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組織開発の具体例とは?手法と事例だけでは変わらない組織に必要な視点

6 日前
読了時間: 14分


  【この記事の3行まとめ】

 

 組織開発とは、組織の一体感を生み出し、チームが有機的に動ける状態をつくる取り組みです。1on1や組織サーベイ、理念づくりと対話の場などが代表的な具体例です。

 

 施策を実施しても変化が続かない場合、原因は施策の不足ではなく、トップダウンとボトムアップの間に距離が残ったままになっていることが少なくありません。

 

 組織開発の第一歩は、新しい施策を足すことではなく、一人ひとりが自分の特性と働き方の理想を言語化し、互いに共有することから始められます。




組織開発の具体例とは?手法と事例だけでは変わらない組織に必要な視点

 

 【目次】

 

 

 こんにちは。Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。

 

 「組織開発に取り組みたいが、具体的に何をすればいいのか分からない」。あるいは、「1on1もサーベイも導入したのに、何かが噛み合っていない気がする」。この記事を開いてくださった方の多くは、そのどちらかの状態にいらっしゃるのではないでしょうか。

 

 この記事では、組織開発の代表的な手法と具体例を整理したうえで、施策を実施しても変化が続かない理由と、変化を定着させるために私が大切にしている「組織調律」という考え方を紹介します。私が支援に入っている企業での取り組みと、Potage自社での実践も、実例としてお伝えします。

 

 

組織開発とは何か。人材開発との違い


 組織開発とは、組織としての一体感を生み出していくプロセスだと私は考えています。組織の中のあらゆるチームが一体感を持って、有機的に、能動的に動いていく状態。それを生み出していくことが、組織開発という言葉をシンプルに説明したときの定義ではないでしょうか。その意味で、組織開発は「チームビルディング」の延長線上にある取り組みだと言えます。

 

 よく似た言葉に「人材開発」があります。両者の違いは、働きかける対象にあります。

 

 

組織開発

人材開発

対象

組織全体・チーム・人と人の関係

個人

目的

一体感を生み出し、チームが有機的に動ける状態をつくる

個人のスキル・能力を高める

施策の例

1on1、対話の場づくり、理念の浸透、組織サーベイ

研修、資格取得支援、コーチング

 

 人材開発が「個人を伸ばす」取り組みだとしたら、組織開発は「人と人の間」に働きかける取り組みです。

 

 ところで、実際に人事の方とお話ししていると、「組織開発」という言葉そのものは、現場ではあまり使われていないと感じることがあります。「チーム作り」「組織作り」「対話の機会を作る」といった表現で語られることがほとんどなのです。それだけ、組織開発という言葉には、どこか実態との距離があるのかもしれません。

 

 この距離を紐解く鍵は、「開発」という言葉にあると私は考えています。

 

 組織開発は、英語のOrganization Developmentの直訳です。日本語の「開発」は、もともと仏教の言葉で「かいほつ」と読み、自分の中に眠っている仏の性質を開き起こすことを意味していたと言われています。それが転じて、現代では「まだ開かれていない場所を切り開き、新しいものを作っていく」というニュアンスが強い言葉になりました。都市の再開発を思い浮かべると分かりやすいのではないでしょうか。

 

 一方、英語のdevelopmentの語源は「包まれているものを解く」ことだと言われています。封筒を意味するenvelope(包むもの)と対になる言葉で、風呂敷に包まれたものをすっと解いて、中身を取り出すイメージです。つまり、まだないものを作り出すのではなく、すでに存在しているものを明らかにして、そのポテンシャルを解放していく。そんな意味合いを持つ言葉なのです。

 

 「切り開く開発」と「包みを解くdevelopment」。この違いが、のちほどお話しする「やったのに変わらない」問題と深く関わってきます。まずは、具体的な手法から見ていきましょう。

 

 

組織開発の代表的な手法と具体例


 組織開発の手法はさまざまですが、働きかけ方で整理すると、大きく3つに分けられます。

 

分類

ねらい

手法の例

組織の状態を測る

現状を可視化し、課題を特定する

組織サーベイ、エンゲージメント調査、EQなどの特性検査

個人に働きかける

一人ひとりの内省とスキルを支援する

コーチング、管理職向け研修

関係に働きかける

人と人の間の対話と信頼を育てる

1on1、ワークショップ、対話の場づくり、理念の共有

 

 実際の現場では、これらを課題に合わせて組み合わせていきます。よくあるパターンを3つ紹介します。

 

