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チームの心理的安全性を壊す「困ったちゃん」問題の処方箋 行動分析×EQで組織文化を変える

更新日:2 日前

チームの心理的安全性を壊す「困ったちゃん」問題の処方箋 行動分析×EQで組織文化を変える

【目次】


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 Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織の中でそれらを混ぜ合わせることで新しい価値を創出する。そんな想いでコミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。


 心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと一緒にお届けしている音声配信番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」。ナビゲーターのきのせまりさんを交えた3人で、リスナーの皆さんからいただいたお悩みに答えていく番組です。


 今回の放送で取り上げたのは、多くの職場で「あるある」と頷かれそうなお悩みでした。チームの心理的安全性を脅かす「困ったちゃん」にどう向き合うか。行動分析とEQという2つの切り口から、チームビルディングの実践的なヒントを探ります。



「なんで俺なんだよ」と叫ぶ同僚を行動分析で紐解く


 今回いただいたお便りは、こんな内容でした。


「仕事をアサインすると常に『なんで俺なんだよ』と大声で不満を口にする。常に文句を言いながら仕事をしているチームメンバーがいて、チームの心理的安全性が損なわれているように感じます」


 サラリーマン人生がそこそこ長い私としても、なんとも見覚えのある光景です。誰もが一度は心当たりがあるのではないでしょうか。いわゆるチームの中の「困ったちゃん」問題です。


 ひょんちょるさんは、こうした相談はクライアント企業でもよく耳にするといいます。ただし、同時に強調していたのは「個人にフォーカスして『この人が困ったちゃんだ』とレッテルを貼ることは避けたい」ということ。一方で、その人の存在によってチーム全体の心理的安全性が下がっているという事実に、マネジメントとしてしっかり向き合う必要があるとも語っていました。本人も悪気があるわけではなく、テンポや言葉の表現がずれているだけで周囲に悪影響を及ぼしてしまっている・・そういうケースが現場では少なくないのだそうです。


 そこでひょんちょるさんが提案したのが「行動分析」というアプローチです。これは、人の行動を「きっかけ」「行動」「見返り」という3つの要素に分解して分析するフレームワークです。「なんで俺なんだよ」と言う行動には、必ず「きっかけ」がある。この場合は仕事のアサインですね。そして行動の後には「見返り」がある。周囲が気を遣ってくれたり、話を聞いてくれたりすることが、本人にとっての見返りになっている可能性があるのです。


 であれば、その「見返り」の部分をデザインし直すことで、行動そのものを変えていける。不満を声に出しても周りが過剰に反応しない、あるいは別の望ましい行動に対してポジティブな見返りを与えるといった工夫をすることで、行動のパターンを変えていこうというわけです。これはマネジメントにおける非常に実践的なアプローチだと感じました。


 この話を聞いていて、私は子育てとの共通点を強く感じました。子どもがかまってほしくてかんしゃくを起こしたとき、そこで過剰に構ってしまうと、子どもは「こうすれば注目してもらえる」と学習してしまいます。かといって完全に放置すると別の問題が生じるので、バランスが難しい。ひょんちょるさんも「見返りが大きすぎると、またやればいいと学習してしまう。これは人間に限った話ではなく、俯瞰してみると動物全般に共通する行動原理です」と話していました。ポイントは、こうした構造を理解して、どのように向き合うか。感情論ではなく、行動の構造を冷静に見つめ直すという視点が、チームビルディングにおいても重要なのです。



EQの視点から感情のトリガーを理解する


 EQ(感情知能)の世界でも、似たアプローチがあります。感情が動くときには必ずトリガーがあり、人はその感情の動きをもとに特定の行動をとる。自分の感情の乱れを観察するときは自己分析を、他者の行動を理解するときは他者分析をする。そして、その人がどういう感情の動きをしているのかを観察・類推し、コミュニケーションのやり方を変えていく。ひょんちょるさんの行動分析と、私のEQアプローチは、実は非常に近いところにあるのです。


 ひょんちょるさんも「表面に出ている行動と、本人が内側で思っていることは違う可能性がある。だからこそ、まずは行動の部分を是正するアプローチが有効なのでは」と語っていました。「なんで俺なんだよ」と口にする方も、実際には「自分ばかりに負担がかかっている」という不安や不満を抱えているのかもしれない。行動とEQ(感情)、両面から捉えることで、リーダーシップやコーチングの精度が上がり、より立体的な理解が可能になるのだと思います。



