと深く知りたい方へ この記事の元になったCOMEMO記事「EQ時代の中間管理職サバイバル論①」では、構造的な課題と感情の混乱についてさらに詳しく解説しています。  EQ時代の中間管理職サバイバル論①(COMEMO)

2026年4月28日

最終更新日:

中間管理職の「板挟み」はなぜ起きるのか。その正体と、抜け出すための視点

中間管理職の板挟みは、あなたのせいではありません。上と下から引っ張られる消耗の構造を理解し、EQと心理的安全性の実践で、新しい距離感を築く方法。

河原あずさ(Potage代表)

目次 リスナー最大の悩み「石像会議」。誰も発言しない会議が生まれる構造とは 「会議の面積」を最小化し、ファシリテーションで発言を引き出す EQを活かした意思決定とセンスギビング まとめ:心理的安全性の高いチームビルディングは一歩ずつ  Potage株式会社代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  組織開発の専門家であり「シンクリ!」相談所所長の、株式会社ZENTechの代表取締役社長CEO 金亨哲さん(ひょんちょるさん)、そして感情知性EQの専門家であり副所長の私・河原あずさ、ナビゲーターのきのせまりさんの3人でお届けする音声番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」。その第2回放送が配信されました。今回はその内容をレポートしていきます。 リスナー最大の悩み「石像会議」。誰も発言しない会議が生まれる構造とは  事前アンケートで「あなたが最も処方箋が欲しいモヤモヤは何ですか?」と聞いたところ、一番多かった回答が「石像会議」でした。石像会議とは、リーダーや声の大きい人だけが話していて、他のメンバーは石像のように黙っている会議のこと。マネジメントの現場では、リーダーは「なんとか前に進めなきゃ」と思っている一方で、メンバーは「また、あの人ばっかり話してるな」と感じている。双方にすれ違いが生じている、典型的な会議のパターンです。  ひょんちょるさんは、石像会議が生まれる大きな要因のひとつとして参加人数の多さを指摘しました。「あの人を呼んだなら、この人も呼ばないと角が立つ」「一応いた方がいいかも」という配慮が積み重なり、発言しづらい空気が生まれてしまう。呼ばれた側も「なぜ自分がここにいるのか」が分からず、黙り込んでしまう。さらに、なぜ呼ばれたか分からない人がいること自体が、他の参加者の発言を萎縮させるという悪循環も生まれます。リーダーシップやファシリテーションの問題以前に、会議の「構造」そのものが心理的安全性を損なっている場合が少なくないのです。 「会議の面積」を最小化し、ファシリテーションで発言を引き出す  では、石像会議をどう変えていけばいいのか。放送では具体的な処方箋が語られました。  まず、ひょんちょるさんが紹介してくれたのが「会議の面積を最小にする」という考え方です。これは、あるクライアントさんで使われていた共通言語だそうです。会議の「面積」とは、参加人数×時間のこと。つまり、人数を減らし、時間も短くすることで、会議にかかる工数を最小化しようというマネジメントの発想です。アジェンダに関係ない人を極力呼ばず、役割がきっちり明確な最少人数で会議を行う。これだけで、心理的安全性の高い議論が生まれやすくなります。  人数を絞った上で大切になるのが、発言量を均等にするファシリテーションです。ひょんちょるさんは、ファシリテーターを毎回輪番にすることを提案していました。同じテーマの会議でも、ファシリテーターが変わると発言する人の構成も変わり、回数を重ねるごとにチーム内の発言の多様性が生まれるそうです。  私からは「あえて喋らせない時間を作る」というティップスをお伝えしました。議論に入る前にまず全員に意見を書いてもらい、集めて読み上げてから話し合いを始めるというやり方です。喋るのが苦手でも、書いてと言われると書ける人、意外と多いんですよね。記名せずに書いてもらえば、声に出しては言いづらい本音を拾うこともできますし、意見のばらつきを可視化することで全体像を掴んでから議論に入れるというメリットもあります。  会議冒頭にアイスブレイクを短くやることも効果的です。第1回放送のタピオカミルクティーのワークのように、全員が声を出して参加する時間を最初に設けることで、場の心理的安全性が一気に高まります。 EQを活かした意思決定とセンスギビング  石像会議では声の大きい人の一声で物事が決まりがちですが、では心理的安全性の高い組織ではどう決めるのか。ひょんちょるさんの答えは明快でした。「決めるまでの段階では多様な意見を出す。でも、決まった後は、たとえ自分が賛成していない部分があっても、チームでコミットする」。そして、決めるときは多数決ではなく、権限のある人がきちんと決める。なぜなら、多数決では少数意見を持つ人が置き去りにされ、長いものに巻かれる構造が生まれてしまうからです。  私たちは学級会の頃から多数決に慣れ親しんでいますが、マジョリティの意見が常に採用される仕組みでは、多様性や心理的安全性は担保されません。EQを活かしながらリーダーが責任を持って決断し、その意味をチームに伝えていく。これが、心理的安全性の高い組織におけるリーダーシップのあり方です。  この文脈で話題に上がったのが「センスメイキング」と「センスギビング」という概念です。センスメイキングとは、上から降りてきた目標や不条理な状況の中で「なぜこれをやるのか」という意味を自分で見つけること。そしてセンスギビングとは、見つけた意味を部下や組織に渡すことです。ひょんちょるさんは、多数決で決めたがるリーダーは、上から降りてきたものをそのまま流しかねない人だと指摘しました。自分たちで意味を見つけ、それをチームに手渡せるかどうか。これがマネジメントの質を左右し、心理的安全性の高い組織文化をつくる鍵になるのです。  センスメイキングはそれなりにできる方が多い一方で、課題はセンスギビングの方だなと私は感じました。自分の中では腹落ちしていても、その解釈をメンバーに届けることは簡単ではありません。理解していることと、それを相手に伝えて行動につなげることは別の技術です。ひょんちょるさんは「何度も何度も、違う伝え方で伝えるしかない」と話していました。1on1で伝えるのと全体会議で伝えるのでは違うし、文章と口頭でも違う。一回で全部渡そうとせず、小さく小分けにして、頻度を多めに出していく。これが大事なのだと思います。  私自身も、社内ポッドキャストという取り組みを今年から始めました。週に1回、10分程度、私が経営の視点で見ている景色や意思決定の背景を話して、文字起こしと一緒にSlackに投稿しています。ひょんちょるさんも、ウィークリーレポートをSlackに貼って、メンバーの活躍のハイライトなども含めて発信しているそうです。日々のこうした蓄積が、少しずつセンスをギブしていくことにつながる。チームビルディングの基盤となる組織文化は、こうした地道なコミュニケーションの積み重ねでつくられていくのだと、お互いの実践を共有しながら実感しました。 まとめ:心理的安全性の高いチームビルディングは一歩ずつ  放送の最後には、ナビゲーターのきのせまりさんから、リスナーのコメントが紹介されました。手探りで始めた番組に声が届くのは、本当にうれしいことです。コメントはstand.fmで受け付けています。放送の感想や質問、なんでも大歓迎ですので、ぜひどしどしお便りをお寄せください。  今回のシンクリ!第2回では「石像会議」をテーマに、心理的安全性の高い会議づくりのヒントをたくさん語り合いました。ポイントを整理すると、会議の面積を最小にすること(人数と時間を絞る)、ファシリテーションの工夫で発言を引き出すこと、そして意思決定はリーダーが責任を持って行い、センスギビングとしてその意味をチームに伝え続けることの3つです。  どれも一気に変える必要はありません。ひとつずつ、小さく試していく。その積み重ねが、石像会議を心理的安全性あふれる対話の場に変えていくのだと思います。マネジメントに悩むすべてのリーダーにとって、この記事がチームビルディングの何かのヒントになればうれしいです。  次回のシンクリ!もお楽しみに。 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 先行10名様限定・特別価格でご案内しています。

2026年4月6日

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“自分ばかり話してる”と悩む管理職へ――石像会議を変える心理的安全性とリーダーシップの技術

