心理的安全性は「誰が言うか」で変わる。中間管理職のための伝わる伝え方
- 河原あずさと36.5編集部

- 4 日前
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【この記事のまとめ】
伝えたことがチームに浸透しないとき、足りないのはリマインドの回数ではないかもしれません。「伝わった」とは、相手の行動が変わった状態のこと。誰から伝わるかを設計し、雑談と相談ができる土壌を整えることが、心理的安全性の高いチームへの近道になります。本記事では、ポッドキャスト「シンクリ」での対話をもとに、そのヒントを整理します。
【目次】
5. まとめ
6. よくある質問(Q&A)
「店舗のメンバーに伝えたことが、なかなか徹底されない」「業務に慣れた社員ほど、社内手続きをギリギリまで後回しにする」。中間管理職やバックオフィスの立場で、こんな悩みを抱えていないでしょうか。何度リマインドしても変わらないとき、伝え方そのものを見直すタイミングなのかもしれません。
この記事のもとになったのは、ポッドキャスト番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」の放送です。心理的安全性の専門家である金亨哲氏(きむ・ひょんちょる/株式会社ZENTech)と、EQ(感情知能)の専門家である河原あずさ(Potage株式会社)が、リスナーの皆さまから寄せられた「伝わらない」「動かない」にまつわる相談に答えました。
「伝えたのに動いてくれない」のはなぜか
番組には、フルリモートのIT企業でバックオフィスを担当するリスナーさんから「社内手続きを後回しにする社員に悩んでいる」というご相談が、また小売業の管理職のリスナーさんから「店舗のメンバーに伝えたことが徹底されない」というご相談が寄せられました。
金氏はここで、そもそも「伝わっている」とはどういう状態かを問い直します。金氏の見解によれば、伝わっているとは、伝えられた人の行動が変わっている状態のこと。行動が変わるところまで届いていないなら、そもそも伝わっていないのではないか、という視点です。
河原あずさは、研修会社から聞いた話として「知っている」と「実際にやれる」のあいだにあるギャップを紹介しました。知識として知っている状態と、行動に移せる状態のあいだには溝があり、そこに橋をかけることが行動を変えるうえで大切だという考え方です。「伝えたのに動かない」の多くは、この溝の手前で止まっているのかもしれません。
伝えても動かない状況が続くと、板挟みになる管理職自身が疲れてしまいます。関連記事「管理職のストレスと限界サイン」もあわせてご覧ください。
リマインドを増やすより、「誰が言うか」を設計する
では、どうすれば行動が変わるところまで届くのでしょうか。金氏は、仕組みで解決しようとすると「リマインドを増やす」方向になりがちだと指摘したうえで、コミュニケーションでの解決策をふたつ挙げました。
ひとつめは、悩みや困りごとをきちんと伝えられる場所、雑談や相談ができる場所がチームにあるかを見直すこと。ふたつめは、伝言ゲームのように「伝えてもらう」側に回ってもらうことです。金氏によれば、人は誰かに伝える役割を担うと、能動的に内容を自分の中に落とし込もうとします。6〜7割の理解だった人が、伝えるために学び直して8〜9割まで到達することもよくあるのではないか、というのが金氏の見立てです。学校時代の「教え合うと自分も学べる」経験と同じ構造です。
そして、誰に発信役をお願いするかも重要です。金氏は「この人から言われたら、やらなきゃな」と周囲が思えるような、日ごろの行動で信頼を積み重ねている人を探してみることを勧めています。
河原あずさは自身の会社員時代を振り返り、経費精算をためがちだったことを振り返りました。事務的に「ちゃんとやってください」と言われてもなかなか動けなかったけれど、仕事への姿勢を尊敬している人から「数日でいいので早めに回してもらえると助かります」と言われたら、早めに出そうと心がけたかもしれない。同じ内容でも、誰からどんな状況で言われるかで、受け取り方は大きく変わるという実感です。
ワークする仕組みは、文化を反映している
相談にあった「後回しにさせない仕組みや文化」について、河原あずさはひとつの見方を示しました。ワークする仕組みは、その会社の文化を反映しているという考え方です。エンジニアが集まる会社ならプログラミング思考の仕組みが自然に定着しますが、同じ仕組みを感性豊かなメンバーが集まる会社に持ち込んでも、うまくいくとは限りません。
これを受けて金氏は、仕組みづくりの一歩目は「自社にはこういう人が集まっている」と自分たちの文化を知ることだと述べました。さらに、フルリモートの組織ほど文化の言語化はハードルが高くなるからこそ、「自分たちはどんな働き方をしたいのか」を話す時間を定期的に設けることを勧めています。遠回りに見えて、大切にしたい文化が共有されていれば、仕組みはその上で機能しやすくなります。逆に、大事にしたいものが脅かされると人は強い抵抗を感じるものだ、というのが金氏の見立てです。