トップの行動変化が組織全体を動かす


 放送の中で、ひょんちょるさんがとても象徴的なエピソードを共有してくれました。ある会社の役員の方が、部下が持ってきた10ページの提案書のうち、最初の1ページだけ読んで「分かった、こういうことだろう」と結論づけてしまう。残り9ページにはまったく違う内容が書いてあるのに、部下は「はい、そうです」としか言えない状態だったそうです。


 行動分析と研修を通じてこの課題に向き合ったところ、その役員の方はなんと自ら「これからは人の話を最後まで聞きます」と宣言。パソコンに「最後まで聞く」と書いたテープを貼り、実際に行動を変えたのだそうです。さらに、数百人規模の部門会議でも「今まで申し訳なかった。これからはちゃんと最後まで聞く」と公言されたとのこと。


 面白いのはその連鎖反応です。役員が最後まで聞くようになったことで、今度は部下たちが「10ページ全部読まれるなら、10ページ全部ちゃんと作らないと」と意識が変わった。上から行動が変わることで、組織全体のアウトプットの質が上がっていったというのです。


 これは、組織文化の変革における非常に重要な示唆を含んでいます。ボトムアップで頑張っている人はたくさんいるけれど、どこかでトップが変わらないと、やがて疲弊して諦めてしまう人が出てくる。トップの一つの行動変化が組織全体に与えるインパクトは、想像以上に大きいのです。ひょんちょるさんは「トップにどうやって伝えていくか、トップが変わることをどうデザインしていくかは常に意識している」と話していました。ミドルマネジメントやボトムの努力ももちろん大事ですが、トップダウンの変化をいかに仕掛けるかが、組織文化を変えるカギになるということですね。



不満を建設的な対話に変えるチームの行動規範づくり


 では、質問者の方のケースに戻りましょう。不満を言い続けるメンバーに対して、周囲のリアクションを変えていくことが第一歩です。ひょんちょるさんによれば、1回で学習は起きないので、1〜2ヶ月ほどその行動に対して、マネージャーや周囲が「違う反応を取り続ける」ことが大切。それでもなお同じ行動を続けるのは相当タフなケースで、多くの場合は周囲の反応が変わることで、本人も変化していくとのことでした。


 加えて重要なのが、チームとしての行動規範を明確にすることです。ひょんちょるさんはスポーツの例を挙げていました。たとえばWBCで「スモールベースボール」というコンセプトが掲げられれば、選手たちはどういう行動が求められているかが明確になる。同じように、チームが「うちではこういう行動を大切にしている」「こういう行動を評価する」と明示していれば、メンバーは自然とその方向に向かっていくのです。


 そして、不満を言っている当人については、不満の「言い方」も大事です。「なんで俺なんだよ」と叫ぶのではなく、「今、こういうタスクを抱えていて、この時期にこの優先度の仕事が入ると厳しい部分があります」と合理的に伝えられるようになれば、同じ「不満」でも、チームにとって建設的な対話に変わります。ビジネスの場では合理的判断の積み重ねが求められるからこそ、周囲が判断しやすい形で意見を伝える力は、全員が身につけるべきスキルなのだと思います。


 今回の放送では、チームの心理的安全性を脅かす「困ったちゃん」問題に対して、行動分析やEQといった切り口から実践的なアプローチを考えました。行動の構造を見つめ直し、チーム全体でリアクションを変えていく。トップから率先して変化し、組織文化を動かす。そしてチームビルディングの一環として行動規範を言語化し、不満を建設的な対話に変えていく。そういった取り組みの積み重ねが、心理的安全性の高いチームづくりにつながるのだと感じました。


 「シンクリ!」では、こうした現場のリアルな悩みに対し、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のコミュニティ・EQの知見を掛け合わせて、解決のヒントを探っていきます。「こんなことで悩んでいるのは自分だけじゃないか」と思っているあなたのモヤモヤこそが、誰かのチームを救うヒントになるかもしれません。ぜひ、番組へのお便りもお待ちしています。




 
 
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