心理的安全性を育むマネジメント&チームビルディング3つの原則
- 河原あずさ(Potage代表)

- 2月14日
- 読了時間: 6分
更新日:2 日前

目次
Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。
数年前の話になるのですが、シリコンバレーで女性起業家の支援をされている堀江愛利さんからのお誘いで、ワシントンDCを拠点に起業家支援に尽力されている久野祐子先生のお話を伺う機会に恵まれました。
久野先生はご自身も起業家として大成功を収められた後、現在は次世代の支援に回られている素晴らしい方です。そのセッションの中で、すべてのチームに関わる人、特にマネジメント層に深く刻んでほしい「チームとの向き合い方の原則」の話がありました。
今回は、この教えを私なりに噛み砕き、これからの時代の「チームビルディング」と「心理的安全性」の観点から、なぜこの3つが組織の命運を分けるのかを深掘りしてみたいと思います。
「昭和のマネジメント」がチームを破壊する理由
日本の企業文化を振り返ると、かつての理想的な上司像とは「背中で語る」「ダメなことは厳しく叱責する」「飲み会で武勇伝を語る」「安易に褒めず、ハングリー精神を煽る」といったものでした。 長く美徳とされてきた、いわゆる「昭和のコミュニケーション」です。
しかし、今の時代にこの手法をそのまま持ち込むとどうなるでしょうか。 良かれと思ってやっている指導が、受け手からは「ただのマウント取り」や「押し付け」と変換されてしまいます。結果として、メンバーは萎縮し、自発的な提案は消え、組織の風通しは最悪の状態に陥ります。
では「令和のマネジメント」において最も重要なコミュニケーションはどのようなものでしょうか。
まず基礎となるのは「相手を対等なメンバーとして認めること」です。
役職は単なる「役割」の違いであり、人間としての上下ではありません。この対等なスタンスこそが、心理的安全性を醸成するための絶対条件なのです。今回の記事では久野さんが提示した「3つの原則」を軸に、マネジメント層が「対等な関係性」を築き、メンバーのポテンシャルを最大化するための強力なOS(オペレーティングシステム)となる「令和のマネジメントスタイル」について考えたいと思います。
心理的安全性を高める3つのコミュニケーション変革
久野さんがお話していた「心理的安全性あふれるコミュニケーションの原則」は以下の3つでした。
1. 叱らない:「正解の押し付け」から「問いかけ」への転換
「叱らないで、どうやって人を育てればいいのか?」と不安に思う方もいるでしょうが、自分の意見や正解を押し付けるのではなく、「問いかける」ことが、上司部下との対等な関係性を築く上では大事になります。
例えば、部下のパフォーマンスが期待に届かない時「なんでできないんだ?」と過去の失敗を詰めるのは、心理的安全性を著しく下げる行為です。 そうではなく、「どうしたらもっと良くなると思う?」「パフォーマンスを上げるためには、チームとして何が必要だろう?」と問いかけることで、相手の思考を促すことが重要なのです。
そして、相手が考え抜いた仮説を否定せず「じゃあ、まずはそれでやってみよう」と背中を押す。失敗しても受け止める度量を見せることも大事です。この「任せて、見守る」プロセスが、自律駆動型のチームビルディングには不可欠なのです。
2. 自慢しない:「過去の栄光」ではなく「未来のゴール」にフォーカスする
自慢話というのは、基本的に「過去の成功体験」への執着です。しかし、激しい変化に直面している現代のチームにとって重要なのは、過去の栄光ではなく「未来のゴール」です。
「俺の若い頃はこうやって乗り越えた」と語るのではなく、「今、私たちはどんなゴールに向かっているのか」「その未来を実現するために、今あるリソースで誰がどう振る舞うべきか」。マネジメント層にとって、常にこの「未来」と「現在」に視点を意識し続けることが、より重要な世の中になっているのです。
(未来に向けた建設的な対話に集中していれば、そもそも自慢話をしている余裕などないはずですよね?)
3. 褒める:「個性の肯定的な言い換え」を組織の文化にする
昔アメリカに住んでいた頃、アメリカ人はなんてポジティブなんだと日々痛感していました。特に感じていたのは、彼・彼女らが日常的に使う「あいづち」です。Goodにはじまり、Beatiful!Perfect!Awesome!I like it!と、あらゆるあいづちが肯定的で、日本人的な感覚だと、すごく不思議な気持ちだったのを覚えています。自分も使わないとなじめないので、日々使っていたんですけどね。けど、まるで自分が自分でないような感覚だったのを、未だに覚えています。
僕のように、アメリカ人のようにストレートに褒めちぎるのは、日本人の感覚だと少し気恥ずかしいと思うかたもいるかもしれません。そこでおすすめなのが「相手の特徴をポジティブな表現で捉え直す(リフレーミングする)」という技術です。
例えば、会議で発言が少ないメンバーに対し「寡黙だね(=もっと喋れ)」とネガティブに捉えるのではなく「じっくり物事を深く考えられる人だね」と言い換えてみる。少し個性が強いメンバーには「自分を素直に表現できる人だね」と伝える。
このように、個人の特性を肯定的に受け取る言葉の習慣化が、結果として相手を「認める(褒める)」ことにつながります。お互いの違いをポジティブに受け入れ合うことこそが、強いチームの証です。
日々の振る舞いが、チームの文化を創る
久野先生の振る舞いからは、自分が受けた恩を次の世代へ惜しみなく渡していく、シリコンバレーの「ペイ・フォワード(恩送り)」の精神を強く感じました。
心理的安全性は、立派なスローガンを掲げたからといって生まれるものではありません。日頃のコミュニケーションの、ほんの小さな改善の積み重ねから生まれます。新しく入ってきた人は、古参のメンバーやマネージャーの背中を見て育ちます。だからこそ、まずは組織を率いるリーダーから、「叱らない、自慢しない、褒める」という振る舞いへと変容していく必要があるのです。
偉そうに語ってしまいましたが、僕自身も、過去の事例を熱を入れて説明するうちに、意図せず武勇伝のように聞こえてしまっていないか、とハッとすることがあります。できるだけ謙虚に、フラットに物事を伝えるよう、日々反省とアップデートの連続です。
マネジメントは、終わりのない旅のようなものです。だからこそ、読者の皆さんと一緒に、これからも対等で温かい、そして成果を生み出すコミュニケーションを磨き続けていければと思います。





