中間管理職のための心理的安全性。ソニックガーデン代表 倉貫さんと語る「決めつけを手放す」チームづくり
- 河原あずさと36.5編集部

- 7 日前
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【この記事のまとめ】
メンバーは発言せず、上司は聞く耳を持たない。中間管理職が抱えるこうした悩みの多くは、関係性の土台不足と「決めつけ」から生まれています。雑談と1on1で話せる土台をつくること、相手への決めつけや自分の感情の投影に気づくこと、「あなたvs私」ではなく「問題vs私たち」の構図でゴールを揃えること。この3つが、心理的安全性のあるチームへの入口になります。
【目次】
導入
会議でメンバーに「困っていることはありますか」と聞いても、返ってくるのは「特にありません」の一言。かと思えば、自分の上司はチームで練った案に聞く耳を持たず、経験者としてのダメ出しが続く。上からも下からも板挟みになる中間管理職の方には、思い当たる場面が多いのではないでしょうか。(関連記事:管理職のストレスが限界になる前に)
この記事では、ポッドキャスト「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」のゲスト回をもとに、こうした相談への答えを再構成しました。答えるのは、1日所長として登場した株式会社ソニックガーデンの倉貫義人氏(くらぬき・よしひと)。「管理をしない会社」の経営で知られ、雑談と相談をかけ合わせた「ザッソウ(雑談・相談)」提唱者です。『ザッソウ 結果を出すチームの習慣 ホウレンソウに代わる「雑談+相談』の著者でもあります。
今回は、倉貫義人氏と、心理的安全性の専門家である金亨哲氏(きむ・ひょんちょる/株式会社ZENTech)、EQの専門家である河原あずさ(Potage株式会社)との対話から、ヒントを探ります。
なぜ「特にありません」しか返ってこないのか
早速1つ目はこんな相談です。
「定例会議で何を聞いても「特にありません」としか返ってこないのですが、
どのように対応したらよいでしょうか」
倉貫氏の最初の指摘は、問いの立て方そのものに向けられました。「困っていることはありますかって聞かれるのって、僕も結構困るんですよね」。本当に困っていないのなら発言しなくてもよいはずで、聞くとしても「最近気になっていることはありますか」のような言い方に変えるだけで印象が変わる、という見立てです。
そのうえで倉貫氏は、より根本にある関係性の土台を挙げます。相談の前には雑談が必要で、雑談の中で「この人は話しても怒らない」「話を聞いてくれる」と分かってはじめて、公式の場でも話せるようになるかもしれない、という順序です。ソニックガーデンでも、マネージャーには1対1で話す時間を作ってもらうようにしているそうです。大勢の前で話すことはハードルが高く、1対1であれば話す機会そのものが生まれるからです。
(関連記事:1on1の目的とは。形骸化させないために)
金氏も同じ構図を指摘します。会議の場で聞かれると「特にありません」と言いやすいため、1対1で聞いても何も出てこないのかどうかが気になる、と。つまりこの相談は「関係性の問題なのか、場のデザインの問題なのか」を切り分ける必要がある、という見立てです。
河原あずさは、シチュエーションの影響を補足します。たとえば会議終了5分前に「困っていることはありますか」と聞かれれば、早く終わらせたいので「特にありません」と返ってくるのが自然です。メンバーが話さないのではなく、話しにくい環境をこちらが設定してしまっている可能性に気づけると、開示してもらえる環境設計につながるのではないか、という視点です。
「お山の大将」は本当か。決めつけと投影に気づく
2つ目の相談は逆の立場から(メンバーからの相談)でした。
「上司がお山の大将で、聞く耳を持たず、チームで練った案も通らない。
この不穏な雰囲気を良くするには、どうしたらよいでしょうか。」
倉貫氏はまず、問いそのものを問い直します。本当に実現したいことは雰囲気を良くすることではないはずだ、と。そのうえで、こう指摘します。「上司がお山の大将である、というのはバイアスがかかっているということだと思うんですよね」。あらゆる人の行動には本人なりの理由がある。話を聞かないのなら聞かない理由があるはずで、「あいつは話を聞かない」と決めつけてしまうと相互理解の道が断たれてしまう。だからこそ、決めつけを外して相手の理由を確認し、対話で解決していくことが、本当にチームを良くしたいのであれば必要になる、という考え方です。
似た構図は3つ目の相談にもありました。
「経験者の上司からダメ出しが続き「メンバーの表情も曇っていきました・・」
という課長の方からのご相談です。
