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アウトカム思考とは。決めるのが苦手な調整型の管理職が、チームで判断できるようになる考え方

7 日前
読了時間: 11分
アウトカム思考とは。決めるのが苦手な調整型の管理職が、チームで判断できるようになる考え方


 

【この記事のまとめ】

 アウトカム思考とは、資料や成果物といったアウトプットの先に、相手のどんな行動の変化を起こしたいかを見て仕事を組み立てる考え方です。部下の意見を聞くほど決められなくなる調整型の管理職は、チームで何を起こしたいかを先に言葉にすることで、調整の意味合いが変わるかもしれません。その土台には心理的安全性があります。本記事では、ポッドキャスト「シンクリ」での対話をもとに整理します。



目次



 

導入


 部下からの相談には、しっかり寄り添いたい。けれど「○○さんはどう思う?」と聞き返すばかりで、なかなか物事が前に進まない。自分で決めてしまうのが怖くて、はっきり決められない。

 

  チームの声を大切にしてきた人ほど、管理職になってから「決める」ことの重さに戸惑うのかもしれません。意見を聞くことと、決めることのあいだで、どう振る舞えばいいのか。

  

 この記事のもとになったのは、ポッドキャスト番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」の放送です。心理的安全性の専門家である金亨哲氏(きむ・ひょんちょる/株式会社ZENTech)と、EQ(感情知能)の専門家である河原あずさ(Potage株式会社)が、大手企業の新任管理職のリスナーさんから寄せられた「調整型で、決めるのが苦手です。どうしたら上手に意思決定できるようになりますか」というご相談に答えました。



寄り添い型の管理職が「決められない」のは、珍しいことではない


 河原あずさは、ご相談を受けて、自身が行っているEQPIの検査データに触れました。そのデータからは、マネージャーの3分の1ほどが、寄り添い型・共感型の人材であることがなんとなく見えているといいます。調整が得意で管理職に上がったものの、上に行ったら意思決定が苦手になる。日本企業によくあるケースなのかもしれない、というのが河原あずさの見方です。

  

 金氏も、そういうケースはとても多いのではないかと応じました。ご相談の悩みは、ひとりの管理職の性格の問題というより、多くの組織で起きていることとして捉えられそうです。

 


心理的安全性を意識するほど、板挟みになりやすい


 金氏は、ここに意外な要因を挙げています。「心理的安全性」という言葉が、かえって邪魔をしている可能性もあるというのです。心理的に安全な場にしなければ、と考えるあまり、これは少し違うのではと感じる部下の意見まで、意思決定に反映させなければと思ってしまう。そういう方が多い印象だといいます。

  

 いろいろな意見を聞き、ノーとは言わず、できるだけ民主的に進めて、上は調整をしていればいい。河原あずさは、それ自体は一見すると悪いことではないように聞こえる、と前置きしたうえで、チームとして成果を出す観点ではどうなのかを金氏に尋ねました。


  金氏の答えは、意見を聞くこと自体はとてもいいことだというものでした。ただ、会社には上から課された目標や数字がある場合が多い。部下には負わせたくないけれど、自分も達成しなければならない。その間で、管理職やリーダー自身が板挟みになって悩んでしまうことがよくあるのではないか、と金氏は見ています。河原あずさも「優しいマネージャーの方ほど挟まれますよね」と受けました。

  

 板挟みのなかで消耗しやすい管理職の状況については、関連記事「管理職のストレスと限界サイン」もあわせてご覧ください。


 

アウトカム思考とは。アウトプットの先に起きる行動の変化を見る


 では、どうすればいいのか。金氏はまず、チームで何を達成したいのかが決まっていくことが必要だと言います。そのうえで伝えることが多いのが、「アウトカム思考」という考え方です。ここでの「思考」は、考えるという意味よりも、ある方向を志して向かっていく、というニュアンスに近いそうです。

  

 金氏の説明によれば、普段つくり上げるもの、たとえば資料が「アウトプット」です。一方で「アウトカム」は、その先に何が起きるか、人にどういう行動の変化が起きるかを指します。

  