「石像会議」に悩むリーダーへ。心理的安全性の高いチームをつくるには、会議の構造を見直すリーダーシップとEQを活かしたファシリテーションが鍵です。

河原あずさと36.5編集部

「メンバーに寄り添いなさい」「1on1をちゃんとやりなさい」……管理職へのそうした要請は年々増えています。頭ではわかっていても、プレイング業務を抱えながら実践するのは簡単ではないのではないでしょうか。  本記事では、心理的安全性とマネジメント能力の関係を整理した上で、EQ(感情知能)をベースにした具体的な実践ステップを紹介します。「何から手をつければいいかわからない」という方にとって、一つの手がかりになれば幸いです。   目次 心理的安全性が上がらない、本当のボトルネック 課長職が直面している現実 マネジメント能力を阻む「手放せない」問題 手放しができると、何が変わるか 心理的安全性を高める3つの実践ステップ まとめ Potage36.5公式LINE   心理的安全性が上がらない、本当のボトルネック  エンゲージメントサーベイの結果をさまざまな企業で見ていると、ある共通の傾向が浮かび上がります。課長職あたりの中間管理職のエンゲージメントの高低と、若手社員のエンゲージメントの高低に、一定の相関があるということです。  管理職が疲弊していると、その空気がチーム全体に伝播し、若手のモチベーションも下がっていく。心理的安全性が上がりきらないボトルネックは、多くの場合、中間管理職にあるのです。 課長職が直面している現実  今の課長職の方々が置かれている状況は、こんな構造になっていることが多いのではないでしょうか。 プレイヤーとして優秀なまま、管理職に昇格する プレイング業務を抱えたまま「人も見なさい」と要請される 1on1・スキル開発・キャリア支援……役割が次々と積み上がる 結果として、メンバーとの向き合いが後回しになる  この状態が続くと、若手は「ちゃんと見てくれていない」と感じ、心が離れていきます。1on1の形骸化は、心理的安全性が崩れ始めているサインのひとつかもしれません。   マネジメント能力を阻む「手放せない」問題  マネジメント能力の向上を考える上で、多くの管理職の方が直面する壁が「手放し」の問題です。 手放し:自分が担っているプレイヤー業務を、メンバーに委ねること   優秀なプレイヤーほど「自分がやった方が早い」「この仕事は自分にしかできない」という感覚を持ちやすいものです。しかしこの状態が続く限り、チームと向き合う時間は生まれません。 手放しができると、何が変わるか メンバーにやりがいのある仕事が行き渡る マネージャー自身に余裕が生まれ、チームと向き合えるようになる 心理的安全性が高まる好循環が始まる    逆に手放しができないままだと、管理職のエンゲージメントが下がり、若手のエンゲージメントも下がるという悪循環に陥りやすくなります。1on1は設定されていても、課長がアップアップの状態では「忙しいんだから」という空気が端々に出てしまう。その空気を敏感に感じ取った部下は、少しずつ心を閉ざしていくのです。   心理的安全性を高める3つの実践ステップ  では、具体的にどう動けばいいのでしょうか。ここでは、EQ(感情知能)を軸にした3つのステップを紹介します。EQとは、ニュートラルに物事の状態を捉え、感情との距離感を自分なりに調整する力のことです。 STEP 1:EQで「手放し」の判断軸をつくる  手放しが苦手な方の多くは、「任せたら品質が下がるのでは」「メンバーに負担をかけてしまうのでは」という不安を抱えています。EQを知ることで、こうした自分の感情を客観視しながら「本当に自分がやるべきことか」を冷静に見極めやすくなります。  EQを知り活かせる人ほど手放しが上手で、チームメンバーとの向き合いもうまくいっている傾向があります。まず、自分自身の感情の動きを観察することが第一歩です。 STEP 2:メンバーの特性を見極め、チームを「調律」する  仕事をメンバーに任せ、その動きを定点観測しながら、得意・不得意やモチベーションの源泉を見極めていきます。その上で、役割を整理していきます。 攻める役割:提案・推進が得意なメンバー 守る役割:品質・安定を担うメンバー 受け止める役割:調整・フォローが得意なメンバー  この構造が整ってくると、メンバーの得意に合わせた役割分担が定着し、チームの関係性が少しずつ滑らかになっていきます。構造がうまく機能し始めると、メンバーは自走の中で動き出すことが多いのです。 STEP 3:声がけで「関係性のバグ」を早めに直す  チームのボトルネックは、往々にして「関係性のバグ」から生まれています。 メンバーの能力と、周囲の期待値のギャップ メンバー間に生じている、見えにくい摩擦  こうしたバグを見つけてポイントポイントで声がけをすることが、チームを「調律」していく要です。べったり管理するのでも、放任するのでもなく、「あなたのことを見ていますよ」という関心を示しながら干渉しすぎない。この絶妙な距離感こそが、EQを活かした「寄り添い力」の本質ではないでしょうか。   まとめ  ここまでの内容を整理します。  プレイヤーからマネージャーへのアップデートは、一朝一夕にはいきません。しかし、EQの力を借りながら少しずつ自分なりの「寄り添い方」を見つけていくこと……それが、チームの心理的安全性を育てる確かな一歩になるのではないでしょうか。 「現場で使えるヒント」を中心に、管理職の方に向けた内容を配信中。以下のリンクから公式アカウントを友だち追加できます。https://lin.ee/RkmgGuT 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 Potage公式LINEでは、EQPI診断のご案内をお送りしています。 よろしければぜひご登録ください。 このテーマについて、Potage代表・河原あずさが 日経COMEMOでより深く語っています。 関心のある方はぜひ読んでみてください。

2026年5月11日

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課長職のマネジメント能力と心理的安全性を高める3つのアプローチ

「メンバーに寄り添いなさい」「1on1をちゃんとやりなさい」……管理職へのそうした要請は年々増えています。頭ではわかっていても、プレイング業務を抱えながら実践するのは簡単ではないのではないでしょうか。  本記事では、心理的安全性とマネジメント能力の関係を整理した上で、EQ(感情知能)をベースにした具体的な実践ステップを紹介します。「何から手をつければいいかわからない」という方にとって、一つの手がかりになれば幸いです。 目次 心理的安全性が上がらない、本当のボトルネック 課長職が直面している現実 マネジメント能力を阻む「手放せない」問題 手放しができると、何が変わるか 心理的安全性を高める3つの実践ステップ まとめ Potage36.5公式LINE 心理的安全性が上がらない、本当のボトルネック  エンゲージメントサーベイの結果をさまざまな企業で見ていると、ある共通の傾向が浮かび上がります。課長職あたりの中間管理職のエンゲージメントの高低と、若手社員のエンゲージメントの高低に、一定の相関があるということです。  管理職が疲弊していると、その空気がチーム全体に伝播し、若手のモチ...

