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BeRealは「心理的安全性が高い」のか?テクノロジーが変える組織コミュニケーションと対話の本質

BeRealは「心理的安全性が高い」のか?テクノロジーが変える組織コミュニケーションと対話の本質

【目次】



 Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織やコミュニティの中で混ぜ合わせることで新しい価値を生み出す。そんな想いで、日々コミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。


 心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと毎週お届けしている音声配信番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」、略して「シンクリ」。早くも第7回目となる今回は、最近巷をざわつかせているSNS「BeReal(ビーリアル)」をきっかけに、テクノロジーと心理的安全性の関係について、ひょんちょるさんと深く語りました。ナビゲーターは木瀬さんです。



「BeReal」が浮き彫りにする、心理的安全性のあたらしい論点


 ここのところ、BeRealを発端としたトラブルが続いています。とある銀行では、顧客の名前が映り込んだ写真がアップされ、謝罪のプレスリリースが出る事態にまで発展しました。研修中の社内風景が外に流れて炎上した事例も報じられています。


 BeRealは、その場で撮った写真をすぐ投稿し、すぐに消えていく、いわゆるクローズドなSNSです。「自分が投稿しないと他人の投稿も見られない」という独特の設計で、学生層を中心に若い世代に広く浸透しています。


 今回この話題を取り上げたきっかけは、Voicyパーソナリティ仲間で大学教員の針木義勝さんから聞いた、学生たちの言葉でした。「なぜBeRealを使うのか」と尋ねたら、返ってきた答えが「だって心理的安全性が高いから」。仲間内しか見ていないから何でも投稿できる、飾らなくていい、だから安心して使えるのだと。


 若い人にとっての「心理的安全性」とは、そういう文脈で使われている。それは新鮮な驚きであり、同時に、少し立ち止まって考えたい現象でもありました。テクノロジーと心理的安全性は、現代の組織やコミュニケーションを読み解く上で外せないテーマだと感じます。



「内輪の安心」と心理的安全性は同じではない


 ひょんちょるさんに第一印象を尋ねると、「半分は確かに正しい」という反応でした。会議は人数が少なければ少ないほど発言しやすくなる、という研究もあります。閉じた空間で、見られている人の数が少ないからこそ言いやすい。その感覚自体は事実だと


 ただ、もともと心理的安全性という概念は「率直に何でも言い合える関係性」を指しています。クローズドな場でしか言い合えないのだとしたら、それは心理的安全性の定義からはむしろズレている。学術的な意味合いとは少し別物になっている、というのがひょんちょるさんの見立てでした。teamsやsalckでもDMだけで完結していたら、それは組織として機能している関係性とは言えないですよね。


 話しながら改めて気づいたのは、心理的安全性とはそもそも「多様性のある組織を機能させるための関係づくり」の概念だということです。立場や背景の異なるメンバー同士が、率直にお互いの見方を交換できるからこそ、組織は前に進める。Googleの研究をはじめ、この概念が広がってきた背景には、そうした文脈がありました。


 ところがBeRealの「安心感」は、徹底的に内輪、つまり同質性の上に成り立っています。「外の人とつながるための心理的安全性」と、「内輪を確かめ合うための安心感」が、同じ言葉で語られている。ここに、現代的なねじれを感じます。安心と心理的安全性は、似ているようで違うのです



プールで泳ぐ前に大海原へ放り出される時代


 ひょんちょるさんが指摘したもう一つの論点が、とても印象的でした。昔のSNS体験は、段階的だったというのです。


 最初は友達数人とメールをやり取りし、掲示板に書き込み、ミクシィの日記に「面白いね」と反応をもらう。小さな発信と小さな承認欲求が、ゆっくりと循環する時代でした。先輩からたしなめられながら、ネット上の作法を身につけていった世代もいるはずです。


 ところが今は、TikTokやインスタのリールで「いきなりバズる」ことが目指されることもある時代です。承認欲求をハックするように設計されたプラットフォームの上で、若い世代は「プールで練習する前に、いきなり大海原に放り出されている」状態なのではないか。そんな例えがしっくり来ます。


 しかも、BeRealのような「閉じた場所」は、本当の意味ではクローズドではありません。プラットフォーム側はデータを保有していて、規約によっては著作権も含めて持っていく構造になっています。情報やプライバシーを切り売りすることで成り立つ無料サービスの構造に気づかないまま、ユーザーは「ここは安全だ」と油断し、自分自身を切り出していく。


 プラットフォームが用意した仮初めの安全性を、本物の安全性と取り違えてしまう。これは個人だけでなく、組織や企業の情報リテラシー、ひいては組織文化のあり方にも関わる、根深いテーマだと感じます。



心理的安全性を高める方法は「小さく失敗できる場」にある


 ではどうすればいいのか。ひょんちょるさんから出てきた答えは、シンプルですが本質的でした。「致命的な炎上だけしなければ、小さく失敗できる体験を積めばいい」と。


 子どもの頃、私たちは小さくやらかしては誰かにたしなめられ、周りがやらかしているのを見て叱られる場面を眺め、「ああ、これはやっちゃダメなんだ」と学んできました。今のインターネットには、その「小さく試して、小さく失敗できる場」がほとんどありません。誰にも止められないまま、いきなり大きく炎上してしまう構造になっています。


 組織やチームの中でも同じことが言えます。小さな失敗や違和感を受け止め合える文化がなければ、メンバーは何も発信できなくなる。心理的安全性を高める方法を考える上で、「小さく試して、小さく失敗できる場」を整えるリーダーシップは、これからますます重要になっていくはずです


 話の途中で、私たちは「インターネット老人会」モードに入ってしまいました。はてなダイアリーやミクシィの日記が盛り上がっていた時代。お金を稼ぐためではなく、カルチャーを作るために手を動かしてコードを書き、サーバーを立てていた時代があったのです。


 いまのBeRealはフランスの巨大スタートアップで、何千億もの資金を調達してビジネスとして展開されています。プラットフォームが大きなビジネスになるほど、データ提供やプライバシーの切り売りといったトレードオフが構造的に生まれてしまう。それが歪みとして表に出てきているのが、現代のインターネットの姿だと言えそうです。


 一方で、ひょんちょるさんから希望のある話も出ました。VCの上場ハードルが上がりつつある今、他社資本に頼らず「自分たちが本当に作りたいもの」を作るスタイルへ回帰する起業家が出てきているのだそうです。さらにAIの発展でプロトタイプは誰でも作れる時代になりました。テクノロジーと心理的安全性の未来は、決して暗いものばかりではないのです。



テクノロジー時代の心理的安全性とチームづくり


 ナビゲーターのきのせさんは、放送の最後に「リアルとネットがいつもつながっている中で、自分の居場所をどう持つか。これはあらゆる世代に共通するテーマですね」と締めくくってくれました。


 テクノロジーと心理的安全性の関係は、若者だけの話ではなく、私たち全員の働き方・生き方、そして組織文化づくりに直結する問題です。BeRealをきっかけに広がった議論は、思っていたよりずっと深く、奥行きがありました。ぜひ本編の音声配信もあわせてチェックしてみてください。




 
 
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