 金氏が挙げたのは、パンケーキのたとえでした。朝ごはんにパンケーキを作るなら、卵を割り、粉を混ぜ、フライパンで焼いて、パンケーキというアウトプットができたら終わりです。けれどお店でパンケーキを出すなら、作ったところはゴールではないはずです。食べた人が「美味しい、また来よう」と思い、リピートして行列ができる。食べてくれた人の行動が変わるところまでがアウトカムで、その先に売上のようなビジネス上の効果がある。アウトカムを意識してアウトプットを作っていこう、というのがアウトカム思考だといいます。

  

 河原あずさは、先の先を見るということだと受け取り、カーネギーの『人を動かす』を引き合いに出しました。何を動かしていくのか、という話だというわけです。

  

 金氏は、この考え方を深めていくと、チームのなかでの会話が変わると言います。「お客さんにこう思ってもらえるものを作りたいから、みんなでこうやっていこう」という視点で皆で話せるか。目の前のTODOではなく、判断のよりどころをもとに対話するということかもしれません。


 

相談に乗ることは手段。どう変わったら解決するかを見定める


 河原あずさは、これを調整型の管理職の悩みに引きつけて言い直しています。調整は、目の前をどうにかすることになりやすい。部下から相談を受けると、この人の相談事をどうにかしなければ、という気持ちになる。けれど、相談に乗ることは、あくまで手段です。

  

 こういう課題があるなら、何がどう変わればこの状況は解決するのか。そこを見定めながら、次の一手を考える。金氏も、その通りだと応じました。


 金氏はスポーツのたとえも挙げています。成功するかどうかとは別に、この試合で何を表現したいのかが分かる指示を監督が出せると、結果にもつながりやすくなる、というのが金氏の見方です。


 

アウトカム型の指示は、「どう動いてほしいか」から始まる


 調整型のマネージャーが、アウトカム思考を身につけるには何から始めればいいのか。金氏は、アウトカムとアウトプットの違いをきちんと理解すること、そして、アウトカム型とアウトプット型の指示の出し方の違いを知ることから始めるのが大事だと答えました。

  

 アウトプット型の指示は分かりやすいものです。この資料を、いつまでに出してほしい。一方でアウトカム型では、資料の中身よりも、受け取った相手の行動が変わればいい。極端に言えば、これまでやっていたかもしれない資料作成がまったくゴールではなくなる可能性もある。

  

 河原あずさは、目的に照らしてステップを考えれば、要らないステップは自分の裁量で外すこともできると受けました。金氏も、大変そうなことを言っているようで、ちゃんと頭を使えば、実は仕事の時間が少なくて済む可能性もあると話しています。


 

判断を任せられるかどうかは、心理的安全性が土台になる


 ナビゲーターの黄瀬真理は、ここで率直な疑問を投げかけました。アウトプットなら、何をいつまでに出すかで管理しやすい。けれどアウトカムは、相手の変化という見えないものを扱うので、指示の出し方も、同じアウトカムを見るためのコミュニケーションも増えて、かえって難しくなるのではないか。

  

 金氏は、こう説明しています。たとえば隣の部署に動いてもらいたいとき。これまでなら資料をひとつ作って、それを通す、という流れになりやすい。けれど相手の部署に納得してもらうには、キーマンに一言話が通っていればいいのか、資料が届けばいいのか、どちらもあり得る。その判断を部下に任せられる状況が作れているかどうかが前提になる、というのです。そして金氏は、その前提として心理的安全性が担保されていることが、とても大事だと話しました。

  

 金氏は、言葉を選ばずに言えばと断ったうえで、世の中の書類の多くは、作らなければいけないから作っているかもしれないとも語っています。もしかしたら、形式に沿って何枚も作るより、二人が話し合った内容が一文、記録として残ればいい場合も多いのではないか。部署同士が相談し合える関係であれば、「お客さんのために、社内のためにやったほうがいい」と思えることを、一緒にやろうと言える。その関係を作れるかどうかの肝は、まず心理的安全性だというのが金氏の考えです。


  金氏もその通りだと応じ、アウトカム思考には二つの効果があると話しています。ひとつは、届いた相手の行動が変わるので、取り組んだ人に「効果があった」という実感が生まれること。もうひとつは、お互いにやることが減ることです。承認を取るための資料をかっちり作り、受け取った側もその承認をどう通すかを考える。本来そこは省けることもあるはずだといいます。