 一つめは、メンバーが本音を言いにくい、会議で意見が出ないという課題に対して、1on1を導入するケースです。上司の方がコーチングのスキルを研修で身につけたうえで話を引き出し、個人の自発的な動きが生まれる環境を整えていきます。

 

 二つめは、理念が現場に浸透していないという課題に対して、ビジョン・ミッション・バリューを作り直し、それについて「みんなはどう思うか」を話す対話の場やワークショップを開くケースです。

 

 三つめは、組織の状態が見えないという課題に対して、エンゲージメントサーベイで、メンバーがどんな気持ちで働いているのかを調べるケースです。

 

 どの施策も、それ自体はとても有効です。実際、多くの企業がこうした取り組みを熱心に進めていらっしゃいます。

 

 ただ、こうして並べてみると、気づくことがあります。どれも「それまでやられていなかったことを、新しく足していく」アプローチだということです。そして、施策を足し続けているのに変化が続かないという悩みが生まれるのは、多くの場合、ここからなのです。

 

 

なぜ組織開発は「やったのに変わらない」のか


 日本の企業で行われている組織開発には、共通する型があるように思います。

 

 まず、経営層や人事の方が主導して、新しい理念や制度を作ります。ビジョン・ミッション・バリューが古くなったので刷新しましょう、といった形です。作ったものは「カスケード」と呼ばれるやり方で、マネージャー層から現場層へと順に落とし、浸透を図ります。そして、トップダウンだけではうまくいかないので、ワークショップや対話の場というボトムアップの取り組みを組み合わせて、腹落ちを作っていきます。

 

 誤解のないようにお伝えしたいのですが、この型そのものは、良いアプローチだと私は考えています。変革は、トップダウンとボトムアップが融合した先にしか生まれない。これは私自身、強く実感しているところです。

 

 問題は、トップダウンとボトムアップの間に距離が残ったまま、進んでしまう場合があることです。

 

 少し厳しい言い方になりますが、現場の人たちが話す場を「アリバイ」のように作って、対話をやったという実績ができたら、「もうみんな大丈夫だよね」と手を放してしまう。そんなケースは、決して珍しくないのではないでしょうか。

 

 変化が続かないとき、私たちはつい「次の施策」を探してしまいます。しかし、足りないのは新しい施策ではないかもしれません。先ほどの言葉に戻ると、これは「切り開く開発」のイメージ、すなわち、ないものを新しく作って組織に馴染ませていく発想が行き着きやすい場所なのだと思います。

 

 では、もう一つの発想、「すでにあるものを解き放つ」に立つと、何が変わるのでしょうか。

 

 

施策を足す前に考えたい「組織調律」という視点


組織調律の進め方

 

 私はふだん、「組織調律」という言葉を使って組織づくりのお手伝いをしています。一言でいうと、みんながのびのびと働ける場所を、調律して作るという考え方です。

 

 組織調律が大事にしているのは、その組織が「本来鳴らせる音」です。これをPotageでは「基準音」と表現しています。この組織はどんなポテンシャルを持っていて、いま、どんな人たちがどんな音を鳴らしているのか。比喩的にですが、そんなふうに組織と向き合い、「こう組み合わせると、より良い音を奏でられるかもしれない」という見立てのもとで、チームや一人ひとりと向き合って、ちょっとした調整を行っていきます。

 

 極端なことを言えば、新しい制度も、新しい取り組みも、何も足さなくても組織調律は成り立ちます。理念の刷新や中期計画づくりと並行して進めることもできますが、それがなくても始められるのです。ここが、新しいものを作って組織に馴染ませていく組織開発の進め方との、大きな違いのひとつだと考えています。

 

 なぜ「音」の比喩を使うのかというと、多くの組織では、自分たちの音が自分たちでは聞けなくなっているからです。目の前の業務に追われていると、濁った不協和音が流れ続けてストレスになっているような状態に陥りがちです。これは言い換えると、業務において何を優先したらいいのかが、見えなくなっている状態です。自分がどういう音を鳴らせば自然とパフォーマンスが発揮され、周りと調和できるのか。それが見えなくなっているから、困ってしまうのです。

 

 組織調律は、組織開発を否定する考え方ではありません。むしろ、先ほどのdevelopmentの語源、すなわち「すでにあるものを明らかにして、ポテンシャルを解放する」という本来の意味に立ち返るアプローチだと私は捉えています。施策を足す前に、いま鳴っている音を聴く。その順番を大切にする考え方です。

