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記事の3行要約 サッカーの「ポゼッション率」を会話に応用すると、チームの心理的安全性が可視化できる。 理想は全員の発言量が均等になること。そこから「違い」を活かすチームビルディングが始まる。 強いチームは、凸凹を打ち消すのではなく、組み合わせて新しい絵を描いている。 「ポゼッション率」という視点がチームビルディングを変える  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  ワークショップやチームビルディングの現場に立つ中で、私が大事にしている指標があります。それが「会話のポゼッション率」です。  ポゼッション率といえば、サッカーを思い浮かべる方が多いかもしれません。90分の試合の中で、どちらのチームがどれくらいボールを保持していたかを示す数値です。浦和レッズが53%、鹿島アントラーズが47%。そんな具合に、ゲームの主導権がどちらにあったかを読み解くための指標として使われています。  この概念を、チーム内の会話に転用してみます。すると、チームビルディングにおいて見落とされがちな、とても大事なことが浮かび上がってきます。 心理的安全性の高いチームは「25%ずつ」で話している  ここで皆さんに問いかけてみたいのですが、4人のチームで会話をしているとき、理想的なポゼッション率の配分って、どれくらいだと思いますか。  答えは、25%ずつです。  これは私の現場感覚だけでなく、心理的安全性の研究からも裏付けられていることです。心理的安全性の高い組織では、メンバー間の発言量がほぼ均等になっているという特徴がある。逆にいえば、発言量に大きな偏りがあるチームは、心理的安全性が低い状態にある可能性が高いということです。  たとえば、リーダー格のAさんが全体の70%を話していて、残りの3人が10%ずつ。あるいは、経験年数の近い2人が合わせて80%、若手2人で20%。こうした光景は、どの職場でも見覚えがあるのではないでしょうか。  声の大きい人に発言が偏ると、何が起きるでしょうか。発言量の多い人は「いい議論ができている」と感じているかもしれません。しかし発言量の少ない人は、本音を言えないまま、顔色をうかがい、忖度し、「まとまっといたほうが楽だな」と口をつぐんでいる ......そこには、表面化しにくい意識のギャップが横たわっています。この「気持ちよく話しているつもりの人」と「黙っている人」のあいだにある溝こそが、チームの一体感を蝕む原因になっているのです。 均等な発言から始まる「違いを活かす」チームづくり  では、 心理的安全性の高いチームは何が違うのか。それは、メンバー同士がお互いの発言量を意識し、自然と均等になるように配慮しているという点です。  Aさんが話し始めて、少し長くなったなと感じたら、「ところでBさんは、この件についてどう思いますか?」と振る。Bさんの意見を聞いたら、「Cさんはどうですか?」と広げていく。こうして全員がテーブルの上に自分の考えを並べることで、はじめてチームとしての合意形成が動き出すのです。  ここで 重要なのは、全員が同じ意見を持つことではありません。むしろ大事なのは、それぞれの「違い」が見えるようになること です。  チームビルディングにおいて、違いは排除すべきものではなく、活かすべきものです。全く同じ人間が4人集まっても、チームはうまく機能しません。なぜなら、価値というものは「違い」から生まれるからです。  パズルのピースを想像してみてください。ひとつひとつのピースには、出っ張っているところと凹んでいるところがあります。これはそのまま、一人ひとりの得意と苦手に言い換えられる。 出っ張りと凹みが噛み合うからこそ、ピースは組み合わさり、一枚の絵が完成する のです。 ファシリテーションは「凸凹を見つけて組み合わせる」技術  僕がチームビルディングの現場で心がけているのは、まず会話のポゼッション率を均等に近づけること。そしてその次に、一人ひとりの「凸凹の形」を見極めていくことです。  均等に発言できる場をつくると、それぞれのメンバーがどんなことに関心を持っていて、何を得意とし、何に苦手意識を持っているかが、自然と見えてきます。年次も役職も関係なく、対等な立場で意見を交わせる状態。それがあってはじめて、メンバーの凸凹の輪郭がはっきりしてくるのです。   ファシリテーションとは、単に会議を進行することではありません。発言のバランスをデザインしながら、メンバーそれぞれの個性を引き出し、その組み合わせを見つけていくプロセス です。誰かの凹みを、別の誰かの出っ張りで補う。その掛け合わせの中から、 一人では描けなかった絵が浮かび上がってくる。  僕はこれを「コミュニティ型組織開発」と呼んでいますが、 その根底にあるのは、多様な「個」が打ち消しあうのではなく、溶け合うことで新しい価値を生み出すという考え方です。 心理的安全性は、その溶け合いが起きるための土壌にほかなりません。 あなたのチームのポゼッション率は、どうなっていますか?  ここまで読んでくださった方に、ひとつ試していただきたいことがあります。次のミーティングで、チームメンバーの発言量を意識して観察してみてください。  誰がどれくらい話していますか。話していない人はいませんか。その人は、本当に「話すことがない」のでしょうか。それとも「話せない空気」があるのでしょうか。  会話のポゼッション率は、チームの健康状態を映し出すバロメーターです。数値化する必要はありません。ただ、意識を向けるだけで、見えてくるものがあるはずです。  そして、 もしポゼッション率に偏りがあると感じたら、「ところで、〇〇さんはどう思いますか?」というひと言を投げかけてみてください。その小さな問いかけが、チームの心理的安全性を育てる最初の一歩になるかもしれません。  強いチームは、違いを恐れません。違いを見つけ、違いを面白がり、違いを活かして、まだ見ぬ絵を一緒に描いていく。その出発点は、全員が安心して声を出せる場をつくることにあります。  あなたのチームには、まだ聞こえていない声が眠っているかもしれません。その声に耳を傾けることが、チームの新しい可能性を拓くきっかけになるのだと、僕は信じています。

