「社長が怖い」と言われたら?心理的安全性とEQで変える組織づくりの第一歩
- 河原あずさと36.5編集部

- 5月14日
- 読了時間: 8分
【目次】
Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織の中でそれらを混ぜ合わせることで新しい価値を創出する。そんな想いで日々、コミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。
音声配信番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」、今回もお届けします。心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと、ナビゲーターのきのせさんと一緒に、リスナーの皆さんからいただいたお悩みに向き合っていく番組です。
今回はちょっと趣向を変えまして、相談者は......なんと僕自身です。副所長が所長に泣きつく回、とでも言いましょうか。
Potageという会社を始めて6期目。業務委託のメンバーも含めると10人ほどの規模になりました。人が増えてくる中で、それまで「僕がやったことのこぼれ球をメンバーが拾う」というスタイルで回していたものが、ちゃんとチームに向き合うマネジメントが求められるフェーズに変わってきた。もともとそういうマネジメントが苦手で会社を飛び出した口ですから、正直「これで大丈夫なのか」という不安がありました。
最近はスタッフから「あずさんってちょっと怖い」と言われることがあって。考え事をしながら話を聞いていると、つい部長面になってしまうらしいのです。外向きには明るいキャラクターで発信しているのに、社内ではそう見られているというギャップに、なかなか悩ましいものがありました。
そんな僕の悩みに、社長歴14年という大先輩であるひょんちょるさんがどう答えてくれたのか。今回はその内容をお届けします。
「あずさんが怖い」から始まった社長の悩み相談
今回相談したかったのは、「組織が大きくなる中で、社長としてのマネジメントをどう変えていけばいいのか」ということです。個人会社の延長でやっていたものが、10人規模になると、チームとしての組織づくりに正面から向き合わなければならない。中間管理職を置くほどの規模ではないけれど、社長が一人で全員を見るには限界があるという悩みです。
僕自身、もともとそういうマネジメントが苦手で会社を辞めて起業した人間です。だからこそ、「このままのやり方でいいのか」という不安があった。かといって、マネジメントを学べば解決するという単純な話でもない。組織文化をどう育てていくかという、もっと根本的な問いに向き合う必要が出てきました。
もう一つの悩みが、「あずさんってちょっと怖い」問題です。「外にいるときの社長は基本めちゃくちゃく頑張っているので、社内や家の中まであのテンションだと思わない方がいい」と、ひょんちょるさんが言いました。外向きには「ビジネス芸人」のようなテンションで場を盛り上げるけれど、本来は根暗なところがあることってありますよね。特に新しいメンバーにとっては、外向きの明るいあずさんしか知らないわけで、社内で真顔になっている姿を見たときに「怖い」と感じてしまうのは無理もないのかもしれません。
年齢を重ねるにつれて、意図せず「権威側」に回ってしまうというリーダーシップの悩みについても語り合いました。自分の中の「らしさ」と、外から求められる役割とのギャップ。EQの観点で言えば、自分の感情の特性を正しく理解し、それを周囲に開示できるかどうかが、リーダーシップの質を左右するのだと、お互いに確認し合えた瞬間でした。
心理的安全性の土台は「一人ひとりとの関係性の質」にある
ひょんちょるさんの最初のアドバイスは、非常にシンプルかつ本質的なものでした。「10人ぐらいの規模であれば、まず一人ひとりとの関係性を深めることをやりきる」。
大手企業でもよくあることだそうですが、「来年から1on1をやらなきゃいけない」という制度先行の形で始まる1on1は、関係性の土台がないまま進むので、メンバーにとっては「何を聞かれるんだろう」という緊張の時間でしかない。形骸化した1on1をいくら回数重ねても、メンバーが本音を引き出せる対話にはなりません。
大事なのは、制度の手前にある関係性の質です。ダニエル・キムさんの「成功の循環」でも語られている通り、関係の質が全ての起点になります。そこを飛ばして、いきなりマネジメントの「型」を入れても、組織文化は育たないのです。