河原あずさと36.5編集部

目次 心理的安全性は「仲良しクラブ」ではない ぬるま湯にしないフィードバックの技術「Good・Uniqueness・More」 チームの意識を「外」に向ける指針を立てる 心理的安全性は「厳しさ」と両立する  マネジメントや組織づくりに関する現場の声を聞いていると、繰り返し出てくる問いがあります。それは「心理的安全性を大事にすると、組織がぬるま湯になりませんか?」というものです。  先日、ある40代の経営者の方からこんなお話をいただきました。「私はスタッフを強く信頼しています。ただ、仕事上で褒めることはほとんどありません。上司や組織からの承認を求める意識が主体になると、日々の意識が内向きになる気がするんです」と。心理的安全性を高めることが、結果的にメンバーの意識を内側に閉じさせてしまうのではないか。そんな懸念をお持ちだったのです。  実はこの疑問、多くの管理職やリーダーの方が感じているのではないでしょうか。今回は「心理的安全性」と「ぬるま湯」の違いを掘り下げながら、チームを前に進める対話の技術についてお伝えします。 心理的安全性は「仲良しクラブ」ではない  心理的安全性という言葉を聞くと、「みんな仲良し」「和気あいあい」といったイメージを持たれる方が少なくないかもしれません。しかし、心理的安全性の本来の定義は、チームの中で自分の本音をオープンに言い合える関係性が築けているかどうか、ということです。  つまり、相手にとってプラスなことだけでなく、改善が必要なことについてもしっかりと伝えられる関係性ができあがっている状態を指します。その背景にあるのは、人格を否定されないという安心感です。「あなた自身のことは尊重している。あなたの考え方も大切にしている。ただ、チームとしてはこちらの方向を向いていきたい」――そう率直に言い合えるのが、心理的安全性の高い組織なのです。  心理的安全性という概念が広まった背景には、Googleのリサーチが有名ですが、そこにはストレートにモノを言い合える組織を目指すアメリカのスタートアップ文化の影響も見え隠れしています。決して「優しいだけの場」をつくることが、心理的安全性のゴールではないのです。  ここで気をつけたいのは、心理的安全性の高い組織は、お互いの承認欲求を満たすための場ではないということです。  何に対しても「いいね、いいね」と肯定する。相手との関係性を傷つけたくないから、本当は違うと思っていても口をつぐむ。これは忖度であり、むしろ心理的安全性が低い状態の表れではないでしょうか。言いたいことを言えず、周りの顔色をうかがっている。これこそがぬるま湯の正体なのです。  つまり、心理的安全性とぬるま湯は正反対のもの。ぬるま湯は「本音を言わない関係」、心理的安全性は「本音を言い合える関係」。この違いを明確にしておくことが、チームづくりの出発点になります。 ぬるま湯にしないフィードバックの技術「Good・Uniqueness・More」  では、心理的安全性を保ちながら、率直なフィードバックをするにはどうすればいいのでしょうか。Potageが実践しているのが「Good・Uniqueness・More」というフレームワークです。  最初のGoodは、まず相手のいいところを伝えること。「ここがすごくいいと思います」「ありがとうございます」と、ポジティブなフィードバックから入ります。  次のUniquenessは、相手の個性を認める言葉を伝えること。「これは〇〇さんらしい考え方ですね」「〇〇さんの経験が生きていますね」と、その人だからこその価値を言葉にします。ここで大切なのは、一旦相手のことを受け入れるということ。「あなた自身のことは否定していない。あなたの考え方は尊重している」というメッセージを、まず届けるのです。  そしてMoreは、さらに良くするための問いかけです。「チームとしてはこの方向を目指しているので、もっと良くしていくには、どうしていったらいいと思いますか?」と、相手と一緒に考えるプロセスをつくります。  ポイントは、上から指示するのではなく「問いかける」こと。相手の考えを引き出しながら、チームの方向性とのすり合わせを一緒に行っていく。このプロセスそのものが、心理的安全性を高めていくのです。  「まず褒める」ことから入るという話はシンクリでもしています。よろしければこちらの記事も参考にしてみてください。 チームの意識を「外」に向ける指針を立てる  心理的安全性がぬるま湯にならないために、もうひとつ大切なことがあります。それは、チームの意識を「外」に向ける指針を明確にすることです。  お客さんに向き合う。社会に役立つ組織であり続ける。そうしたチームとしてのゴールを、経営者やリーダーがきちんと言葉にして伝えることで、メンバーの意識は「周囲からの承認」ではなく「社会やお客さんへの価値提供」へと自然に向かっていきます。  外向きの指針があるからこそ、フィードバックにも軸が生まれます。「チームとして目指している方向はこちらだから」という共通のゴールがあればこそ、率直な対話が建設的なものになるのです。 心理的安全性は「厳しさ」と両立する  「心理的安全性を大切にすると、チームがぬるま湯になるのでは」という問いに対する答えは、むしろ逆かもしれません。本当に心理的安全性が高い組織は、お互いに厳しいことも言い合える。そしてそれが言えるのは、「何を言っても、この関係性は壊れない」という信頼が土台にあるからです。  もちろん、Good・Uniqueness・Moreのフレームも、一朝一夕で身につくものではなく、日々の実践と振り返りの中で少しずつ磨かれていくものです。  心理的安全性とは、居心地のいいぬるま湯をつくることではなく、お互いの成長のために本音を伝え合える土壌を耕すこと。その土壌があってはじめて、チームは外に向かって力強く動き出すのかもしれません。  あなたのチームでは、本音を伝え合える関係性が育っていますか? 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 Potage公式LINEにて、EQPI診断のご案内をお送りしています。 よろしければぜひご登録ください。

2026年5月11日

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心理的安全性とぬるま湯の違いとは?チームが変わる対話術

「心理的安全性=ぬるま湯」は誤解。厳しさと両立するフィードバック術と、チームの意識を外に向ける対話の技術を解説します。

河原あずさと36.5編集部

目次 「挑戦因子」が低い組織の正体 「アリバイ提言」と「叩き台をぶっ叩く会議」 今日から使える2つのアプローチは、「行動の称賛」と「斜に構えないワーク」  Potage株式会社代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  このたび、新しいポッドキャスト番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」(略して「シンクリ」)がスタートしました。株式会社ZENTech(以下、ZENTech)の代表取締役社長CEOである金亨哲さん(ひょんちょるさん)と私の二人で、リスナーの皆さんから届く「チームビルディング」や「マネジメント」にまつわるお悩みに答えていく番組です。ナビゲーターにはきのせまりさんをお迎えしています。  ZENTechは2018年から「心理的安全性」という概念を世の中に広げるために活動してきた会社で、共同代表の石井さんが出された「心理的安全性のつくりかた」という書籍でご存じの方も多いかもしれません。心理的安全性を軸とした組織開発コンサルティングを通じて、さまざまな企業や組織の組織文化づくりに取り組まれています。一方の私は「コミュニティ思考」という考え方をベースに、EQ(感情知能)を活用した組織の関係性づくりや、チームがもっとよく動くための伴走支援をしています。そんな二人が「心理的安全性」と「チームビルディング」をテーマにお悩みに答えていくというのが、この番組の趣旨です。 「挑戦因子」が低い組織の正体   記念すべき第1回の放送では、早速リスナーさんからお悩みが届きました。 「新しいサービスを考えていこう」「今までの提供サービスを見直していこう」というチームにおける相談です。メンバーが自分の業務の延長線上でしか考えず、具体的な提案がない。結局リーダーが一生懸命考えて叩き台を出し、それに対して意見交換が始まるという状況。相談者の方はこのチームのメンバーで、「これならAIと話してた方がマシだし、早い」と感じているようです。  マネジメントの現場で、チームから主体的なアイデアが出てこないことに悩むリーダーは決して少なくないでしょう。  このお悩みに対して、ひょんちょるさんが指摘したのが「挑戦因子」の問題でした。ZENTechが提供している心理的安全性の診断サービス「SAFETY ZONE」では、心理的安全性を4つの因子で測定しています。「新規事業部」や「DX推進室」といった名前がついたチームなのに、4つの因子のうち「挑戦因子」が特に低いという現象がしばしば見られるそうです。イノベーションを求められているはずのチームで、なぜ挑戦が起きないのか。それは「ちゃんと結果を出さなきゃいけない」というプレッシャーが強くのしかかり、失敗を恐れるあまり誰も最初の一歩を踏み出せない状態に陥っているからです。チームビルディングの観点から言えば、「新規事業部」や「DX推進室」といったチームの役割と実態が乖離してしまっている状態ともいえます。 「アリバイ提言」と「叩き台をぶっ叩く会議」  ひょんちょるさんは、ある事例も紹介してくれました。会議の中で「とにかく意見は出しておこう」という空気がある現場の事例です。発言すること自体が「仕事をした証」になっていて、本当の意味でプロジェクトを前に進めようという意見ではない。いわば「アリバイ提言」です。「会議に参加した意味はあるよ、なぜなら発言したから」――そしてその発言すらも、「お前発言してないじゃないか」と言われることを避けるための予防線だったりする……これはチームマネジメント上、非常にもったいない状態です。1on1やチームの会議で対話が形骸化していると感じたことのある方は、この構造に心当たりがあるのではないでしょうか。  きのせさんからは、会社員時代の経験として「声の大きい人がバーッと話してしまい、他の人が『私もそう思います』と続くだけ」という状況を挙げてくれました。一応みんな発言はしている。でも、本当の意味で意見が混ぜ合わされているかは疑問という、まさに心理的安全性が担保されていないチームで起こりがちな光景です。リーダーシップを発揮しているつもりの人が、実は周囲の発言を抑制しているということは、チームビルディングの現場では珍しくありません。  私自身も、大企業の新規事業部署でこうした場面に出くわしてきました。シリコンバレーで学んだデザイン思考の中に「Yes, and(イエス・アンド)」という手法があって、相手の意見に「それいいね、それでさ」とちょい足ししていく連鎖でアイデアを膨らませていくのがコツなのですが、実際にやってみると、斜に構えたコメントが多かったり、「叩き台」なのにでっかいハンマーで暴力的にぶっ叩いて割ってしまう人がいたりする状況によく出くわします。リスクを取らないように探り合うチームもあれば、評論家ばかりで何も前に進まないチームもあります。 今日から使える2つのアプローチは、「行動の称賛」と「斜に構えないワーク」  こうした状況に対して、ひょんちょるさんが提案してくれたのは「まずチャレンジした行動そのものを称賛する」というアプローチでした。リーダーが叩き台を出してくれたなら、中身の議論に入る前に、その行動自体を「ここまでやってくれてありがとうございます」「このポイントってめちゃくちゃ素敵ですね」と認める。行動への称賛があってからフィードバックを寄せていけば、次もやろうという気持ちにみんながなれる。これはEQ(感情知能)の観点でいえば、相手の感情を認識し、適切に応答するというEQを活かした実践そのものです。  否定しなくても意見は出せるのだから、「加えて、なんかここって僕としてはこういう観点もあるかなと思ったんですけど」という「イエス・アンド」の言い方で、建設的な対話が生まれていきます。コーチングの世界でも「承認」から入ることの重要性はよく語られますが、チームの会議の場面でも、まったく同じ原則が当てはまるのです。  私からは「斜に構える・構えないワーク」というアイスブレイクを紹介しました。タピオカミルクティーの画像を見せて、最初の1分間は「斜に構えた態度」で語ってもらう手法です。「だいぶブーム終わったよね」みたいなコメントが飛び交った後、次の1分間は「斜に構えない態度」で絶賛してもらいます。「これは一時的なブームじゃない、定着した台湾文化の象徴だ」と。そして最後に、どちらが心地よかったかを振り返ってもらうのです。当然、斜に構えない方が気持ちいいとおっしゃる方が多いです。しかもこの切り替えは、スイッチひとつでできるんですよ、という話をします。いろいろなお題で試したのですが、タピオカミルクティーが一番ちょうどいいということに行き着きました。 (アイスブレイクに関してはこちらの記事でもお読みいただけます)  ひょんちょるさんが言う「まず褒める」というコミュニケーションも、結局は一人ひとりが自分の中でスイッチを入れられるかどうか。だからこそ、チームの対話を始める前にこのアイスブレイクで体感してもらって、「この場では斜に構えない方でいきましょう」という合意形成をしてから始める。それだけで場の空気はずいぶん変わります。心理的安全性を高めるチームビルディングの第一歩として、ぜひ皆さんも会議で試してみてください。  こんなふうに、今日明日からすぐに使えるマネジメントのテクニックや、現場のリアルで生っぽい話をお届けできるのが「シンクリ」の強みだと思っています。心理的安全性やEQといった概念は、知識として知っているだけでは組織文化は変わりません。日々の対話の中で一つひとつ実践していくことで、チームは少しずつ、でも確実に変わっていきます。  これからも皆さんのチームビルディングやマネジメントにまつわるお悩みに、所長・ひょんちょるさんと副所長・河原あずさの二人で前のめりに答えていきます。ぜひ番組を聴いていただけるとうれしいです。お悩みはこちらからお寄せください。