2026年3月1日

最終更新日:

会話のポゼッション率で高まるチームの心理的安全性

心理的安全性を高める鍵は「会話のポゼッション率」。発言量の偏りを見直し、違いを活かすチームビルディングの具体策を解説。

河原あずさ(Potage代表)

記事の3行要約 アイスブレイクは単なる場つなぎではなく、チームビルディングの成否を左右する「最初の設計図」。 心理的安全性は、参加者が「自分らしさ」を安心して表現できる、小さな成功体験の積み重ねから育まれます。 スマホのカメラロールや鞄の中身といった、身近なものを使った自己紹介ワークが、凍った場の空気を溶かす鍵になります。  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  ワークショップやチームビルディングの現場に立つと、いつも思うことがあります。それは 「最初の数分間で、いいアウトプットが出るかはほとんど決まる」 ということです。  初対面のメンバーが集められた研修やワークショップを想像してみてください。参加者たちは緊張した面持ちで席につき、お互いの様子をうかがいながら、誰も口を開かない――会場には、まるで凍りついたような空気が漂っています。「隣の人と自己紹介してください」と振ったものの、何を話せばいいかわからず沈黙が広がってしまう……そんなモヤモヤした経験をお持ちの方も、少なくないのではないでしょうか。  今回は、私がプロのファシリテーターとして数多くの現場で実践してきたアイスブレイクのアプローチを軸に、「心理的安全性」と「チームビルディング」の観点から、なぜ最初の5分がチームづくりの命運を分けるのかを深掘りしてみたいと思います。 凍りついた場の空気は最初の5分で決まる  場が凍り付いた状態で「さあ、アイデアを出しましょう」と号令をかけても、実のある議論が生まれるはずがありません。チームビルディングにおいて、最初にやるべきことは、この凍りついた空気を丁寧に溶かしていくこと、いわゆる「アイスブレイク」です。  ところが、このアイスブレイクというプロセス、軽視されがちなわりに、実はとても奥が深いんです。うまくいけば場の空気は一変しますが、失敗すると氷はむしろガチガチに固まってしまいます。これだと「アイス・メーカー」ですよね(笑)。 いきなり本題に入らないことが、心理的安全性を育む「最初の一歩」になる  では、どうすればこの氷を上手に溶かせるでしょうか。  ここで鍵になるのが「心理的安全性」です。どんな発言をしても自分が脅かされない、むしろ発話することがポジティブに受け止められるという安心感のことを言います。この感覚がなければ、人は本音を語れませんし、創造的な議論も生まれません。   ポイントは、いきなり仕事の話や本題に入らないことです。  仕事に絡めた自己紹介をさせると、参加者は「ちゃんとしたことを言わなければ」と身構えてしまいます。肩肘を張った発言は共感を生みにくく、結果として場はさらに硬直していきます。だからこそ、最初は本題から少し離れたところで「自分自身」を開いてもらうがあります。そのための仕掛けが、アイスブレイクワークです。 カメラロールが映し出す「その人らしさ」  僕が現場で実践しているアイスブレイクワークを、ひとつご紹介します。  やり方はシンプルです。まず、参加者全員にスマートフォンを取り出してもらいます。そしてカメラロールを開いて 「自分を最もよく表していると思う写真を一枚選んでください」 と伝える。選んだら、グループ内でその写真について1分間プレゼンしてもらう。たったそれだけです。  例えば、僕だったら、年子の息子と娘と一緒に写った家族写真を見せながら、「実は年子育児をしながら起業しているんです」と話すかもしれません。すると周りから「え、大変じゃないですか」と声がかかり、自然と会話が生まれていきます。  