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心理的安全性と休み方。休みやすいチームは管理職の一言から変わる

心理的安全性と休み方。休みやすいチームは管理職の一言から変わる

【この記事のまとめ】

 休みにくい空気は、制度ではなくチームの関係性から生まれているのかもしれません。管理職が自ら休むことを言葉にし、メンバーそれぞれの休み方の価値観を共有し、誰かが抜けてもフォローし合える状態をつくる。この3つが揃うと、しなくてもいい遠慮が減っていきます。本記事では、ポッドキャスト「シンクリ」での対話をもとに、休みやすいチームのつくり方を整理します。



【目次】

 


 「有給は制度としてあるのに、なんとなく申請しづらい」「自分の部署は休みやすいけれど、隣の部署はそうでもないらしい」。夏休みのシーズンが近づくたびに、こうした違和感が浮かび上がってくるチームは少なくないのではないでしょうか。制度は同じなのに、部署によって休みやすさが違う。その差は、どこから生まれているのでしょうか

 

 

 この記事のもとになったのは、ポッドキャスト番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」の放送です。心理的安全性の専門家である金亨哲氏(きむ・ひょんちょる/株式会社ZENTech)と、EQ(感情知能)の専門家である河原あずさ(Potage株式会社)が、リスナーさんから寄せられた「休みやすい文化はつくれるのか」というご相談に答えました。

 


「有給が取りにくい」空気は、制度ではなくチームの関係性から生まれているのかもしれない


 番組に届いたのは、地方の会社で研究開発職として働くリスナーさんからのご相談です。お盆の時期に3日間の有給を計画的に取得する制度をめぐって、社内でアンケートと議論があったといいます。意見は、休みを取りにくいので制度を維持したい人、自分のタイミングで休みたいので撤廃したい人、事前申請で振り替えられるようにしたい人に分かれ、結論は「現行制度を維持して、1年かけて議論を続ける」となりました。

  

 相談者が意外に感じたのは、有給を取りにくいと感じている人が一定数いたことでした。自分の部署は部長自身が家族の予定で休むため、有給を取るのは当たり前という空気がある。けれど営業部などは、そうではないのかもしれない。ここから相談者さんは、管理職はどんな行動や仕組みづくりをすると休みやすい文化をつくれるのか、と番組に質問を送ってくれました。

 

  金氏はこのご相談を受けて、相談文のなかにすでに答えのひとつがあると受け止めました。部長自身が休むから、部下も休める。管理職の側からきちんと休むことを明言するのは、それだけで大きな意味があるのではないか、という見立てです。

 

  河原あずさもここに、残業の構図と同じものを見ています。役職者がずっと会社に残っていると、メンバーは帰りづらくなる。休みやすさをつくる一番大きな要素は、管理職がそれを実践しているかどうかにかかってくるのではないか、という受け止めです。

  

 管理職自身が休めないまま板挟みになっている状態については、関連記事「管理職のストレスと限界サイン」もあわせてご覧ください。


 

管理職ができる最初の一手は、自分が休むと言葉にすること


 金氏が挙げた具体的な行動は、とてもささやかなものでした。「このプロジェクトが終わったら休むからね」と、あらかじめ言っておく。それだけでも、チームの休みやすさは変わってくるのではないかといいます。人は横の人や上の人が頑張っていると、どうしても休みづらくなる。だからこそ、自分も休むという宣言を少ししておくことに意味がある、という見方です。

  

 裏側の話もあります。金氏は、つい時間外にSlackを送ってしまいがちだと振り返り、最近はそれを極力やめようとしていると語りました。活用しているのは予約送信です。チーム全体の合意として「今はスケジュールが足りないからこの状況だ」と共有されていればまだしも、仮になぜこの人が時間外まで働いているのか分からないまま通知が飛んでくると、周囲は休みづらくなってしまうからです。

  

 河原あずさも、自分がこんな時間まで頑張って働いているという雰囲気を漂わせるメールやSlackを送ってくる管理職の存在に触れています。送っている本人にその意図がなくても、受け取る側は勝手に空気を読んでしまうものなのかもしれません。

 

 あわせて金氏が挙げたのが、制度として準備されているものはみんな使ってもらって大丈夫だと、リーダーの側から言葉にすることでした。サボるのは別の話ですが、休むことは制度で決まっている以上、堂々と休んでいい。それを宣言したうえで、お互いの働き方を話し合えるとよいのではないか、という提案です。

 


「休み方の取扱説明書」をチームで共有する

 とはいえ、チームには多様なメンバーがいます。働き方の希望がばらばらな組織で、休んでいいという空気をどうつくればいいのでしょうか。

 

 金氏がZENTechで実践したものとして紹介したのが、チームラーニングと呼ばれるワークショップです。外資系コンサルティング会社で行われている手法で、その名の通りチームのことをきちんと学ぼうというもの。簡単に言えば、働き方や自分の取扱説明書をお互いに共有する時間です。