2026年3月11日

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"叩き台をぶっ叩く会議"から卒業しよう。心理的安全性を高めるチームビルディングの第一歩|ポッドキャスト『シンクリ』始動

心理的安全性を高めるために、会議でできることがあります。「行動の称賛」と「斜に構えないワーク」——すぐ実践できる2つのアプローチを、専門家との対話から解説します。

河原あずさ(Potage代表)

「心理的安全性」という言葉の陰で。 皆さんも、「心理的安全性」という言葉を、一度は耳にしたことがあるかもしれません。Googleが提唱し、人事・組織開発の文脈で急速に広まったこの概念は、今や多くのビジネス書や研修プログラムにも登場します。ところが、言葉が浸透すればするほど、現場ではこんな矛盾も生まれています。 「本音を言ったら関係が壊れそうで、結局うまく取り繕ってしまう」 「衝突を避け続けているうちに、チームとして成果が出なくなった」 「部下には安全な場を提供したいのに、管理職である自分自身がプレッシャーで押しつぶされそう」 これらは、決して特定の職場だけの話でありません。多くの管理職が、日々こうした葛藤を抱えながらチームを動かしています。心理的安全性は「理想」として語られる一方で、本当の意味で実現するのは簡単なことではないのかもしれません。 心理的安全性の本質は、「ぬるさ」ではなく「強さ」にある ここで改めて確認しておきたいのが、心理的安全性の本質です。それは単に「なんでも言い合える仲良しチーム」を目指すことではありません。成果に向けて、安心して意見を交わせる状態を指します。言い換えれば、衝突を恐れず、建設的な対話を通じて組織が前進していける基盤のことです。 そして、その基盤を実装するうえで欠かせないのが、もう一つのキーワード、EQ(感情知能)です。感情を抑え込んだり、見て見ぬふりをするのではなく、感情をきちんと認識し、プラスの力に転換していく技術。この「感情を扱う力」が、心理的安全性を"絵に描いた餅"で終わらせないための鍵となるんです。 二つの専門知識が交わる場所──Podcast『シンクリ』誕生 こうした課題意識から生まれたのが、新たなPodcast番組『心理的安全性あふれるチーム作り相談所』(略称:シンクリ)です。 「感情をプラスの力に変える」をビジョンにEQ開発を展開するPotage株式会社と、心理的安全性の計測および組織開発支援を手がける株式会社ZENTech(東京都千代田区、代表取締役:金亨哲)。それぞれの領域で組織変革の最前線に立つ両社が共同制作し、2026年3月5日(木)より配信をスタートします。 対象は主に管理職。成果と関係性を両立させるチームづくりを、心理的安全性とEQという二つのレンズで深掘りしていく音声コンテンツです。 番組の構成と今後の展開 3月は、ZENTechとPotageの両代表による対話を通じて、心理的安全性と感情の側面から、よくあるケースに基づいて基礎的な話を整理します。4月以降は、テーマをさらに拡張し、時に外部ゲストを迎えて議論を深めていく予定です。ゲスト情報を含む番組最新情報はこちらで受け取れます。 Potage 36.5 公式LINE:https://lin.ee/71BXD7w リスナー限定特典 第1回放送内で発表される「合言葉」を専用フォームにご入力いただいた方へ、以下を無料プレゼントいたします。 ZENTech監修 : 心理的安全性事例集 Potage監修:シンクリ所長 金亨哲氏のEQ診断大公開!(音声コンテンツ) 応募フォーム:https://forms.gle/9Zy22qj49A9MqBin9 番組概要 番組名:心理的安全性あふれるチームづくり相談所(略称:シンクリ) 配信開始日:2026年3月5日(木) / 隔週木曜日配信 配信媒体: stand.fm / Spotify / Apple Podcast / Amazon Music / Voicy 初回放送を聴く:https://stand.fm/episodes/69a73144bd9945cb0f5bd2da メイン出演者:現場を知る二人のプロフェッショナル 金 亨哲氏(株式会社ZENTech 代表取締役社長) 日本生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒。2018年に創業期から株式会社ZENTechへ参画し、2022年より代表取締役社長。心理的安全性の高い組織・チームづくりを軸に、通信、SIer、鉄道、自動車、製造など大手企業の組織カルチャー変革を支援。加えてテクノロジーの知見を活かし、現場の変容を促すチームリーダー向けWebサービス/モバイルアプリのプロダクトマネジメントも担う。働きがいある会社づくりの専門家。 河原 あずさ(Potage株式会社 代表取締役) 富士通、シリコンバレー駐在(新規事業開発)などを経て独立。2021年にPotage株式会社を設立。感情を「経営資源」として捉え直し、経営層の意思決定から事業部の関係性設計まで一気通貫で支援する「Your CEQO」を提供。大手企業からスタートアップまで幅広い組織変革に伴走している。EQ(感情知能)を軸に、成果と関係性を両立させる「EQ経営」の実装を推進している。 番組の特徴 管理職の葛藤に真正面から向き合う 理論と現場のリアルを往復 <テーマ例> なぜ私たちは本音で向き合えないのか 「優しさ」と「成果」の関係 1on1が機能しない本質的理由 管理職が自分の感情を扱う技術 チームが本音でぶつかれない理由は、意外と感情の扱い方にヒントがあるかもしれません。まずは一度、耳を傾けていただけると嬉しいです。 初回放送を聴く:https://stand.fm/episodes/69a73144bd9945cb0f5bd2da