別の方は、自作のパエリアの写真を選ぶかもしれません。「え、これ自分で作ったんですか? レストランかと思いました」と驚きの声が上がって、また新しい対話が始まります。  このワークが便利なのは「誰でもできる」ということです。スマホは誰もが持っていて、カメラロールにはその人の日常や価値観が詰まっています。特別な準備もいらなければ、話す内容に正解も不正解もありません。だからこそ、人は自然と自分を開くことができるのです。  もうひとつの応用編として 「鞄の中から自分が大事にしているアイテムをひとつ取り出して、それについてプレゼンしてください」 というワークもあります。高級なボールペンを出す人もいれば、iPadのペンシルを取り出して「大事なのになくなりやすいんです」と笑いを誘う人もいます(僕です)。  そうした小さな自己開示を通じて、お互いへの「興味のベクトル」が交差し始める。この交差が大事なのです。 チームビルディングは「共感の交差点」から始まる   なぜ、このような自己紹介ワークが、チームビルディングにおいて有効なのかというと、共感が心理的安全性の土台になるからです。  「分かる」「自分もそうだ」という小さな共感の積み重ねが、「この場では自分を出していいんだ」という安心感を育てていきます。写真やアイテムを通じた自己紹介は、言葉だけの自己紹介よりも、はるかに「その人らしさ」が伝わりやすい……だからこそ共感が生まれやすく、場の温度が上がっていくのです。  みんながワイワイガヤガヤ話しながら、お互いのことを肯定し合える時間、いわゆる「ワイガヤ」の状態をまず作ることが、その後の議論やアイデア出しの質を大きく左右します。  ここで少し理論的な話を補足すると、 MITのダニエル・キム教授が提唱した「成功の循環モデル」では、組織の成果は「関係の質」から始まるとされています。 関係の質が高まれば、思考の質が上がり、行動の質が変わり、結果の質が向上する。そしてその「関係の質」を最初に耕す場こそが、アイスブレイクなのです。 場をつくる人が、まず自分を開く  最後に、ひとつだけ付け加えておきたいことがあります。  アイスブレイクで場の空気を変えるためには、ファシリテーター自身がまず自分を開くことが大切です。自己紹介ワークをするなら、最初に自分から写真を見せ、自分の話をする。完璧な自己紹介である必要はありません。むしろ、少し隙のある、人間味のあるエピソードのほうが、場の空気は柔らかくなります。「あの人も完璧じゃないんだ」という安心感が、参加者の肩の力をそっと抜いてくれるのです。  偉そうに語ってしまいましたが、僕自身も、アイスブレイクがうまくいかず空気がさらに凍りついてしまった経験が何度もあります。「あの振り方は違ったな」「もう少し自分から開けばよかったな」と、反省とアップデートの連続です。  「場をつくる」というのは、テクニックだけの話ではないのかもしれません。その場にいる一人ひとりが、少しだけ自分を開いてみる。 その勇気の連鎖が、凍りついた空気を溶かし、チームに温かい流れを生み出していく。アイスブレイクは、その流れの最初の一滴なのです。  あなたのチームの「最初の5分」は、どんな風に始まっていますか?​​​​​​​​​​​​​​​​

2026年3月1日

最終更新日:

場の空気は最初の5分で決まる!心理的安全性を生むアイスブレイク術

アイスブレイクは単なる場つなぎではなく、チームビルディングの成否を左右する「最初の設計図」。心理的安全性は、参加者が「自分らしさ」を安心して表現できる、小さな成功体験の積み重ねから育まれます。スマホのカメラロールや鞄の中身といった、身近なものを使った自己紹介ワークが、凍った場の空気を溶かす鍵になります。

河原あずさ(Potage代表)