 


AIでアウトプットが簡単に作れる時代だからこそ


 金氏は、AIによって働き方が急速に変わっていることにも触れました。手続き的に、よく分からない長い資料を読まなければならない。そんな経験をした人もいるのではないか。形式的なやりとりをしなくてよくなるほうが、アウトカムに近いというのが金氏の見方です。何を作るかより、何を起こすか。何を作るかを選ぶことが大事になっている、と金氏は語りました。



調整の力は、チームのゴールを話し合うために使える


 対話を振り返って、河原あずさは、調整ごとの意味合いが変わってくる気がすると話しています。これまでの調整は、いろいろな利害関係者のあいだで、まあまあと取りなしながら物事を進めるものだったかもしれません。けれどアウトカム思考のもとでは、調整のスキルは、一段上の場面で使えるものになる。

 

 チームのゴールを考えたとき、私たちはこういう方向で行くのがいい、これは要らない、ここをもっと研ぎ澄ませたい。そういうことをみんなで話すための土台になりながら、プロセスのひとつひとつを整えていく。河原あずさは、そこにこれからのマネージャーのあり方が見えてきたと語りました。

 

 冒頭のご相談にあった「○○さんはどう思う?」という聞き返しも、チームで何を起こしたいかという共通のよりどころがあれば、決めるための対話に変わっていくのかもしれません。黄瀬真理も、便利になっていく時代のなかで、どんな関係性を作れば全体として成果を出していけるのかを、改めて見つめ直したいと話しています。


 

まとめ


•      寄り添い型・調整型の管理職が意思決定に悩むのは、多くの組織で起きていることかもしれない

•      アウトカム思考とは、アウトプットの先に起きる人の行動の変化を見て、仕事を組み立てる考え方

•      相談に乗ることは手段。何がどう変わればよいのかを見定めて、次の一手を考える

•      アウトカム型の指示は「どう動いてほしいか」から始まる。目的に照らせば、要らないステップを外せる

•      判断を部下に任せられるかどうかは、心理的安全性が土台になる

 


よくある質問(Q&A)


Q1. アウトカム思考とは何ですか?アウトプットとの違いは?


A. アウトプットは資料や成果物など、つくり上げるものです。アウトカムは、その先で相手にどんな行動の変化が起きるかを指します。お店のパンケーキでいえば、焼き上がったパンケーキがアウトプットで、食べた人が「また来よう」とリピートするところまでがアウトカムです。アウトカムを意識してアウトプットを作っていくのが、アウトカム思考です。



Q2. 部下の意見を聞きすぎて決められない管理職は、どうすればよいですか?

  

A. まず、チームで何を達成したいのかを言葉にすることから始めてみてください。相談に乗ることは手段であり、何がどう変われば状況が解決するのかを見定めると、次の一手が選びやすくなります。「お客さんにこう思ってもらいたいから、こうやっていこう」と話せるよりどころがあると、意見を聞くことと決めることが両立しやすくなるかもしれません。

 

 

Q3. アウトカム型の指示は、アウトプット型の指示とどう違いますか?


A. アウトプット型は「この資料をいつまでに出して」のように、作るものと期限を指示します。アウトカム型は、相手や関係者にどう動いてほしいかを伝え、そのための手段は任せます。資料を作るのか、キーマンに一言話を通すのか。その判断を部下に任せるには、わからないことを相談し合える心理的安全性が前提になります。


 

▶ この記事のもとになった対話は、以下からポッドキャストでお聴きいただけます。


 

 

 「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」は、株式会社ZENTech 金亨哲氏とPotage株式会社 河原あずさがお届けする番組です。心理的安全性に関する知見については、株式会社ZENTechのサイトもご覧ください。

 


 放送のなかで金氏が紹介した「アウトカム思考マネジメント実践講座」は、株式会社ZENTechが開講する講座です。詳しくはZENTechの講座ページをご覧ください。


 

 Potageでは、EQを軸にしたチームづくり支援(研修・ワークショップ)を提供しています。寄り添い型のマネージャーが力を発揮できるチームづくりや、メンバーとの対話の見直しを考えている方は、お気軽にご相談ください。→ お問い合わせはこちら

 

 


 
 
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