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「形だけの1on1」はなぜ起きる?中間管理職のための本音を引き出す対話術

更新日:7月7日


【目次】


 Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。「個」の可能性を引き出し、組織の中で混ぜ合わせることで新しい価値を生み出す。そんな想いで、コミュニティづくりや組織文化の変革に伴走しています。


 心理的安全性の専門家である株式会社ZENTechの金亨哲(きむ・ひょんちょる)さんと一緒にお届けしている音声配信番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」。ナビゲーターのきのせさんを加えた3人で、現場のリアルなお悩みに向き合っています。


 今回のテーマは、ナビゲーターのきのせさんが持ち込んでくれた「1on1」です。事前アンケートで「最も処方箋が欲しいモヤモヤ」を尋ねたところ、最も回答が多かったのが「形だけの1on1」でした。時間は取っているのに、お互い本音を話せていない。とくに中間管理職の方から、そんな声が多く寄せられています。本記事では、形だけの1on1がなぜ起きるのか、そしてメンバーの本音を引き出し、心理的安全性を高める対話術を掘り下げます。

 


なぜ「形だけの1on1」は起きるのか


 ひょんちょるさんも「本当におっしゃる通り」とうなずいた、形だけの1on1問題。1on1が形骸化する背景には、いくつかの構造があります。


 ひとつは、制度としての1on1の広がりです。「1on1をやりなさい」「キャリア面談でメンバーを支援してください」と会社から求められ、それまで自分のチームの数字を追っていればよかった中間管理職が、突然、メンバーと1対1で定期的に向き合うことになる。プレイングマネージャーとして自分の業務を抱えながら、本音で話し合う場をいきなり持とうとすると、ハードルが高いのは当然です。


 もうひとつは、関係性が育っていないところから始まること。新任のリーダーや異動直後で、ミーティングですらまだ話したことのない相手と、急に1on1をすることになる。これでは「何を話せばいいかわからない」と戸惑うのも無理はありません。さらに、初任や数年目のマネージャーは、マネジメント自体が手探りです。自分も悩んでいるのに、メンバーの悩みまで聞かなければならない。そんな板挟みの状態に置かれている方も、少なくないのです。


 

心理的安全性を高める鍵は「上司の自己開示」


 では、形だけの1on1をどう変え、心理的安全性を高めていけばいいのか。放送で繰り返し出てきたキーワードが「上司の自己開示」です。


 ひょんちょるさんによれば、素敵な1on1ができている関係は、なぜか趣味の話がすっとできていることが多いそうです。たとえば、プラモデルにハマっているメンバーに上司が教わり続けたら、関係がぐっと良くなった、という話。最初から仕事の核心に切り込むのではなく、相手が気持ちよく話せる入り口をつくることが、本音を引き出すうえで遠回りのようで近道になります。


 オンラインの1on1なら、できる限り上司から顔を出すこと。背景に映る本棚など、そこから話題を拾うだけでも、対話のきっかけは生まれます。私自身がワークショップでよく使うのは、「スマホのカメラロールから、自分を象徴する一枚を選んで共有する」というアイスブレイクです。子どもの写真でもラーメンの写真でも、人は語れる一枚を必ず持っているもので、これが関係性の糸口として驚くほど効きます。


 

メンバーの本音を引き出すEQと「弱さを見せる」リーダーシップ


 関係性ができていないのに、いきなり本音を、というのは難しいものです。とくにメンバーにとって、上司は「評価する立場」。本音を出しづらいのは当然です。だからこそ、まず上司側が弱さを見せることに意味があります。これは、強さで引っ張るカリスマ型ではなく、共感で支える新時代のリーダーシップにもつながります。


 私が会社員だった頃の上司は、隣の席で愚痴をこぼす人でした。「最近こう言われて困っててさ」と。その場で解決策を出すわけではないのですが、聞いているうちに「何かを返したい」という気持ちになる。そして上司が弱音を見せてくれることで、自分も困ったときに頼っていいんだ、とハードルが下がっていきます。ZENTechでは、リーダーに必要なのは「のび太力」ーードラえもんに素直に泣きつける力ではないか、という話もあったそうです。


 これはEQ(感情知能)の観点ともつながります。私が扱うアセスメントには、「心を開く」姿勢を表す「心開(しんかい)という要素があります。これが高い人は、自分の弱みや困りごとをまっすぐ開示できるため、周囲とのコミュニケーションがスムーズになります。返報性の法則も働き、本音を話すほど、周りも本音を話すようになる。とはいえ、いきなりフルオープンにする必要はありません。私が研修でお伝えしているのは「1.1倍の心開」です。今までの開示の幅を、ほんの少しだけ広げてみる。一人ひとりが1.1倍になれば、組織全体では何倍にも本音の幅が広がっていくのです。


 

1on1は「教える場」ではなく「聞く場」。小さな積み重ねが組織文化を変える


 1on1で上司からよく聞くのが、「どう教えていいのかわからない」という声です。けれど、ここには誤解があります。1on1は教える場ではなく、話を聞く場「何かいいことを教えなければ」というプレッシャーから上司を解放することも、対話型マネジメントの第一歩です


 大切なのは、相手が今「ただ聞いてほしいのか」「ヒントが欲しいのか」を見極めること。放送では、ティーチングとコーチングを明確に使い分ける上司の例も紹介されました。普段はコーチングで気づきを渡し、数字を追う局面では教える。普段から信頼を積み重ねているから、必要なタイミングでトップダウンな関わりが入っても関係は崩れない。この使い分けができると、メンバー育成は一気に進めやすくなります。


 そして、本音にたどり着くまでには時間がかかります。きのせさんからの「小さなマイルストーンの置き方は?」という問いに、ひょんちょるさんは2つのヒントを挙げました。ひとつは単純接触効果。月1回30分よりも、週10分を月4回のほうが、構えずに本音を話しやすくなる。「実は今日は話すことがないんですけど」から始められる関係こそ、強いのです。もうひとつは、上司が「メンバーの困りごとを助けよう」というスタンスで臨むこと。「この連絡、文面を一緒に作ってみようか」といった些細な助け合いの積み重ねが、本音への近道になります。


 最初の1回は、あえて仕事の話を一切せず、趣味や雑談だけに割り切ってみる。「今日は趣味の話しかしない時間にしたいんです」と最初のひと言を上司の側から伝えられたら、メンバーの方もぐっと柔らかくなるはずです。


 いきなり大きく変えようとせず、小さな積み重ねを大切にすること。1.1倍でいい、少しのストレッチを自分に課していくこと。重く受け止めすぎないことが、心理的安全性あふれる1on1への近道になります。こうした小さな対話の積み重ねが、やがて組織文化そのものを変えていきます。


 「シンクリ!」では、こうした現場のリアルなお悩みに、ひょんちょるさんの心理的安全性の知見と、私のコミュニティ・EQの知見を掛け合わせて、解決のヒントを探っていきます。あなたのモヤモヤこそが、誰かのチームを救うヒントになるかもしれません。番組へのお便りも、お待ちしています。


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