記事の3行要約 心理的安全性が「ある」と即答するチームほど、実は忖度に支配された「偽の心理的安全性」に陥っている可能性があります。 声の大きい人への同調が瞬時に走る組織では、本音の対話が封じられ、マネジメントの課題が見えなくなっていきます。 EQをベースにした自己開示と率直な対話の積み重ねが、偽物を本物の心理的安全性へと変えていく鍵になります。  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  EQをベースとしたチームビルディングや組織開発の研修に立つと、いつも気になることがあります。「皆さんのチームには心理的安全性がありますか?」と問いかけたとき、受講生の多くが 「うちはあると思います」 と答えるのです。  ところが、その研修を依頼してくださった人事部門やマネジメント層の方々からは、 「うちの組織は心理的安全性がなくて......」 という声が聞こえてくるケースがあります。現場と経営層で、認識がまるで違う.....この不思議な現象に、僕は何度も出会ってきました。  今回は、この「心理的安全性のパラドックス」について、研修やチームビルディングの現場で見えてきたことをもとに、深掘りしてみたいと思います。 心理的安全性が「ある」と答えるチームほど危ない理由  心理的安全性という言葉は、ここ数年で一気に広まりました。人事やマネジメントに関わる方なら、一度は耳にしたことがあるでしょう。メンバーの方々も「心理的安全性がね.....」と口にする場面が増えてきたかもしれません。言葉が浸透すること自体は、とてもいいことだと思います。  ただ、僕がEQを軸にした研修の現場に立って実感するのは、この言葉が広がれば広がるほど、ある種の「誤解」もまた広がっているということです。  研修でグループワークをしていると、こんな場面に遭遇します。「心理的安全性、皆さんのチームにはありますか?」と聞くと、まず声の大きい方が口を開きます。「いやあ、うちはあるよね。僕なんか職場で言いたいこと言ってるもん」。すると、周りのメンバーがすっと空気を読んで、「そうですよね、うちのチームは心理的安全性高いですよね」と同調していくのです。  一見、和やかなやりとりに見えます。でも、僕はこの瞬間にいつも立ち止まるのです。これは本当に心理的安全性が高い状態なのだろうか、と。 忖度が生み出す「偽の心理的安全性」のメカニズム  ここで起きていることを、もう少し解像度を上げて見てみましょう。  声の大きい人が「心理的安全性がある」と宣言する。周囲はそれに対して、瞬時に忖度します。「いや、実は私はそう思わないんですけど」とは、言えないのです。言ったら場の空気が壊れるかもしれないし、その声の大きい人との関係にヒビが入るかもしれない。 だから、本音を引っ込めて、表面的に同意してしまいます。  これは、心理的安全性の真逆です。   心理的安全性とは、何を発言しても自分が脅かされない状態のことを言います。 つまり、「自分は本音ではこう思う」ということを、安心して口にできる環境です。もし本当に心理的安全性が高いチームであれば、誰かが「うちは心理的安全性がある」と言ったとき、「いや、でも前にこういうことがあって、私はちょっと課題があると思っていたんです」と率直に返せるはずなのです。  つまり、逆説的なのですが、心理的安全性がある種低い組織であればあるほど、「心理的安全性がある」と答える傾向が強いのです。僕はこれを 「偽の心理的安全性」 と呼んでいます。  そして、この現象は日本の組織において非常に多く見られるのではないかと思っています。 心理的安全性という言葉が流行すればするほど、「なんとなくみんなで仲良くすればいい」「波風を立てないほうがいい」という方向に、むしろ引っ張られている組織さえあります。 しかしそれは心理的安全性ではなく、単なる「表面的な穏やかさ」にすぎないのです。 マネジメント研修で見えてくる「本音と建前」の溝  僕がこの「偽の心理的安全性」を強く実感するのは、マネジメント研修の場面です。  研修を依頼してくださる人事部門の方々は、たいてい組織の課題をよく見ています。「うちの会社は、表面的にはうまくいっているように見えるけれど、本音で対話できていないんです」「会議では誰も反対意見を言わないんです」。そんな相談を受けてから研修に臨むわけですが、いざ現場の皆さんに聞くと「うちは心理的安全性が高い」と返ってきます。  この認識のギャップこそが、まさに「偽の心理的安全性」が存在していることの証拠なのだと思います。 現場の皆さんは、自分たちが忖度をしていることに気づいていません。あるいは、気づいていても「それが普通だ」と思っています。だからこそ、外の視点が入ったときに初めて、その構造が浮かび上がってくるのです。 EQが「偽」を「本物」に変えるアプローチになる  では、この「偽の心理的安全性」をどう解きほぐしていけばいいのか。  僕が研修やチームビルディングの現場で大切にしているのが、 EQ(感情知能指数)を使ったアプローチです。EQとは、自分や他者の感情を正しく認識し、それを適切にマネジメントする力のこと。 心理的安全性を本当の意味で高めるためには、まず自分自身の感情に気づくことが出発点になります。  たとえば、「うちのチームは心理的安全性がある」と言われたとき、自分の中に小さな違和感がなかったかどうか。「本当はそう思っていないけど、ここで言うのは面倒だな」「反論したら場の空気が悪くなるかも」。そんな感情の揺れに気づけるかどうかが、 偽の心理的安全性を見抜く最初のセンサーになります 。  EQを軸にしたチームビルディングでは、この「自分の本当のところはどうなの?」という自己開示を丁寧に促していきます。いきなり「本音を言いましょう」と号令をかけても、人は本音を語れません。それこそ心理的安全性がないからです。だからこそ、小さな自己開示の積み重ねから始めます。自分の感情に丁寧に向き合い、それを少しずつ言葉にしていきます。そのプロセスの中で、チームの中に本当の意味での信頼関係が育まれていくのです。 あなたのチームの心理的安全性は「本物」ですか?   心理的安全性という概念は、正しく理解され実践されれば、チームを大きく変える力を持っています。ただ、言葉だけが先行して、中身が伴わないまま「うちは大丈夫」と思い込んでしまうことほど、怖いことはありません。  僕自身も日々のコミュニケーションの中で、無意識に忖度をしてしまうことがあります。「ここは本音を言うべきだったな」と後から振り返って気づく場面は、正直に言えば少なくありません。だからこそ、 まずは自分自身の感情に正直になること、そしてEQを通じて客観的に自分の内面と向き合い続けることが、マネジメントの現場でも、日常のチームづくりにおいても大事なのだと感じています 。  あなたのチームでは、メンバーが本音で語り合えていますか。誰かの一声に、無意識に空気を合わせてしまっていることはないでしょうか。もしほんの少しでも心当たりがあるなら、それは「偽の心理的安全性」に向き合うための、最初の一歩なのかもしれません。