金氏が着目したのは、この「曇っていきました」という言葉でした。メンバーの誰も「嫌だ」と言葉にしたわけではなく、相談者自身の気持ちが投影されている瞬間ではないか、という見立てです。ただし金氏は、こうも付け加えます。自分自身が嫌な気持ちになっていること自体は認めてよい。そのうえで「そういう言い方をされると、私はこう思います」と上司に伝えられているかが、次の問いになる、と。
河原あずさはこの2つの相談に共通する構造を、鏡にたとえて整理しました。上司がお山の大将に見えるのも、メンバーの表情が曇って見えるのも、自分自身の気持ちが投影されて、鏡を見ているような状態になっている可能性がある、ということです。まだ仮説の段階なのだとしたら、決めつける前にそこをクリアにするほうが先ではないでしょうか。
チームの掛け違いを予防する「問題vs私たち」
では、こうした掛け違いはどう防げるのでしょうか。倉貫氏の答えは明快で、起きてから対処するのではなく、起きないように予防することでした。
その方法が、ゴールの共有です。プロジェクトには目指すゴールがあるはずで、最初に「私たちが実現したいことはこれですよね」という合意を取り、参加者がそこにコミットする。そうすれば、意見がぶつかっても「自分の意見を通すためか、ゴールを達成するためか」で判断できるようになります。倉貫氏はこのスタンスを「問題vs私たち」と呼んでいます。「あなたvs私」の構図では、どちらかの思惑が通ってもどちらかに不満が残ります。そうではなく、問題を前に置いて、それに私たちで取り組む構図を最初から作り続ける、という考え方です。
これを受けて金氏は、心理的安全性の文脈から同じ結論を語りました。心理的安全性は単にコミュニケーションができる組織の話に見えがちですが、「何の問題に対してコミュニケーションがちゃんとできる組織なのか」という前提がないとうまくいかない。見ている問題がバラバラだと、意見は全部食い違う。ZENTechでも「課題vs私たち」というスライドを作っているそうで、お2人の見立てはここで重なりました。
河原あずさはこれを、チームづくりの原則として引き取ります。仮想敵を作れば一見一体感が出るように見えますが、組織全体で見れば誰も幸せにしません。そうではなく、何の目的で集まった人たちなのかに立ち返り、ゴールとその手前にある課題を確かめて、最適な行動をみんなで話し合う。それができてくると、心理的安全性あふれるチーム形成につながるのではないか、という整理です。
まとめ
・「困っていることはありますか」という問い自体が答えにくい。聞き方と場のデザインを見直す
・相談の前に雑談。話しても大丈夫だと分かる関係性の土台を、1on1などでつくる
・『「上司はお山の大将」「皆の表情が曇った」は、もしかしたら自分の感情の投影かもしれない』という可能性を、まず確かめる
・嫌な気持ちそのものは認めてよい。そのうえで「私はこう思う」と伝えられているかを問う
・ゴールを共有し「あなたvs私」ではなく「問題vs私たち」の構図をつくることが、掛け違いの予防になる
・目的に立ち返ってみんなで行動を選び直すことが、心理的安全性のあるチームにつながる
よくある質問(Q&A)
Q1. 会議で「特にありません」としか返ってこないとき、どうすればいいですか?
A. 問いの立て方と場の設計を見直すことから始められます。「困っていることはありますか」は答えにくい問いで、「最近気になっていることはありますか」のような聞き方に変える、会議ではなく1対1で聞く、といった工夫が入口になります。前提として、雑談などを通じて「話しても大丈夫」と思える関係性の土台が必要です。
Q2. 意見を聞かない上司には、どう向き合えばいいですか?
A. 「聞く耳を持たない上司」という見方自体が決めつけになっている可能性があります。行動には本人なりの理由があると考えて、まず相手の理由を確認することが出発点になります。嫌な気持ちを抱くこと自体は自然なことなので、それを自分で受け入れたうえで「私はこう思う」と相手に伝えられているかを振り返ってみてください。
Q3. 「問題vs私たち」とはどういう考え方ですか?
A. 意見の対立を「あなたvs私」の構図にせず、共有した問題やゴールを前に置いて、それに全員で取り組む構図をつくる考え方です。プロジェクトの最初にゴールへの合意とコミットがあれば、意見がぶつかっても「ゴール達成のためかどうか」で判断でき、思惑のぶつかり合いを予防できます。
▶ この記事のもとになった対話は、ポッドキャストでお聴きいただけます。
「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」は、株式会社ZENTech 金亨哲氏とPotage株式会社 河原あずさがお届けする番組です。心理的安全性に関する金氏の知見は株式会社ZENTech(ZENTech様のURLを挿入)のサイトもご覧ください。
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