2026年3月11日

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なぜ、あなたのチームは本音でぶつかれないのか。心理的安全性とEQで問い直す新Podcast『シンクリ』を、26年3月5日に配信開始

なぜ、あなたのチームは本音でぶつかれないのか。心理的安全性とEQで問い直す新Podcast『シンクリ』を配信開始

河原あずさ(Potage代表)

目次 心理的安全性とは何か 偽の心理的安全性とは? 忖度が生まれるメカニズム 偽の心理的安全性を見抜くサイン 管理職ができる改善アクション Potage36.5公式LINE  「うちのチームは何でも言い合える」……そう感じているチームほど、実は忖度に支配された"偽の心理的安全性"に陥っているかもしれません。  声の大きい人への同調が無意識に起きている組織では、本音の対話が封じられ、チームビルディングが停滞してしまいます。こうした状態を抜け出す鍵になるのが、管理職の振る舞いとEQ(感情知能)を軸にした小さな対話の積み重ねです。 心理的安全性とは何か  心理的安全性という言葉を、ここ数年で耳にする機会がずいぶん増えました。ハーバード大学のエイミー・エドモンドソン教授が提唱した概念で、「このチームで発言しても、自分が否定されたり罰せられたりしないと信じられる状態」のことを指します。  よく誤解されるのですが、心理的安全性とは「仲が良いこと」ではありません。 異論や違和感を、安心して口にできること。それが本来の意味です。チームビルディングの文脈でも、この心理的安全性は土台になります。 偽の心理的安全性とは?  EQをベースにしたチームビルディングや組織開発の研修の場で、こんなやり取りがよく見られます。  「皆さんのチームには心理的安全性がありますか?」  そう問いかけると、多くの方が「うちはあると思います」と答えます。ところが、研修を依頼した人事や経営層からは、事前にこんな声が出ていることが少なくありません。  「うちは本音で対話できていなくて……」  現場とマネジメント層で、認識がまるで違う……こうした不思議な現象は、実は多くの組織で繰り返し起きています。本記事ではこの状態を「偽の心理的安全性」と呼びます。 忖度が生まれるメカニズム  研修の場では、こんなやり取りが起きることがあります。  誰かが「うちは心理的安全性が高いですよ」と言う。すると、周囲がすっと同調する。しかし、ここで立ち止まって考えてみる必要があります。本当にそうだろうか、と。  声の大きい人に対して、「実は私は少し違う意見です」と言えるでしょうか。場の空気を壊すかもしれない、関係性がぎくしゃくするかもしれない……そう思うと、本音は引っ込められてしまうこともよくあります。  それは安心ではなく、忖度です。表面的には穏やかかもしれません。しかし、チームビルディングの観点では、挑戦や対話が止まり始めているサインともいえます。 ここまでのポイント 心理的安全性とは「仲が良いこと」ではなく異論を安心して言える状態のこと   「うちは心理的安全性がある」と感じているチームほど忖度による"偽の状態"に陥りやすい 忖度は「安心」ではなく「空気を読んだ沈黙」。チームビルディングが止まるサイン 偽の心理的安全性を見抜く3つのサイン  では、管理職として何を見ればよいのでしょうか。多くの現場で共通して見られるサインには、次のようなものがあります。 1. 会議で反対意見がほとんど出ない  議論がスムーズすぎるときほど、注意が必要です。 2. 決定後に裏で不満が出る  会議では全員賛成。しかし後から本音が漏れる。この構造は危険信号です。 3. 発言する人が固定化している  若手や静かなメンバーがほとんど話していない場合、心理的安全性は限定的かもしれません。 管理職ができる改善アクション  偽物を本物に変える鍵は、制度よりも振る舞いにあります。まずは、管理職自身が「異論を歓迎する姿勢」を示すことがポイントです。「他に意見はない?」ではなく、 「違う見方があれば、ぜひ聞きたい」と具体的に伝えてみましょう。そして、全体の場で出ない声を、1on1などで丁寧に拾うのです。  さらに重要なのが、EQの視点です。自分の中に生まれた小さな違和感に気づくこと、それがとてもたいせつです。 「今、少しモヤっとしたな」と感じられるかどうか……。 本当の心理的安全性は、「本音を言おう」と号令をかけて生まれるものではありません。 小さな自己開示の積み重ねの中で、少しずつ育まれていきます。 あなたのチームの心理的安全性は「本物」ですか?  心理的安全性という言葉が広がること自体は、とても良いことです。けれど、言葉だけが先行して、「うちは大丈夫」と思い込んでしまうことほど、怖いことはありません。  あなたのチームでは、メンバーが本音で語り合えていますか。 誰かの一声に、無意識に空気を合わせてしまっていないでしょうか。  もし、ほんの少しでも心当たりがあるなら…それは「偽の心理的安全性」に向き合う、最初のサインなのかもしれません。    EQを軸にした信頼関係構築とチームビルディングのプロジェクトを実施した、関電不動産様の事例はこちらからお読みいただけます。 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 Potage公式LINEにて、EQPI診断のご案内をお送りしています。 よろしければぜひご登録ください。

2026年5月11日

最終更新日:

「偽の心理的安全性」とは?忖度がチームビルディングを止める本当の理由

心理的安全性が「ある」と即答するチームほど、実は忖度に支配された「偽の心理的安全性」に陥っている可能性があります。

河原あずさと36.5編集部

目次 「ポゼッション率」という視点がチームビルディングを変える 心理的安全性の高いチームは「25%ずつ」で話している 均等な発言から始まる「違いを活かす」チームづくり ファシリテーションは「凸凹を見つけて組み合わせる」技術 あなたのチームのポゼッション率は、どうなっていますか? 「ポゼッション率」という視点がチームビルディングを変える  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  ワークショップやチームビルディングの現場に立つ中で、私が大事にしている指標があります。それが「会話のポゼッション率」です。  ポゼッション率といえば、サッカーを思い浮かべる方が多いかもしれません。90分の試合の中で、どちらのチームがどれくらいボールを保持していたかを示す数値です。浦和レッズが53%、鹿島アントラーズが47%。そんな具合に、ゲームの主導権がどちらにあったかを読み解くための指標として使われています。  この概念を、チーム内の会話に転用してみます。すると、チームビルディングにおいて見落とされがちな、とても大事なことが浮かび上がってきます。 心理的安全性の高いチームは「25%ずつ」で話している  ここで皆さんに問いかけてみたいのですが、4人のチームで会話をしているとき、理想的なポゼッション率の配分って、どれくらいだと思いますか。  答えは、25%ずつです。  これは私の現場感覚だけでなく、心理的安全性の研究からも裏付けられていることです。心理的安全性の高い組織では、メンバー間の発言量がほぼ均等になっているという特徴がある。逆にいえば、発言量に大きな偏りがあるチームは、心理的安全性が低い状態にある可能性が高いということです。  たとえば、リーダー格のAさんが全体の70%を話していて、残りの3人が10%ずつ。あるいは、経験年数の近い2人が合わせて80%、若手2人で20%。こうした光景は、どの職場でも見覚えがあるのではないでしょうか。  声の大きい人に発言が偏ると、何が起きるでしょうか。発言量の多い人は「いい議論ができている」と感じているかもしれません。しかし発言量の少ない人は、本音を言えないまま、顔色をうかがい、忖度し、「まとまっといたほうが楽だな」と口をつぐんでいる......そこには、表面化しにくい意識のギャップが横たわっています。この「気持ちよく話しているつもりの人」と「黙っている人」のあいだにある溝こそが、チームの一体感を蝕む原因になっているのです。 均等な発言から始まる「違いを活かす」チームづくり  では、心理的安全性の高いチームは何が違うのか。それは、メンバー同士がお互いの発言量を意識し、自然と均等になるように配慮しているという点です。  Aさんが話し始めて、少し長くなったなと感じたら、「ところでBさんは、この件についてどう思いますか?」と振る。Bさんの意見を聞いたら、「Cさんはどうですか?」と広げていく。こうして全員がテーブルの上に自分の考えを並べることで、はじめてチームとしての合意形成が動き出すのです。  ここで重要なのは、全員が同じ意見を持つことではありません。むしろ大事なのは、それぞれの「違い」が見えるようになることです。  チームビルディングにおいて、違いは排除すべきものではなく、活かすべきものです。全く同じ人間が4人集まっても、チームはうまく機能しません。なぜなら、価値というものは「違い」から生まれるからです。  パズルのピースを想像してみてください。ひとつひとつのピースには、出っ張っているところと凹んでいるところがあります。これはそのまま、一人ひとりの得意と苦手に言い換えられる。出っ張りと凹みが噛み合うからこそ、ピースは組み合わさり、一枚の絵が完成するのです。 ファシリテーションは「凸凹を見つけて組み合わせる」技術  僕がチームビルディングの現場で心がけているのは、まず会話のポゼッション率を均等に近づけること。そしてその次に、一人ひとりの「凸凹の形」を見極めていくことです。  均等に発言できる場をつくると、それぞれのメンバーがどんなことに関心を持っていて、何を得意とし、何に苦手意識を持っているかが、自然と見えてきます。年次も役職も関係なく、対等な立場で意見を交わせる状態。それがあってはじめて、メンバーの凸凹の輪郭がはっきりしてくるのです。  ファシリテーションとは、単に会議を進行することではありません。発言のバランスをデザインしながら、メンバーそれぞれの個性を引き出し、その組み合わせを見つけていくプロセスです。誰かの凹みを、別の誰かの出っ張りで補う。その掛け合わせの中から、一人では描けなかった絵が浮かび上がってくる。  僕はこれを「コミュニティ型組織開発」と呼んでいますが、その根底にあるのは、多様な「個」が打ち消しあうのではなく、溶け合うことで新しい価値を生み出すという考え方です。心理的安全性は、その溶け合いが起きるための土壌にほかなりません。 あなたのチームのポゼッション率は、どうなっていますか?  ここまで読んでくださった方に、ひとつ試していただきたいことがあります。次のミーティングで、チームメンバーの発言量を意識して観察してみてください。  誰がどれくらい話していますか。話していない人はいませんか。その人は、本当に「話すことがない」のでしょうか。それとも「話せない空気」があるのでしょうか。  会話のポゼッション率は、チームの健康状態を映し出すバロメーターです。数値化する必要はありません。ただ、意識を向けるだけで、見えてくるものがあるはずです。  そして、もしポゼッション率に偏りがあると感じたら、「ところで、〇〇さんはどう思いますか?」というひと言を投げかけてみてください。その小さな問いかけが、チームの心理的安全性を育てる最初の一歩になるかもしれません。  強いチームは、違いを恐れません。違いを見つけ、違いを面白がり、違いを活かして、まだ見ぬ絵を一緒に描いていく。その出発点は、全員が安心して声を出せる場をつくることにあります。  あなたのチームには、まだ聞こえていない声が眠っているかもしれません。その声に耳を傾けることが、チームの新しい可能性を拓くきっかけになるのだと、僕は信じています。 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 Potage公式LINEにて、EQPI診断のご案内をお送りしています。 よろしければぜひご登録ください。

2026年5月11日

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会話のポゼッション率で高まるチームの心理的安全性

心理的安全性を高める鍵は「会話のポゼッション率」。発言量の偏りを見直し、違いを活かすチームビルディングの具体策を解説。

河原あずさ(Potage代表)

目次 凍りついた場の空気は最初の5分で決まる いきなり本題に入らないことが、心理的安全性を育む「最初の一歩」になる カメラロールが映し出す「その人らしさ」 チームビルディングは「共感の交差点」から始まる 場をつくる人が、まず自分を開く Potage36.5公式LINE  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  ワークショップやチームビルディングの現場では、「最初の数分間で、いいアウトプットが出るかはほとんど決まる」とよく言われます。  初対面のメンバーが集められた研修やワークショップを想像してみてください。参加者たちは緊張した面持ちで席につき、お互いの様子をうかがいながら、誰も口を開かない――会場には、まるで凍りついたような空気が漂っています。「隣の人と自己紹介してください」と振ったものの、何を話せばいいかわからず沈黙が広がってしまう……そんなモヤモヤした経験をお持ちの方も、少なくないのではないでしょうか。  今回は、私がプロのファシリテーターとして数多くの現場で実践してきたアイスブレイクのアプローチを軸に、「心理的安全性」と「チームビルディング」の観点から、なぜ最初の5分がチームづくりの命運を分けるのかを深掘りしてみたいと思います。 凍りついた場の空気は最初の5分で決まる  場が凍り付いた状態で「さあ、アイデアを出しましょう」と号令をかけても、実のある議論が生まれるはずがありません。チームビルディングにおいて、最初にやるべきことは、この凍りついた空気を丁寧に溶かしていくこと、いわゆる「アイスブレイク」です。  ところが、このアイスブレイクというプロセス、軽視されがちなわりに、実はとても奥が深いんです。うまくいけば場の空気は一変しますが、失敗すると氷はむしろガチガチに固まってしまいます。これだと「アイス・メーカー」ですよね(笑)。 いきなり本題に入らないことが、心理的安全性を育む「最初の一歩」になる  では、どうすればこの氷を上手に溶かせるでしょうか。  ここで鍵になるのが「心理的安全性」です。どんな発言をしても自分が脅かされない、むしろ発話することがポジティブに受け止められるという安心感のことを言います。この感覚がなければ、人は本音を語れませんし、創造的な議論も生まれません。  ポイントは、いきなり仕事の話や本題に入らないことです。  仕事に絡めた自己紹介をさせると、参加者は「ちゃんとしたことを言わなければ」と身構えてしまいます。肩肘を張った発言は共感を生みにくく、結果として場はさらに硬直していきます。だからこそ、最初は本題から少し離れたところで「自分自身」を開いてもらうがあります。そのための仕掛けが、アイスブレイクワークです。 カメラロールが映し出す「その人らしさ」  僕が現場で実践しているアイスブレイクワークを、ひとつご紹介します。  やり方はシンプルです。まず、参加者全員にスマートフォンを取り出してもらいます。そしてカメラロールを開いて「自分を最もよく表していると思う写真を一枚選んでください」と伝える。選んだら、グループ内でその写真について1分間プレゼンしてもらう。たったそれだけです。  例えば、僕だったら、年子の息子と娘と一緒に写った家族写真を見せながら、「実は年子育児をしながら起業しているんです」と話すかもしれません。すると周りから「え、大変じゃないですか」と声がかかり、自然と会話が生まれていきます。  別の方は、自作のパエリアの写真を選ぶかもしれません。「え、これ自分で作ったんですか? レストランかと思いました」と驚きの声が上がって、また新しい対話が始まります。  このワークが便利なのは「誰でもできる」ということです。スマホは誰もが持っていて、カメラロールにはその人の日常や価値観が詰まっています。特別な準備もいらなければ、話す内容に正解も不正解もありません。だからこそ、人は自然と自分を開くことができるのです。  もうひとつの応用編として「鞄の中から自分が大事にしているアイテムをひとつ取り出して、それについてプレゼンしてください」というワークもあります。高級なボールペンを出す人もいれば、iPadのペンシルを取り出して「大事なのになくなりやすいんです」と笑いを誘う人もいます(僕です)。  そうした小さな自己開示を通じて、お互いへの「興味のベクトル」が交差し始める。この交差が大事なのです。 チームビルディングは「共感の交差点」から始まる  なぜ、このような自己紹介ワークが、チームビルディングにおいて有効なのかというと、共感が心理的安全性の土台になるからです。  「分かる」「自分もそうだ」という小さな共感の積み重ねが、「この場では自分を出していいんだ」という安心感を育てていきます。写真やアイテムを通じた自己紹介は、言葉だけの自己紹介よりも、はるかに「その人らしさ」が伝わりやすい……だからこそ共感が生まれやすく、場の温度が上がっていくのです。  みんながワイワイガヤガヤ話しながら、お互いのことを肯定し合える時間、いわゆる「ワイガヤ」の状態をまず作ることが、その後の議論やアイデア出しの質を大きく左右します。  ここで少し理論的な話を補足すると、MITのダニエル・キム教授が提唱した「成功の循環モデル」では、組織の成果は「関係の質」から始まるとされています。関係の質が高まれば、思考の質が上がり、行動の質が変わり、結果の質が向上する。そしてその「関係の質」を最初に耕す場こそが、アイスブレイクなのです。 場をつくる人が、まず自分を開く  最後に、ひとつだけ付け加えておきたいことがあります。  アイスブレイクで場の空気を変えるためには、ファシリテーター自身がまず自分を開くことが大切です。自己紹介ワークをするなら、最初に自分から写真を見せ、自分の話をする。完璧な自己紹介である必要はありません。むしろ、少し隙のある、人間味のあるエピソードのほうが、場の空気は柔らかくなります。「あの人も完璧じゃないんだ」という安心感が、参加者の肩の力をそっと抜いてくれるのです。  偉そうに語ってしまいましたが、僕自身も、アイスブレイクがうまくいかず空気がさらに凍りついてしまった経験が何度もあります。「あの振り方は違ったな」「もう少し自分から開けばよかったな」と、反省とアップデートの連続です。  「場をつくる」というのは、テクニックだけの話ではないのかもしれません。その場にいる一人ひとりが、少しだけ自分を開いてみる。その勇気の連鎖が、凍りついた空気を溶かし、チームに温かい流れを生み出していく。アイスブレイクは、その流れの最初の一滴なのです。  あなたのチームの「最初の5分」は、どんな風に始まっていますか?​​​​​​​​​​​​​​​​ 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 Potage公式LINEにて、EQPI診断のご案内をお送りしています。 よろしければぜひご登録ください。