2026年3月1日

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「偽の心理的安全性」に要注意!チームの忖度が隠す本当の課題

心理的安全性が「ある」と即答するチームほど、実は忖度に支配された「偽の心理的安全性」に陥っている可能性があります。

河原あずさ(Potage代表)

記事の3行要約 昭和型の上下関係を押し付ける マネジメント から脱却し、メンバーを対等に扱うことこそが 心理的安全性 の基盤になります。 起業家支援の第一人者から学んだ「叱らない(問いかける)」「自慢しない(未来にフォーカス)」「褒める(個性を肯定する)」の3原則が チームビルディング の鍵です。 心理的安全性は日々の小さなコミュニケーションの積み重ねであり、まずはリーダー自身が振る舞いを変容させることが組織文化を創ります。  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。  数年前の話になるのですが、シリコンバレーで女性起業家の支援をされている堀江愛利さんからのお誘いで、ワシントンDCを拠点に起業家支援に尽力されている久野祐子先生のお話を伺う機会に恵まれました。  久野先生はご自身も起業家として大成功を収められた後、現在は次世代の支援に回られている素晴らしい方です。そのセッションの中で、すべてのチームに関わる人、特にマネジメント層に深く刻んでほしい「チームとの向き合い方の原則」の話がありました。  今回は、この教えを私なりに噛み砕き、これからの時代の「チームビルディング」 と 「心理的安全性」の観点から、なぜこの3つが組織の命運を分けるのかを深掘りしてみたいと思います。 「昭和のマネジメント」がチームを破壊する理由  日本の企業文化を振り返ると、かつての理想的な上司像とは「背中で語る」「ダメなことは厳しく叱責する」「飲み会で武勇伝を語る」「安易に褒めず、ハングリー精神を煽る」といったものでした。 長く美徳とされてきた、いわゆる「昭和のコミュニケーション」です。  しかし、今の時代にこの手法をそのまま持ち込むとどうなるでしょうか。 良かれと思ってやっている指導が、受け手からは「ただのマウント取り」や「押し付け」と変換されてしまいます。結果として、メンバーは萎縮し、自発的な提案は消え、組織の風通しは最悪の状態に陥ります。  では「令和のマネジメント」において最も重要なコミュニケーションはどのようなものでしょうか。  まず基礎となるのは「相手を対等なメンバーとして認めること」です。  役職は単なる「役割」の違いであり、人間としての上下ではありません。この対等なスタンスこそが、心理的安全性を醸成するための絶対条件なのです。今回の記事では久野さんが提示した「3つの原則」を軸に、マネジメント層が「対等な関係性」を築き、メンバーのポテンシャルを最大化するための強力なOS(オペレーティングシステム)となる「令和のマネジメントスタイル」について考えたいと思います。 心理的安全性を高める3つのコミュニケーション変革  久野さんがお話していた「心理的安全性あふれるコミュニケーションの原則」は以下の3つでした。 1. 叱らない:「正解の押し付け」から「問いかけ」への転換  「叱らないで、どうやって人を育てればいいのか?」と不安に思う方もいるでしょうが、自分の意見や正解を押し付けるのではなく、「問いかける」ことが、上司部下との対等な関係性を築く上では大事になります。  例えば、部下のパフォーマンスが期待に届かない時「なんでできないんだ?」と過去の失敗を詰めるのは、心理的安全性を著しく下げる行為です。 