 

 共有される内容は、日中のほうが集中できる、あるいは夜型なので夜のほうが進む、といった小さなことから始まります。家族と暮らしているのでこの時間は避けてほしい。電話の前に一言メッセージをもらえるとありがたい。逆に、5分10分の用件なら電話でまったく構わない。そうした一人ひとりのしっくりくる働き方を、先に共有しておくワークです。フルリモートの組織では相手の働いている環境が見えないため、金氏はその必要性をより強く感じたといいます。

 

 これをやっておくと、つい仕事に没頭してしまう人がいても状況が変わります。金氏の見立てでは、その人が働くこと自体を楽しんでいるとみんなが知っていればまだいい。「単純に自分が好きで働いているだけなので、気にしないでください」という一言があるだけで、周囲は休みやすくなるのではないか、というわけです。 

 

 河原あずさは、この視点を自身の会社員時代の実感と重ねています。働き方改革という言葉が出はじめた時期に大企業にいた河原あずさは、残業時間について指摘を受けるなかで、働きすぎは良くないという空気が強まっていくのを感じていました。そのとき覚えたのは、休みやすさと引き換えに働きやすさが削られていくストレスだったといいます。こちらは働きたいのだから働かせてほしい、という感覚です。それぞれのスタンスが共有され、そこに寄り添った運営ができていれば、みんながハッピーになれる状態をつくれるかもしれない、というのが河原あずさの見立てです。 

 

 ナビゲーターの黄瀬真理も、休むという一言のなかにある価値観の幅を挙げました。家族が休むときに合わせて休みたい人。あえてみんなが休まない時期に休む人。連続ではなく水曜日などにちょこちょこ取りたい人。半日でいいので、お客さま対応を誰かに任せて短くリフレッシュしたい人。むしろ自分でお客さまからの連絡を受けながら休んだほうが安心できる人。こうした違いが共有され、どこまでをチームが許容できるかの認識が揃っていると、しなくてもいい遠慮を減らしやすくなるのではないか、という見方です。

 

 お互いの前提を共有する時間という意味では、1on1の時間についての関連記事「1on1の目的と形骸化を防ぐ考え方」も参考にしてみてください。


 

一人で休みにくいなら、みんなで休む日を決める


 河原あずさは、自社のスタッフと長期休暇の話をしたときのことを紹介しました。1週間ほど休むことについて、スタッフの口から「そういうことはやらないようにしている」「言わないようにしている」という言葉が出てきたそうです。裏を返せば、機会があるなら1週間くらい休んでみたいという気持ちが、本人も無自覚なまま存在しているのではないか。河原あずさはそう受け取っています。

 

  では、遠慮なく1週間休める組織にするには何ができるのか。金氏が挙げたのは、繁忙期を避けて、みんなで一緒に休むという方法でした。どの部門にも繁忙期があり、その裏側には比較的落ち着く時期があります。繁忙期に1週間抜けられるとチームは苦しくなりますが、そこまで忙しくない時期にみんなで休む約束を先に取り付けておけば、ずいぶん休みやすくなるのではないか、という提案です。

 

  背景にあるのは、遠慮の構造です。金氏によれば、一人で誰にも言わずに休もうとすると人は遠慮してしまう。カレンダーに休みと入れることさえ申し訳なく感じてしまう優しい人もいる。けれどみんなで休んでいるなら誰にも迷惑をかけていないので、一緒にカレンダーに入れようと声をかけ合えるようになります。 

 

 河原あずさは、これをチームビルディングの機会としてとらえ直しました。イベントやシステムのローンチなど、プロジェクトに明らかな山があるなら、「これが終わったらみんなで1週間休もう」を合言葉にして走る。休みが目標のひとつになると、チームの空気そのものが変わってくるかもしれません。

 

 対外的な発信についても、二人の見方は重なりました。この期間、この部署は1週間お休みをいただきますと告知してしまう。1週間止まったところで会社が倒れるわけではありませんし、準備をしておけば問題は起きにくい。金氏は、休むことを難しいと感じている人が増えているように見えるからこそ、きちんと休んでいる部署だと知られることは素敵なイメージづくりになるのではないか、と語っています。


 

制度より先に、自分たちの実態を言葉にする


 今回のご相談は、制度を検討するためのアンケートを取ったことで、休みに対する価値観の幅が見えてきたという流れでした。河原あずさは、この順番に注目します。もともと休もうというカルチャーが先にあり、それに合わせて制度が設計される順番であれば、こうはならなかったのではないか。実態に合わせてくれた、そうだよね、という受け止めになっていくはずだ、という見方です。

 