2026年5月11日

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場の空気は最初の5分で決まる!心理的安全性を生むアイスブレイク術

アイスブレイクは単なる場つなぎではなく、チームビルディングの成否を左右する「最初の設計図」。心理的安全性は、参加者が「自分らしさ」を安心して表現できる、小さな成功体験の積み重ねから育まれます。スマホのカメラロールや鞄の中身といった、身近なものを使った自己紹介ワークが、凍った場の空気を溶かす鍵になります。

河原あずさ(Potage代表)

目次 「昭和のマネジメント」がチームを破壊する理由 心理的安全性を高める3つのコミュニケーション変革 1. 叱らない:「正解の押し付け」から「問いかけ」への転換 2. 自慢しない:「過去の栄光」ではなく「未来のゴール」にフォーカスする 3. 褒める:「個性の肯定的な言い換え」を組織の文化にする 日々の振る舞いが、チームの文化を創る Potage36.5公式LINE  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  数年前の話になるのですが、シリコンバレーで女性起業家の支援をされている堀江愛利さんからのお誘いで、ワシントンDCを拠点に起業家支援に尽力されている久野祐子先生のお話を伺う機会に恵まれました。  久野先生はご自身も起業家として大成功を収められた後、現在は次世代の支援に回られている素晴らしい方です。そのセッションの中で、すべてのチームに関わる人、特にマネジメント層に深く刻んでほしい「チームとの向き合い方の原則」の話がありました。  今回は、この教えを私なりに噛み砕き、これからの時代の「チームビルディング」と「心理的安全性」の観点から、なぜこの3つが組織の命運を分けるのかを深掘りしてみたいと思います。 「昭和のマネジメント」がチームを破壊する理由  日本の企業文化を振り返ると、かつての理想的な上司像とは「背中で語る」「ダメなことは厳しく叱責する」「飲み会で武勇伝を語る」「安易に褒めず、ハングリー精神を煽る」といったものでした。 長く美徳とされてきた、いわゆる「昭和のコミュニケーション」です。  しかし、今の時代にこの手法をそのまま持ち込むとどうなるでしょうか。 良かれと思ってやっている指導が、受け手からは「ただのマウント取り」や「押し付け」と変換されてしまいます。結果として、メンバーは萎縮し、自発的な提案は消え、組織の風通しは最悪の状態に陥ります。  では「令和のマネジメント」において最も重要なコミュニケーションはどのようなものでしょうか。  まず基礎となるのは「相手を対等なメンバーとして認めること」です。  役職は単なる「役割」の違いであり、人間としての上下ではありません。この対等なスタンスこそが、心理的安全性を醸成するための絶対条件なのです。今回の記事では久野さんが提示した「3つの原則」を軸に、マネジメント層が「対等な関係性」を築き、メンバーのポテンシャルを最大化するための強力なOS(オペレーティングシステム)となる「令和のマネジメントスタイル」について考えたいと思います。 心理的安全性を高める3つのコミュニケーション変革  久野さんがお話していた「心理的安全性あふれるコミュニケーションの原則」は以下の3つでした。 1. 叱らない:「正解の押し付け」から「問いかけ」への転換  「叱らないで、どうやって人を育てればいいのか?」と不安に思う方もいるでしょうが、自分の意見や正解を押し付けるのではなく、「問いかける」ことが、上司部下との対等な関係性を築く上では大事になります。  例えば、部下のパフォーマンスが期待に届かない時「なんでできないんだ?」と過去の失敗を詰めるのは、心理的安全性を著しく下げる行為です。 そうではなく、「どうしたらもっと良くなると思う?」「パフォーマンスを上げるためには、チームとして何が必要だろう?」と問いかけることで、相手の思考を促すことが重要なのです。  そして、相手が考え抜いた仮説を否定せず「じゃあ、まずはそれでやってみよう」と背中を押す。失敗しても受け止める度量を見せることも大事です。この「任せて、見守る」プロセスが、自律駆動型のチームビルディングには不可欠なのです。 2. 自慢しない:「過去の栄光」ではなく「未来のゴール」にフォーカスする  自慢話というのは、基本的に「過去の成功体験」への執着です。しかし、激しい変化に直面している現代のチームにとって重要なのは、過去の栄光ではなく「未来のゴール」です。  「俺の若い頃はこうやって乗り越えた」と語るのではなく、「今、私たちはどんなゴールに向かっているのか」「その未来を実現するために、今あるリソースで誰がどう振る舞うべきか」。マネジメント層にとって、常にこの「未来」と「現在」に視点を意識し続けることが、より重要な世の中になっているのです。  (未来に向けた建設的な対話に集中していれば、そもそも自慢話をしている余裕などないはずですよね?) 3. 褒める:「個性の肯定的な言い換え」を組織の文化にする  昔アメリカに住んでいた頃、アメリカ人はなんてポジティブなんだと日々痛感していました。特に感じていたのは、彼・彼女らが日常的に使う「あいづち」です。Goodにはじまり、Beatiful!Perfect!Awesome!I like it!と、あらゆるあいづちが肯定的で、日本人的な感覚だと、すごく不思議な気持ちだったのを覚えています。自分も使わないとなじめないので、日々使っていたんですけどね。けど、まるで自分が自分でないような感覚だったのを、未だに覚えています。  僕のように、アメリカ人のようにストレートに褒めちぎるのは、日本人の感覚だと少し気恥ずかしいと思うかたもいるかもしれません。そこでおすすめなのが「相手の特徴をポジティブな表現で捉え直す(リフレーミングする)」という技術です。  例えば、会議で発言が少ないメンバーに対し「寡黙だね(=もっと喋れ)」とネガティブに捉えるのではなく「じっくり物事を深く考えられる人だね」と言い換えてみる。少し個性が強いメンバーには「自分を素直に表現できる人だね」と伝える。  このように、個人の特性を肯定的に受け取る言葉の習慣化が、結果として相手を「認める(褒める)」ことにつながります。お互いの違いをポジティブに受け入れ合うことこそが、強いチームの証です。 日々の振る舞いが、チームの文化を創る  久野先生の振る舞いからは、自分が受けた恩を次の世代へ惜しみなく渡していく、シリコンバレーの「ペイ・フォワード(恩送り)」の精神を強く感じました。  心理的安全性は、立派なスローガンを掲げたからといって生まれるものではありません。日頃のコミュニケーションの、ほんの小さな改善の積み重ねから生まれます。新しく入ってきた人は、古参のメンバーやマネージャーの背中を見て育ちます。だからこそ、まずは組織を率いるリーダーから、「叱らない、自慢しない、褒める」という振る舞いへと変容していく必要があるのです。  偉そうに語ってしまいましたが、僕自身も、過去の事例を熱を入れて説明するうちに、意図せず武勇伝のように聞こえてしまっていないか、とハッとすることがあります。できるだけ謙虚に、フラットに物事を伝えるよう、日々反省とアップデートの連続です。  マネジメントは、終わりのない旅のようなものです。だからこそ、読者の皆さんと一緒に、これからも対等で温かい、そして成果を生み出すコミュニケーションを磨き続けていければと思います。 自分のEQ傾向を知ることが、チームを変える最初の一歩かもしれません。 Potage公式LINEにて、EQPI診断のご案内をお送りしています。 よろしければぜひご登録ください。