そうではなく、「どうしたらもっと良くなると思う?」「パフォーマンスを上げるためには、チームとして何が必要だろう?」と問いかけることで、相手の思考を促すことが重要なのです。  そして、相手が考え抜いた仮説を否定せず「じゃあ、まずはそれでやってみよう」と背中を押す。失敗しても受け止める度量を見せることも大事です。この「任せて、見守る」プロセスが、自律駆動型のチームビルディングには不可欠なのです。 2. 自慢しない:「過去の栄光」ではなく「未来のゴール」にフォーカスする  自慢話というのは、基本的に「過去の成功体験」への執着です。しかし、激しい変化に直面している現代のチームにとって重要なのは、過去の栄光ではなく「未来のゴール」です。  「俺の若い頃はこうやって乗り越えた」と語るのではなく、「今、私たちはどんなゴールに向かっているのか」「その未来を実現するために、今あるリソースで誰がどう振る舞うべきか」。マネジメント層にとって、常にこの「未来」と「現在」に視点を意識し続けることが、より重要な世の中になっているのです。  (未来に向けた建設的な対話に集中していれば、そもそも自慢話をしている余裕などないはずですよね?) 3. 褒める:「個性の肯定的な言い換え」を組織の文化にする  昔アメリカに住んでいた頃、アメリカ人はなんてポジティブなんだと日々痛感していました。特に感じていたのは、彼・彼女らが日常的に使う「あいづち」です。Goodにはじまり、Beatiful!Perfect!Awesome!I like it!と、あらゆるあいづちが肯定的で、日本人的な感覚だと、すごく不思議な気持ちだったのを覚えています。自分も使わないとなじめないので、日々使っていたんですけどね。けど、まるで自分が自分でないような感覚だったのを、未だに覚えています。  僕のように、アメリカ人のようにストレートに褒めちぎるのは、日本人の感覚だと少し気恥ずかしいと思うかたもいるかもしれません。そこでおすすめなのが「相手の特徴をポジティブな表現で捉え直す(リフレーミングする)」という技術です。  例えば、会議で発言が少ないメンバーに対し「寡黙だね(=もっと喋れ)」とネガティブに捉えるのではなく「じっくり物事を深く考えられる人だね」と言い換えてみる。少し個性が強いメンバーには「自分を素直に表現できる人だね」と伝える。  このように、個人の特性を肯定的に受け取る言葉の習慣化が、結果として相手を「認める(褒める)」ことにつながります。お互いの違いをポジティブに受け入れ合うことこそが、強いチームの証です。 日々の振る舞いが、チームの文化を創る  久野先生の振る舞いからは、自分が受けた恩を次の世代へ惜しみなく渡していく、シリコンバレーの「ペイ・フォワード(恩送り)」の精神を強く感じました。  心理的安全性は、立派なスローガンを掲げたからといって生まれるものではありません。日頃のコミュニケーションの、ほんの小さな改善の積み重ねから生まれます。新しく入ってきた人は、古参のメンバーやマネージャーの背中を見て育ちます。だからこそ、まずは組織を率いるリーダーから、「叱らない、自慢しない、褒める」という振る舞いへと変容していく必要があるのです。  偉そうに語ってしまいましたが、僕自身も、過去の事例を熱を入れて説明するうちに、意図せず武勇伝のように聞こえてしまっていないか、とハッとすることがあります。できるだけ謙虚に、フラットに物事を伝えるよう、日々反省とアップデートの連続です。  マネジメントは、終わりのない旅のようなものです。だからこそ、読者の皆さんと一緒に、これからも対等で温かい、そして成果を生み出すコミュニケーションを磨き続けていければと思います。