ひょんちょるさんが重視するのは、サシで飲みに行けるか、ランチを一緒に食べられるかという、もっと手前にある関係性の質です。そういう質の関係性ができていると、メンバーは困ったときに自然とDMで「ちょっと困ってるんですけど」と連絡をくれるようになる。すると「怖い」という印象も自然に消えていく。心理的安全性の土台は、制度ではなく、こうした日常の対話の積み重ねの中にあるのです。
ひょんちょるさん自身も、出張先にメンバーがいたらすぐに飲みに誘うのだそうです。最近の大阪出張の際に、メンバーから「飲みに行きましょう」と連絡が来て、互いを知り合うきっかけになったというエピソードも。距離感が近づくと、耳が痛いフィードバックもしてくれるようになるし、社内の状況についてわからないことをちゃんと質問してくれる環境ができる。そうした関わりが自然と生まれるのが、関係性の質を高める大きなメリットです。
だからこそ、自分のキャラクターを忖度なしに知ってもらう時間が必要だと、ひょんちょるさんは指摘してくれました。ランチなどの場を通じて「自分はこんな人間なんだよ」と開示していく。それはまさに、自己開示の実践であり、チームの心理的安全性を高める対話型マネジメントの第一歩なのです。
フルリモート時代のチームビルディングに必要な「文化祭体験」
Potageはフルリモートの会社です。オンラインだとどうしてもアポイントが要件ベースになるし、阿吽の呼吸のようなものが作りづらい。この難しさについても、ひょんちょるさんに率直にぶつけてみました。ひょんちょるさんの会社ZENTechも実はフルリモートで始まった会社で、沖縄をはじめ各地にメンバーがいるそうです。
ひょんちょるさんが指摘したフルリモートの最大の課題は「最後の1割を完成させる瞬間の力強さがないこと」でした。企画やプロジェクトの9割までは一人でも進められるけれど、最後の1割が実は一番重い。その最後の詰めをみんなで一緒にやる体験を意図的に作ることが、組織の一体感を生むのだと。
僕自身、まとめる作業を一人でやってしまいがちなタイプでした。でもそこをあえてみんなのイベントにする。その感性が、最終的にチームの関係の質を高めるのです。
具体的には例えば、合宿やオフィスに集まる日を設けて「この日にみんなで完成させよう」という場をつくる。ひょんちょるさんはこれを「文化祭体験」と表現してくれました。年に1回でもいいから、お客さんに何かが届く瞬間をみんなで見る、みんなで作るという共有体験があると、チームの結束力はまったく違ってくる。ZENTechでは「心理的安全性アワード」というイベントが、まさにその文化祭体験の役割を果たしているそうです。
イベントやコミュニティの仕事を長くやってきた身として、フェイス・トゥ・フェイスの共同作業の熱量に勝るものはない、という原点に改めて立ち戻らされた思いです。特別なツールや大がかりなチームビルディング施策ではなく、「みんなで一つのものを完成させる」というシンプルな体験が、組織文化を育てる種になるのです。
自己開示こそがEQを活かしたリーダーシップの出発点
今回の放送は、僕自身が悩みを打ち明けるという、いつもとは少し違う回になりました。ひょんちょるさんが最後に「今日自体が自己開示の時間になっていますね」と言ってくれたのが印象的です。
ナビゲーターのきのせさんも「どういう場で、どういう感情を共にするかが大事。リアルに場を共有して、仮に知らない一面が出てきてもびっくりしないような関係性をつくること」と、まさに今回のポイントをまとめてくれました。
自分の弱さや悩みを開示すること。それは社長やリーダーにとっては勇気のいることかもしれません。でも、その開示こそが関係の質を高め、心理的安全性の土台をつくる。EQの観点で言えば、自分の感情を正しく認識し、それを適切に表現する力が、共感型のリーダーシップの出発点になるのです。
今回の放送を通じて見えてきたのは、明日からでも始められる3つの実践です。一つ目は、一人ひとりとの関係性を丁寧に深めること。二つ目は、自分のキャラクターを正直に見せること。そして三つ目は、年に一度でもいいから共同体験をつくること。どれも特別な制度やツールが必要なわけではなく、よりよい組織づくりの一歩として、すぐに実行できることばかりです。
「シンクリ!」では、こうした現場のリアルな悩みに対して、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のコミュニティ・EQの知見を掛け合わせて、解決のヒントをお届けしています。
「こんなことで悩んでいるのは自分だけかも」——そう思っている方のモヤモヤこそが、誰かのチームを救うヒントになるかもしれません。ぜひ番組へのお便りもお待ちしています。音声配信という、文字よりも温度の伝わる場所で、皆さんと「つながれる」ことを楽しみにしています。