2026年5月11日

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心理的安全性を育むマネジメント&チームビルディング3つの原則

心理的安全性を高めるには、昭和型マネジメントからの脱却が不可欠。叱らない・自慢しない・褒めるの3原則で、リーダーの変容が組織文化をつくる方法を解説。

河原あずさ(Potage代表)

目次 心理的安全性が低い職場の特徴:チームビルディングが機能しない理由 形骸化した1on1とマネジメントを変える「対話」の技術 EQ(感情知能)が育む共感型リーダーシップ:弱さをさらけ出す強さ 組織文化の醸成は「小さなモヤモヤ」の解消から始まる  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織の中でそれらを混ぜ合わせることで新しい価値を創出する。そんな想いでコミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。  さて、この春、新しい試みをはじめることにしました。 心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと一緒に、音声配信番組を立ち上げます。その名も「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」です。ナビゲーターにはきのせまりさんを迎え、3人でお届けします。  多くの企業様からご相談をいただく中で、最も多い悩みの一つが「社内のチームづくり」です。制度を整え、ツールを導入しても、なぜかチームが機能しない。そこには常に、人の「感情」と「関係性」の課題が横たわっています。  本放送は3月からですが、先日収録したプレ放送の中で取り上げたお悩み相談が、現代の組織が抱える課題をあまりにも鮮明に映し出していたため、今回はその内容を深掘りします。「チームビルディング」「EQ」「心理的安全性」といったキーワードを軸に、優しそうに見えて実は冷たい職場の正体と、その解決策について考えてみたいと思います。 心理的安全性が低い職場の特徴:チームビルディングが機能しない理由  シンクリ!のプレ放送の収録にあたり、事前に募集したお悩みの中に、非常に考えさせられる投稿がありました。 「仕事がないので早く帰っています。『お手伝いすることはありますか?』と聞いても『いいよ』と言われるので、先輩たちは帰らないけれど、自分は多少の罪悪感を持ちつつ先に帰ります」  一見すると、無理に仕事を押し付けない「優しい職場」に見えるかもしれません。しかし、投稿者の方はそこに「罪悪感」と「モヤモヤ」を感じています。  ひょんちょるさんは放送の中で、この状況を「助け合いが生じていない状態」だと指摘しました。 心理的安全性が高いチームには、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」という4つの因子が必要だと言われていますが、この職場では、先輩たちが仕事を抱え込み、チーム内でのタスクのシェア=助け合いが機能していないのです。  ここから透けて見えるのは「チームビルディング」における構造的な欠陥です。 本来のチームビルディングとは、単に仲良くなるためのレクリエーションを行うことではありません。業務プロセスの中で、「誰が何を得意とし、今どのような状況にあるか」を可視化し、相互補完関係を作ることこそが本質なのです。  「帰っていいよ」という言葉は、優しさのように見えて、実は「あなたには頼まない」「自分でやったほうが早い」という、見えない拒絶の壁である可能性があります。そこには、真の意味での心理的安全性は存在しません。 形骸化した1on1とマネジメントを変える「対話」の技術  なぜ、先輩たちは仕事を後輩に渡せないのでしょうか。また、なぜ後輩は罪悪感を抱えたまま帰宅しなければならないのでしょうか。ここには「マネジメント」と「1on1」の質の課題が見え隠れします。  もし、この職場で機能する1on1が行われていれば、上司や先輩は「なぜ仕事を抱え込んでいるのか」を内省する機会を持てるはずです。また、後輩も「実は罪悪感を感じている」という本音を吐露できるはずです。  しかし、多くの現場で導入されている1on1は、「業務進捗の確認」だけの場になりがちで、形骸化しています。  必要なのは、管理としてのマネジメントではなく「対話型マネジメント」への転換です。 「対話」とは、単なるおしゃべりではありません。相手の背景や感情に深く耳を傾け、相互理解を深める技術です。   「なぜ自分は仕事を渡すことに抵抗があるのか?」   「後輩は今、どのような気持ちでチームを見ているのか?」  こうした問いを立て、対話を通じて解決策を探るプロセスこそが、現代のマネジメントには求められています。 EQ(感情知能)が育む共感型リーダーシップ:弱さをさらけ出す強さ  では、具体的にどうすればこの膠着状態を打破できるのでしょうか。 放送の中で私たちがたどり着いた一つの解は「弱みの自己開示」でした。ここで重要になるのが「EQ(感情知能)」です。  EQとは、自分や他者の感情を理解し、適切に扱う能力のことです。 仕事を抱え込む先輩の心理には、「先輩として完璧でなければならない」「弱音を吐いてはいけない」という鎧があるのかもしれません。しかし、これからの時代に求められる「リーダーシップ」は、強さで引っ張るカリスマ型ではなく、共感と信頼で支えるサーバント型(支援型)です。  私が代表を務めるPotageでも、EQのトレーニングや検査を通じて、メンバー個々人の感情の癖や特性を可視化しています。 心理的安全性の高いチームを作るために最も効果的なのは、お互いの「弱み」や「苦手なこと」を共有することです。  「自分はここが苦手だから、助けてほしい」「あの人はここが苦手だから、自分がカバーしよう」  リーダーや先輩がまず自分の弱さをさらけ出す。これは、EQに基づいた高度な「コーチング」的アプローチでもあります。弱みを見せることは、恥ずかしいことではありません。むしろ、「あなたを信頼しているからこそ、自分の脆い部分を見せるのだ」という、強力な信頼のメッセージとなり、チームの結束を高めます。 組織文化の醸成は「小さなモヤモヤ」の解消から始まる  今回のお悩み相談にあったような「罪悪感」や「ちょっとした違和感」。 これを放置せず、対話のテーブルに乗せることができるかどうかが「組織文化」を醸成する分かれ道になります。  組織文化とは、経営理念という額縁の中にあるものではなく、日々のコミュニケーションの積み重ねの中に宿るものです。  もし、あなたがこの相談者さんと同じような状況にいるとしたら、勇気を出して「罪悪感を持っていること自体」を上司や同僚の皆さんに伝えてみてください。 「皆さんが残っているのに、自分だけ先に帰ることに罪悪感を感じてしまっていて、もっとチームの役に立ちたいんです」と、自分なりのEQを発揮して、感情を伝えてみるのです。  その小さな対話のきっかけが、形骸化した関係性にヒビを入れ、真に心理的安全性あふれるチームへと変革する第一歩になるはずです。  新番組「シンクリ!」では、こうした現場のリアルな悩みに対し、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のコミュニティ・EQの知見を掛け合わせて、解決のヒントを探っていきます。  3月から本放送がスタートします。 「こんなことで悩んでいるのは自分だけじゃないか」 そう思っているあなたのモヤモヤこそが、誰かのチームを救うヒントになるかもしれません。ぜひ、番組へのお便りもお待ちしています。  音声配信という、文字よりも温度の伝わる場所で、皆さんと「つながれる」ことを楽しみにしています。番組に関する最新情報はLINEでも配信していきます。よければこちらも、のぞいてみてください。

2026年3月11日

最終更新日:

心理的安全性を高める「対話型マネジメント」の本質とは?EQとチームビルディングで読み解く「帰れない職場」の正体

心理的安全性が低い職場の「優しそうで冷たい」構造を解説。対話型マネジメントとEQを軸に、チームの助け合いを機能させるヒントを探ります。

河原あずさ(Potage代表)

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