スローガンだけでは組織文化は変わらない!心理的安全性を高めるチームビルディングのヒント
- 河原あずさ(Potage代表)

- 1 日前
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Potage株式会社代表取締役 コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。 組織開発の専門家であり「シンクリ!」相談所所長の、株式会社ZENTech(以下、ZENTech)の代表取締役社長CEO 金亨哲さん(ひょんちょるさん)、そして感情知性EQの専門家であり副所長の私・河原あずさ、ナビゲーターのきのせまりさんの3人でお届けする音声番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」。その第3回放送が配信されました。今回はその内容をレポートしていきます。
「前向きな職場に」が空回りする原因
今回の放送で取り上げたのは、こんなお悩みです。
「前向きな職場に」という職場方針が発表された直後の打ち合わせで、同僚が上司から必要以上に感情的な激詰めを食らっていた。「前向きってスローガンだけだな」「前向きなつもりなのは上司だけだな」。それに上司は気づいていないし、気づく気配もきっかけもない。気づかせてあげるリスクが高すぎてやりたくないーー。全方位的に諦めています、という切実なご相談です。
ひょんちょるさんは、この相談に対して「非常にあるある」だと反応しました。スローガンと実態がまったくかみ合っていない状況。こうした「言葉が宙に浮いている」光景は日常的に起きています。
ここで問題の根っこにあるのは、抽象的なスローガンが生む「解釈のズレ」です。私は言葉を使う仕事をしていますので、1on1やファシリテーションの場面で常に気をつけていることがあります。それは「言葉の定義」です。よく使われるスローガン的なキーワードと、一人ひとりが思い描く解釈が全然違うということは、本当によく起きます。たとえば「成長」という言葉一つとっても、思い描く成長の姿も速度も人によってまったく異なる。その捉え方の違いが、マネジメントにおける深刻なすれ違いの温床になるのです。
ひょんちょるさんからは「挑戦」という言葉も同様にズレが生じやすいと指摘がありました。挑戦しろと言われても、新しい営業先のドアをノックするだけで挑戦だと感じる人もいれば、外に飛び出して新商材を売りさばくことを挑戦と捉える人もいる。言葉の粒度がまったく違うのです。チームビルディングの土台となる相互理解が、実はスローガンひとつで簡単に崩れてしまう。これは、中間管理職にとっても見過ごせない問題です。
言葉を行動に変えるチームビルディング
では、こうした解釈のズレをどう解消すればいいのでしょうか。ファシリテーションの王道としては、「場面を想起させる」手法が有効です。「前向きな職場の状態ってどんな状態?」という問いを全員に投げかけ、それぞれが思い描く姿を出し合う。すると、おそらく全員が違う答えを返してくるはずです。そこを揃えにいく対話型マネジメントの実践こそが、チームビルディングの第一歩になります。
しかも、もう一つ大事なのは、「前向きとはこういうことである」と上から定義を押し付けることが、果たして「前向き」なのかという、メタ的な問いも生まれてくるということです。みんながしっくりくる範囲で、前向きの方向性を見つけつつ、Aさんにとってはこれが、Bさんにとってはこれが前向きな行動なのだと、個々の違いにも着目して相互理解を深めていくことが重要です。
ここで、ひょんちょるさんが興味深い事例を紹介してくれました。ある企業では、心理的安全性の高い職場を作るために、あえて「心理的安全性」という言葉を徹底的に使わなかったというのです。心理的安全性という言葉を聞くと、どうしても「ぬるい職場なのでは」と誤解する人が出てきてしまう。だから、たとえば「話しやすい職場を作りませんか」と言い換える。話しやすい職場を作ることにNOと言う人は、そうそういません。
抽象的なスローガンではなく、具体的な行動指針に落とし込む。数値化しやすいもの、みんなが腹落ちしやすい言葉に変換する。それだけで、組織文化の醸成における浸透の難易度はぐっと下がります。これは現場で使えるチームビルディングの技術です。
リスナーさんからのご質問、激詰め上司への処方箋
では、相談者の方は具体的にどうすればいいのでしょうか。
ひょんちょるさんは、こうアドバイスしました。「全方位的に上司を変えようとするのは難易度が高すぎる。特定のシチュエーションで、こういう行動はなくしてほしい、こういう行動を増やしてほしいというピンポイントの気づきを渡すほうが、ずっとライトにできるはず」。
これは、EQを活用したコーチング的アプローチそのものです。EQとは、自分や他者の感情を理解し、適切に扱う能力のこと。部下育成がうまくいかないと感じている管理職の方も少なくないと思いますが、相手の行動を丸ごと否定するのではなく、具体的な場面にフォーカスしてフィードバックを返すことが、マネジメントの質を変える鍵になります。
たとえば、上司が素敵な声がけをしたときに、すかさず称賛を返す。「課長のあの一言、すごく良かったです」と伝えるだけでも、上司は「こういう行動をすると部下が喜ぶんだ」と学習します。その小さなフィードバックの積み重ねが、この場合でいくと、激詰めの場面を徐々に減らしていくことにつながるのです。
管理職が向いていないのではないか、自分のリーダーシップに自信がないと悩んでいる方もいるかもしれません。しかし、大切なのは完璧なリーダーになることではなく、こうした「小さな一点突破」のコミュニケーションを日常的に実践できるかどうか。EQの視点を持つことで、相手の感情に配慮したコーチング的な関わり方が自然にできるようになっていきます。
「30分後に謝りに行く」リーダーが示す組織文化の変え方
放送の中で、ひょんちょるさんが紹介してくれたエピソードが非常に印象的でした。ある硬い組織のトップの方が、研修の場で語ったそうです。
「時間がタイトなとき、どうしても強い言葉を使ってしまうことがある。でも、30分後に必ず謝りに行くようにしている。部下にも『強い言葉を使ってしまうことがあるけれど、30分後に必ず謝りに行くから、一旦聞いておいてほしい』と周知している」と。
これはまさに「バルネラビリティ(弱さの自己開示)」の実践です。人事やマネジメントの世界で注目されている概念で、自分の弱さをさらけ出せるリーダーになりましょうという考え方です。「自分にはこういうところがあるからごめん、ちゃんと後で謝るから」と言えること。自分に非があったとオープンにできること。これは非常に心理的安全性の高いマネジメントであり、共感型リーダーシップの真骨頂です。
叱ること自体がダメなわけではありません。ネガティブなフィードバックも時には必要です。大事なのは、その後にどうコミュニケーションを取るか。そして、「自分はこういう人間なんだ」ということを、いいところも悪いところも含めて開示できる関係性のベースがあるかどうか。この小さな自己開示の積み重ねこそが、組織文化を内側から変えていく力になります。
最後に、きのせさんがこう振り返ってくれました。「心理的安全性のある職場を作っていくには、小さな行動の積み重ねがとっても大事。その行動に落ちる言葉をみんなで目線合わせしていかないと、まるっとまとめても、なかなか心理的安全性は得られないんだなと改めて感じました」。まさにその通りです。壮大なスローガンよりも、日々の言葉を丁寧に揃えること。行動に対して、互いにフィードバックを返すこと。自分の弱さを認めてオープンにすること。そうした地道なチームビルディングの先に、心理的安全性あふれるチームが育っていきます。
「シンクリ!」では、引き続き皆さんのリアルなお悩みに、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のEQの知見を掛け合わせながら、解決のヒントを探っていきます。
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