空気が重いチームで、ひとりのメンバーにできること
番組にはもうひとつ、切実な相談が届きました。遅延している大型システム開発プロジェクトに途中から加わり、空気が重く、会議も結論が出ない。全体会議で発言する勇気はまだ出ないけれど、一メンバーとしてプロジェクトを前に進めたい、という相談です。
金氏が挙げた第一歩は、その悩みそのものを、伝えられる範囲の上司や信頼できる人に伝えてみることでした。興味深いのは、金氏が紹介した「話しやすさ」のとらえ方です。ZENTechで心理的安全性の研究を始めた当初から話されてきたこととして、率直に発言し合う文化が根づいた組織だけでなく、日本の組織では「上司に耳打ちしたら会議で代わりに言ってくれる」ことも、話しやすさのひとつに数えられるのではないか、という視点です。
河原あずさはこれを「根回し」と重ねつつ、決してアンフェアなやり方ではないと整理しました。ひとりの意見のままで終わらせず、チームの中で影響力のある人に話してみて、共通認識の輪を広げていく。世論形成のアプローチとして、むしろ有効ではないかという見方です。
金氏はもうひとつ、視点の大きな提案も添えています。大型のプロジェクトであるほど、最初にチーム全体の心理的安全性を担保する期間をつくったほうが、あとの手戻りが減るのではないか、というものです。雑談ができない環境で相談ができるだろうか、という前回ゲストの倉貫義人氏の著書にある問いを引きながら、キックオフの前にコミュニケーションできる状態を整えておくことの大切さを語りました。
ナビゲーターの黄瀬真理は、雑談の意味をこう受け取っています。雑談を通じてチームにどんな人がいるかを知っていると、困ったときに「この人に相談すると先に進むかもしれない」という勘が働く。何気ない雑談が、誰の力を借りるかを見極める土台になるという気づきです。
雑談や相談の場づくりという意味では、1on1の設計も同じ文脈にあります。関連記事「1on1の目的と形骸化を防ぐ考え方」も参考にしてみてください。
まとめ
・「伝わった」とは、相手の行動が変わった状態。行動が変わるまで届いていないなら、まだ伝わっていないのかもしれません
・徹底したいことは、リマインドを増やすより「誰から伝わるか」を設計する
・「伝えてもらう」役割を任せると、本人の理解も深まり、チームへの浸透も進む
・ワークする仕組みは文化の反映。まず「自分たちはどんな働き方をしたいか」を言葉にする
・空気が重いチームでは、信頼できる人にまず相談することが第一歩。根回しはアンフェアではない
・雑談と相談はセット。話せる土壌づくりが、心理的安全性のベースになる
よくある質問(Q&A)
Q1. 伝えたことがチームに徹底されないのはなぜですか?
A. 「伝わった」とは、相手の行動が変わった状態を指します。知っていることと、実際にやれることのあいだにはギャップがあるため、伝達の回数を増やすだけでは行動は変わりにくいものです。誰から伝わるかを設計し、伝えられた人が誰かに「伝える側」に回る仕掛けをつくると、理解と定着が進みやすくなります。
Q2. 心理的安全性が低いプロジェクトで、一人のメンバーにできることはありますか?
A. まず、感じている問題意識を、伝えられる範囲の上司や信頼できるメンバーに相談してみることが第一歩です。全体の場で発言できなくても、影響力のある人に話して共通認識の輪を広げていくことは、遠回りに見えて有効なアプローチです。上司に耳打ちして代わりに発言してもらうことも、日本の組織では「話しやすさ」のひとつと考えられます。
Q3. リモートワークのチームで、文化やルールを定着させるにはどうすればよいですか?
A. フルリモートの組織ほど、文化の言語化はハードルが高くなります。だからこそ、「自分たちはどんな働き方をしたいのか」を話す時間を定期的に設けることが土台になります。仕組みは文化を反映してこそ機能するため、リマインドの仕組みを増やす前に、雑談や相談ができるコミュニケーションの土壌を整えることが近道になります。
▶ この記事のもとになった対話は、ポッドキャストでお聴きいただけます。
「伝えたのに動かない」を変えるには?チームに徹底力を生む方法(stand.fm)
「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」は、株式会社ZENTech 金亨哲氏とPotage株式会社 河原あずさがお届けする番組です。心理的安全性に関する知見については、株式会社ZENTechのサイトもご覧ください。
Potageでは、EQを軸にしたチームづくり支援(研修・ワークショップ)を提供しています。「伝わらない」「動かない」の背景にあるチームの関係性から見直したい方は、お気軽にご相談ください。→ お問い合わせはこちら