 

 とはいえ、これだけでは抽象的だと思いますので、実際に何をするのかを、私が支援に入っている企業での取り組みと、Potage自社での実践でお話しします。

 

 

組織調律の実例。COCOSTYLE社とPotage自社での実践


 ここでは、実例を2つお話しします。一つは、私が「CEQO(チーフEQオフィサー)」、すなわち組織のEQ経営を支える役割として関わっている、COCOSTYLE株式会社での取り組みです。ウェディング事業を展開し、全国のプランナーの方々がフルリモートで働いている会社で、EQを起点にした組織調律を一緒に進めてきました。もう一つは、私たちPotageが自分たちの会社で続けている実践です。

 

 まず、COCOSTYLE社での取り組みからお話しします。プロセスは大きく4つのステップに分かれます。

 

 

ステップ1:自分の鳴らしている音を知る


 最初にやるのは、お互いのことを知ること。調律の言葉でいえば、お互いの鳴っている音を理解することです。ただ、その前に欠かせないことがあります。まず、自分自身がどんな音で鳴っているのかを知ることです。自分の音が分からない状態で、周りとハーモニーを奏でるのは難しいのです。

 

 ここで使うのが「EQPI」という検査です。EQ(感情知能)と性格特性を可視化する検査で、自分がどんな感情の癖を持ち、どんな特性があるのかを言語化します。感情の癖や特性は、人と関わるときの得意・不得意につながります。だからこそ、検査結果をもとに「本来の自分はどういう状態で力を発揮できるのか」を言葉にしていくのです。

 

 

ステップ2:得意・苦手・モヤモヤを開示し合う


 次に、言語化した内容をお互いに共有します。ポイントは、共有の仕方です。単に「自分はこういう人間です」と発表するのではなく、「こういうことを実現したいので、こういう面で支援してほしい」という言い方で、周りに伝えてもらいます。

 

 自分はこういうことが得意でできる。こういうことは苦手だけれど、やらなければいけないと思っている。ここで困っている。ミッションを進めるうえで、こういうところにモヤモヤがある。そうしたことを、かなり細かく言語化して、助けてほしいことまで含めて口に出すのです。

 

 なぜここまでやるのかというと、組織が噛み合っていないとき、共通して起きているのが「抱え込み」だからです。マネージャーは、優秀なプレイヤーだった方が昇格するケースがほとんどです。つまりマネージャー陣とは、「自分で何とかできる人」の集合体なのです。だからこそ「自分で何とかしよう」が先行して、苦手なことまで一人で抱え込み、孤独になっていきます。「支援してほしい」と口に出す仕組みは、この抱え込みを解くための、小さくても大きな一歩です。

 

 やりたいことが重なっているのに、隣のチームと連携が取れていない。この部署とこの部署がつながれば実現するのに、分断されている。そんな状態も、お互いの理想とボトルネックを開示し合うことで、「では一緒にやりませんか」「私たちはこういう支援ができます」という言葉が生まれ、つながり始めます。

 

 

ステップ3:チームの中で役割分担を言語化する


 開示と共有は、まずマネージャー同士で行い、次にチームの中、すなわちマネージャーとメンバーの間でも行います。マネージャーが自分の理想と、忙殺されてうまくいっていない部分、苦手なのに引き受けてしまっている部分をメンバーに開示する。メンバーも自分の思いを言語化する。そのうえで、お互いにどういう役割分担ならチームが噛み合うのかを、一緒に言葉にしていきます。

 

 そうすると、それぞれができるだけ得意なことに向き合い、チームの成果に直結する動きを取れるようになっていきます。

 

 

ステップ4:定期的にメンテナンスする


 一度整えても、時間が経つと実態からずれていきます。得意・不得意は変わりますし、新しいメンバーが入れば役割の持ち方も変わります。だから、ピアノの調律と同じように、定期的に聴き直して整え直します。一度で完成させるのではなく、続けることを前提にした取り組みなのです。

 

 

この実践が生んだもの


 COCOSTYLE社では、こうした取り組みを重ねる中で、弱みや迷いを口にしても受け止めてもらえるという安心感が育ち、本音が自然に行き交う組織へと変わっていきました。社内アンケートでは、心理的安全性の指標が92%まで高まっています。詳しい経緯は、事例記事で紹介しています。

 