2026年3月1日

最終更新日:

心理的安全性を育むマネジメント&チームビルディング3つの原則

心理的安全性を高めるには、昭和型マネジメントからの脱却が不可欠。叱らない・自慢しない・褒めるの3原則で、リーダーの変容が組織文化をつくる方法を解説。

河原あずさ(Potage代表)

心理的安全性とEQを軸にした「対話型マネジメント」で、形骸化した1on1やチームビルディングの課題を根本から解決へ導きます。 「優しいけれど若手が育たない」職場の正体とは?金亨哲氏(ZENTech)との新番組「シンクリ!」から紐解く、本質的な組織文化の変革論。 弱みの自己開示こそが最強のリーダーシップ。明日から使えるEQ・コーチング技術と、罪悪感を超える信頼関係の築き方を河原あずさが解説します。  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織の中でそれらを混ぜ合わせることで新しい価値を創出する。そんな想いでコミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。  さて、この春、新しい試みをはじめることにしました。 心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと一緒に、音声配信番組を立ち上げます。その名も 「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」 です。ナビゲーターにはきのせまりさんを迎え、3人でお届けします。  多くの企業様からご相談をいただく中で、最も多い悩みの一つが「社内のチームづくり」です。制度を整え、ツールを導入しても、なぜかチームが機能しない。そこには常に、人の「感情」と「関係性」の課題が横たわっています。  本放送は3月からですが、先日収録したプレ放送の中で取り上げたお悩み相談が、現代の組織が抱える課題をあまりにも鮮明に映し出していたため、今回はその内容を深掘りします。「チームビルディング」「EQ」「心理的安全性」といったキーワードを軸に、優しそうに見えて実は冷たい職場の正体と、その解決策について考えてみたいと思います。 心理的安全性が低い職場の特徴:チームビルディングが機能しない理由  シンクリ!のプレ放送の収録にあたり、事前に募集したお悩みの中に、非常に考えさせられる投稿がありました。 「仕事がないので早く帰っています。『お手伝いすることはありますか?』と聞いても『いいよ』と言われるので、先輩たちは帰らないけれど、自分は多少の罪悪感を持ちつつ先に帰ります」  一見すると、無理に仕事を押し付けない「優しい職場」に見えるかもしれません。しかし、投稿者の方はそこに「罪悪感」と「モヤモヤ」を感じています。  ひょんちょるさんは放送の中で、この状況を「助け合いが生じていない状態」だと指摘しました。 心理的安全性が高いチームには、「話しやすさ」「助け合い」「挑戦」「新奇歓迎」という4つの因子が必要だと言われていますが、この職場では、先輩たちが仕事を抱え込み、チーム内でのタスクのシェア=助け合いが機能していないのです。  ここから透けて見えるのは「チームビルディング」における構造的な欠陥です。 本来のチームビルディングとは、単に仲良くなるためのレクリエーションを行うことではありません。業務プロセスの中で、「誰が何を得意とし、今どのような状況にあるか」を可視化し、相互補完関係を作ることこそが本質なのです。  「帰っていいよ」という言葉は、優しさのように見えて、実は「あなたには頼まない」「自分でやったほうが早い」という、見えない拒絶の壁である可能性があります。そこには、真の意味での心理的安全性は存在しません。 形骸化した1on1とマネジメントを変える「対話」の技術  なぜ、先輩たちは仕事を後輩に渡せないのでしょうか。また、なぜ後輩は罪悪感を抱えたまま帰宅しなければならないのでしょうか。ここには「マネジメント」 と 「1on1」の質の課題が見え隠れします。  もし、この職場で機能する1on1が行われていれば、上司や先輩は「なぜ仕事を抱え込んでいるのか」を内省する機会を持てるはずです。また、後輩も「実は罪悪感を感じている」という本音を吐露できるはずです。  しかし、多くの現場で導入されている1on1は、「業務進捗の確認」だけの場になりがちで、形骸化しています。  必要なのは、管理としてのマネジメントではなく「対話型マネジメント」への転換です。 「対話」とは、単なるおしゃべりではありません。相手の背景や感情に深く耳を傾け、相互理解を深める技術です。   「なぜ自分は仕事を渡すことに抵抗があるのか?」   「後輩は今、どのような気持ちでチームを見ているのか?」  こうした問いを立て、対話を通じて解決策を探るプロセスこそが、現代のマネジメントには求められています。 