 河原あずさ自身、IT業界にいた頃は休みをばらばらに取るスタイルが主流でした。フレキシブルな働き方を好む人が多いというカルチャーがあり、制度がそこに合っていたので無理がなかった。だからまずは、自分たちがどういう実態なのかを言語化しておく。そうすれば人事に働きかけることもできるかもしれないし、リーダーが「うちの部署はこういう運用でやっています」と周囲に発信できるようにもなるかもしれません。管理職ではないメンバーにとっての第一歩も、おそらくここにあります。

  

 金氏も、制度につなげるためには本音を引き出すことが大事だと応じました。今回の相談者がギャップの存在に気づいたこと自体が、すでに一歩前進だという見方です。全員が100%満足する制度をつくるのは難しいとしても、実態と照らし合わせた形にしていくことには大きな意味がある、と金氏は語ります。

 

 金氏は自社での実感も添えています。ゴールデンウィークやお盆は、本当はずらして休みたいという声が社員から上がってくる。一方でクライアントがカレンダー通りに休むなら、こちらもカレンダー通りのほうがいいという結論にもなる。どちらが正しいかを決めるより、みんなが納得できる形で議論するところから、休み方のカルチャーができあがっていくのではないか、というのが金氏の見立てです。

 


休めるチームは、助け合えるチーム


 もうひとつ、休みやすさを左右する条件があります。河原あずさが挙げたのは、誰かが休んだときに他の人がフォローできる関係性になっているかどうかでした。心理的安全性でいう助け合いの文化が日常にあるかどうかが、そのまま休みやすさに現れてくるのかもしれません。

 

 金氏もここに同意し、視野を計画的な休みの外側まで広げています。今回のご相談は計画年休の話でしたが、人間である以上、突発的に休まざるをえない場面は生じます。そのときにきちんとフォローできる体制を、日々つくっておきたいところです。

  

 黄瀬真理は放送の終わりに、こう振り返っています。休むことには、しっかりリフレッシュしていい仕事をするという意味がある。それでも、休むと言いにくい雰囲気は同時に存在する。その背後には、集まっている人たちがどんな休みを取りたいのか、どんな働き方をしたいのかというカルチャーがある。だからこそ、その部分をみんなで理解し合うことが心理的安全性につながり、それぞれの価値観に沿った休みを相談しやすい雰囲気が生まれていくのではないか、という気づきです。

  

 河原あずさが放送のなかで残した言葉が、この回全体を言い表しています。働き方もカルチャーだけれど、休み方もカルチャーである。すなわち、制度を変える前にできることが、チームの側にはまだ残されているということです。


 

まとめ

•      休みやすさを左右する一番大きな要素は、管理職自身が休んでいるかどうか

•      「この話が終わったら休むからね」と先に言っておくだけでも、チームの空気は変わる

•      時間外の連絡は予約送信に。頑張っているアピールは、周囲の休みにくさに変わりやすい

•      働き方の取扱説明書を共有しておくと、ワーカホリックな人がいても遠慮が減る

•      一人で休みにくいなら、繁忙期を避けてチーム全員で休む日を決めてしまう

•      制度を議論する前に、自分たちの休み方の実態を言葉にしておく

•      誰かが休んだときに助け合える関係性が、そのまま休みやすさになる

 


よくある質問(Q&A)


Q1. 休みやすい職場の文化は、どうすればつくれますか?

A. 制度を整えるより先に、管理職が自ら休むことを言葉にすることが出発点になります。「このプロジェクトが終わったら休みます」と先に伝えておくだけでも、周囲の休みやすさは変わります。あわせて、制度として用意されているものは使ってもらって大丈夫だとリーダーの側から明言し、お互いの働き方や休み方の希望を共有する時間をつくると、しなくてもいい遠慮が減っていきます。

 

 

Q2. 有給休暇を取りにくいと感じるのは、どうしてですか?

A. 上司や同僚が働き続けている状況では、人はどうしても休みづらくなります。例えば緊急性がない連絡が時間外に複数回飛んでくるような環境だと、その傾向は強まります。前提となる、休みに対する自分の価値観を共有するといった対策が有効です。

 

 

Q3. 管理職ではないメンバーが、休みやすいチームづくりにできることはありますか?

 A. まず、自分たちの部署が実際にどんな休み方をしているのかを言語化しておくことが第一歩になります。実態が言葉になっていれば、人事や制度の担当者に働きかける材料になりますし、リーダーが対外的に運用を説明することもできます。あわせて、休みに対する自分の価値観をチームに共有しておくと、お互いの許容範囲が見えやすくなります。

 

▶ この記事のもとになった対話は、ポッドキャストでお聴きいただけます。

 なぜあなたの職場は休みづらい?制度の前に必要な「休み方のカルチャー」


 

 

 「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」は、株式会社ZENTech 金亨哲氏とPotage株式会社 河原あずさがお届けする番組です。心理的安全性に関する知見については、株式会社ZENTechのサイトもご覧ください。

 

 

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