 そして、同じ考え方は、私たちPotage自身の会社づくりでも実践しています。その中で、うれしい変化がありました。メンバーが、周りの人にPotageのことを「得難い居場所」だと話してくれるようになったのです。

 

 子育てでどうしてもイレギュラーなことが起きたとき、「お互い様だから」と積極的に送り出す。大切にしている趣味の遠出も「行ってくれるとうれしい」と背中を押す。ちょっとした悩み事をメンバー間で打ち明け合う。そんな助け合いの文化が育ち、この居場所を守るためにも事業に貢献したい、という言葉が自然に出てくるようになりました。

 

 外から与えられた目標のために働くのではなく、自分の大事な場所を守りたいから事業に貢献する。そういう気持ちで働けることが、組織を長続きさせるうえでいちばん大事なことなのではないかと私は考えています。

 

 

組織開発の最初の一歩


 ここまで読んで、「自社でも何かやってみたい」と思ってくださった方に、最初の一歩をお伝えします。

 

 それは、新しい施策を探すことではなく、自分の鳴らしている音を知ることから始める、ということです。自分はどんなことが得意で、何が苦手で、いま何にモヤモヤしているのか。まず自分の内側を言語化するところから、組織の変化は始まります。

 

 組織の側から見るときは、問いの立て方を一つ変えてみてください。「誰が悪いのか」ではなく、「何と何が噛み合っていないのか」。会議で同じ議論が繰り返されている、特定の人にだけ相談が集まっている。そんな場面を、人の問題ではなく噛み合わせの問題として眺めてみると、打ち手の見え方が変わってくるのではないでしょうか。

 

 

よくある質問 


Q. 組織開発とは何ですか?

 A.組織としての一体感を生み出していく取り組みです。組織の中のあらゆるチームが一体感を持って、有機的に、能動的に動いていく状態をつくることを目指します。1on1や対話の場づくり、理念の浸透、組織サーベイなどが代表的な施策です。

 

 

Q. 組織開発と人材開発の違いは何ですか?

 A.働きかける対象が違います。人材開発は個人のスキルや能力を伸ばす取り組みで、研修やコーチングが中心です。組織開発は人と人の関係や組織全体に働きかける取り組みで、対話や関係づくりの施策が中心になります。

 

 

Q. 組織開発では具体的に何をしますか?

 A.組織の状態を測る(サーベイ・特性検査)、個人に働きかける(研修・コーチング)、関係に働きかける(1on1・対話の場・理念共有)の3種類を、課題に合わせて組み合わせます。詳しくは本文の手法の章をご覧ください。

 

 

Q. 組織開発は誰が担当するのですか?

 A.全社的には人事部門が主導するケースが多いです。ただ、現場での変化を実際に担うのは各チームのマネージャーです。人事だけで完結させず、現場のマネージャーと一緒に進める体制を作ることが大切だと考えています。

 

 

Q. 組織開発は何から始めればいいですか?

 A.新しい施策の導入より先に、一人ひとりが自分の特性・得意・苦手・モヤモヤを言語化し、互いに共有することから始めるのがおすすめです。いま組織で起きている噛み合わせのズレを言葉にすることが、施策選びの精度を上げてくれます。

 

 

Q. 組織調律とは何ですか?

 A.Potageが提唱している組織づくりの考え方で、みんながのびのびと働ける場所を調律して作る、というアプローチです。新しい施策を足すことよりも、組織が本来持っているポテンシャルを聴き取り、噛み合わせを少しずつ整えることを大切にしています。


 

まとめ:組織開発の具体例は「足す」ことより「聴く」ことから


 組織開発の代表的な手法と具体例、そして施策を実施しても変化が続かない理由についてお話ししてきました。

 

 1on1もサーベイもワークショップも、一つひとつは有効な施策です。ただ、施策を足し続けるだけでは、トップダウンとボトムアップの距離は埋まりません。大切なのは、その組織にすでにあるもの、すなわち一人ひとりの特性や思い、本来鳴らせる音を聴き取り、噛み合わせを整えていくことではないでしょうか。

 

 Potageでは、EQ(感情知能)の検査やワークショップを通じて、チームの信頼関係づくりと組織調律をお手伝いしています。本文で紹介したCOCOSTYLE社の取り組みの詳細は、事例記事でご覧いただけます。Potageの公式LINEでは、組織づくりに役立つ読み物や、EQ診断のキャンペーンを配信しています。自分の鳴らしている音を知ることから始めてみたい方は、ぜひLINEにご登録ください。


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