EQ(感情知能)が育む共感型リーダーシップ:弱さをさらけ出す強さ  では、具体的にどうすればこの膠着状態を打破できるのでしょうか。 放送の中で私たちがたどり着いた一つの解は 「弱みの自己開示」 でした。ここで重要になるのが 「EQ(感情知能)」です。  EQとは、自分や他者の感情を理解し、適切に扱う能力のことです。 仕事を抱え込む先輩の心理には、「先輩として完璧でなければならない」「弱音を吐いてはいけない」という鎧があるのかもしれません。しかし、これからの時代に求められる「リーダーシップ」は、強さで引っ張るカリスマ型ではなく、共感と信頼で支えるサーバント型(支援型)です。  私が代表を務めるPotageでも、EQのトレーニングや検査を通じて、メンバー個々人の感情の癖や特性を可視化しています。 心理的安全性の高いチームを作るために最も効果的なのは、お互いの「弱み」や「苦手なこと」を共有することです。  「自分はここが苦手だから、助けてほしい」「あの人はここが苦手だから、自分がカバーしよう」  リーダーや先輩がまず自分の弱さをさらけ出す。これは、EQに基づいた高度な「コーチング」的アプローチでもあります。弱みを見せることは、恥ずかしいことではありません。むしろ、「あなたを信頼しているからこそ、自分の脆い部分を見せるのだ」という、強力な信頼のメッセージとなり、チームの結束を高めます。 組織文化の醸成は「小さなモヤモヤ」の解消から始まる  今回のお悩み相談にあったような「罪悪感」や「ちょっとした違和感」。 これを放置せず、対話のテーブルに乗せることができるかどうかが「組織文化」を醸成する分かれ道になります。   組織文化とは、経営理念という額縁の中にあるものではなく、日々のコミュニケーションの積み重ねの中に宿るものです。  もし、あなたがこの相談者さんと同じような状況にいるとしたら、勇気を出して「罪悪感を持っていること自体」を上司や同僚の皆さんに伝えてみてください。 「皆さんが残っているのに、自分だけ先に帰ることに罪悪感を感じてしまっていて、もっとチームの役に立ちたいんです」と、自分なりのEQを発揮して、感情を伝えてみるのです。  その小さな対話のきっかけが、形骸化した関係性にヒビを入れ、真に心理的安全性あふれるチームへと変革する第一歩になるはずです。  新番組「シンクリ!」では、こうした現場のリアルな悩みに対し、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のコミュニティ・EQの知見を掛け合わせて、解決のヒントを探っていきます。  3月から本放送がスタートします。 「こんなことで悩んでいるのは自分だけじゃないか」 そう思っているあなたのモヤモヤこそが、誰かのチームを救うヒントになるかもしれません。ぜひ、番組へのお便りもお待ちしています。  音声配信という、文字よりも温度の伝わる場所で、皆さんと「つながれる」ことを楽しみにしています。

2026年2月26日

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心理的安全性を高める「対話型マネジメント」の本質とは?EQとチームビルディングで読み解く「帰れない職場」の正体

心理的安全性とEQを軸にした「対話型マネジメント」で、形骸化した1on1やチームビルディングの課題を根本から解決へ導きます。 「優しいけれど若手が育たない」職場の正体とは?金亨哲氏(ZENTech)との新番組「シンクリ!」から紐解く、本質的な組織文化の変革論。 弱みの自己開示こそが最強のリーダーシップ。明日から使えるEQ・コーチング技術と、罪悪感を超える信頼関係の築き方を河原あずさが解説します。  Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織の中でそれらを混ぜ合わせることで新しい価値を創出する。そんな想いでコミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。  さて、この春、新しい試みをはじめることにしました。 心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと一緒に、音声配信番組を立ち上げます。その名も 「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」 です。ナビゲーターにはきのせまりさんを迎え、3人でお届けします。  多くの企業様からご相談をいただく中で、最も多い悩みの一つ...

河原あずさ(Potage代表)

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