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AI時代の部下マネジメント。枚数と「決めてほしいこと」を先にそろえる

10月26日
読了時間: 10分
AI時代の部下マネジメント。枚数と「決めてほしいこと」を先にそろえる



【この記事のまとめ】

 部下がAIでつくった資料に間違いや読みにくさが増えているのは、部下の後ろにAIという「部下」が何人もいて、確かめるべき量が一気に増えたからかもしれません。AIを使うときのチェックをルールとして言葉にし、資料の枚数と「決めてほしいこと・判断材料」を先にそろえる。本記事では、ポッドキャスト「シンクリ」での対話をもとに、その進め方をまとめます。



【目次】


 


導入


 AIで資料をつくること自体は、もう珍しいことではなくなりました。ただ、受け取る側に回ると、明らかに間違った内容が入っていたり、「これは誰が読むのだろう」と感じる資料が届いたりする。気づけば自分で手を入れて直している。かといって、部下に不満をそのまま伝えるのもためらわれる。

  

 こうしたやりとりが繰り返されると、届く資料のどこを信じてよいのかが分からなくなっていきます。効率が上がるはずのAIが、かえって上司の手間を増やしている。そう感じている経営者や管理職の方は少なくないのではないでしょうか。

  

 この記事のもとになったのは、ポッドキャスト番組「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」の放送です。心理的安全性の専門家である金亨哲氏(きむ・ひょんちょる/株式会社ZENTech)と、EQ(感情知能)の専門家である河原あずさ(Potage株式会社)が、中小企業の経営者のリスナーさんから寄せられた「資料をAIでつくってそのまま持ってくる部下が増えた。間違った内容や、誰が読むのかという資料もあり、自分で直すこともあるが、不満を言うこともできず悶々としている」というご相談に答えました。


 

部下の後ろに、AIという「部下」が増えている


 金氏がまず示したのは、部下の方が、さらにAIという部下をたくさん使っている状態になっているという見立てでした。AIを人とみなすならば、経営者の方がマネジメントしなければならない総量は、本人が抱えたつもりもないうちに増えている、ということになります。

  

 金氏は量の変化をこう説明しています。以前であれば、部下が1週間に10個のアウトプットを出し、それが5人いれば、50個を見ればどうにかなった。ところがAIを使えば、1日に10個から20個のアウトプットを出そうと思えば出せてしまう。確かめるべき量が、何倍にも膨らんでいるわけです。そしてAIの進展が早すぎるために、組織の構造や体制を変えるスピードが追いついていない会社がほとんどではないか、と金氏は語ります。

  

 一方で、資料を出す部下の側は、自分がAIをマネジメントしているという感覚を持ちにくい。最後は上司にチェックしてもらえば大丈夫だ、と受け止めていることもあるかもしれません。河原あずさは、これをAIを使うほど、AIそのもののマネジメントのコストが上乗せされていく構造だと受け取りました。部下の側がAIという部下を持っている感覚で品質を見ていかないと、判断する立場の人の負荷は上がる一方になっていく。

  

 判断する立場の人に負荷が集まる状態については、関連記事「管理職のストレスと限界サイン」も参考にしてみてください。


 

AIを使うときのチェックを、ルールとして言葉にする


 そのうえで金氏は、今回のご相談は実はとても解決しやすいほうだと話しました。相談者が経営者であり、社内のルールをつくれる立場にあるからです。

  

 金氏がすすめるのは、AIを活用する場合に必ず入れるチェックを、ルールとして明文化することです。よい資料が上がってくるかどうかを部下一人ひとりの力量に任せていると、どうしてもばらつきが出てしまう。だからこそ、部下の皆さんが共通して必ず確かめる点を、言葉にして示しておく。

  

 河原あずさはこれを、チェックの役割は資料を出す本人が持つ、と明言することだとまとめています。AIでつくった資料を確かめるのは人間の責任の部分であり、そこをはっきりさせておかないと、上司の側が確認を抱え込み続けることになりそうです。


 

枚数を先に決めると、大事なポイントが返ってくる


 では、自分も知らない情報がいつの間にか資料に入り込んでくる状況で、チェックをどう実装すればよいのか。河原あずさの質問に、金氏はまずAIの性質から話しました。少し伝えただけなのに、頼んでいないところまで調べたり、資料に落としたりする。河原あずさも「頼んでいない枝葉をつけてくることがある」と応じています。

  

 金氏によれば、これが負担になる理由ははっきりしています。人間が一度に認知できる量には限りがある。脳の仕組みは変わっていないし、外付けの装置があるわけでもありません。

  

 そこで金氏自身がよくやっているのが、AIに「何枚までのPDFにしてください」と枚数を指定する方法です。そうすると、一番大事なポイントが返ってきやすくなる。これを部下にも共有して、上に上げるときは何枚までのPDFにする、と決めておくと、上司はかなり楽になる、と金氏は語ります。

  

 河原あずさは、報告の様式を決めることも同じ効果があると重ねました。金氏も、これは人に対してやることとあまり変わらないと言います。まず決めた形で受け取り、それでよいと判断できたら、そのとき初めて詳しい資料を出してもらえばいい。


 

「決めてほしいこと」と判断材料を出してもらう


 河原あずさは、自身も中小企業の経営者の一人として、資料を受け取る側の実感を話しました。一見まとまっているように見えるのに、読み終えて「自分は何を決めればよいのか」が分からない。よく見ると、判断の材料もあまり入っていない。そうした資料に出会うことがあるといいます。

  

 そこで河原あずさが挙げたのが、決めてほしいことと、その判断材料をいくつか必ず出してください、とルールにすることでした。金氏も、それだけで全然変わってくると同意しています。

  

 金氏はさらに、仕事は分量ではないという点を添えました。大学のレポートで「何千字書いてください」と言われ、字数を埋めるために、なくてもよい一文を入れてみたこともあったかもしれない、と振り返りながら、長く書けばよいわけではないと言います。大事なのは、読む立場の人がどう受け取るかを考えて構成することです。


 

盛りだくさんの資料は、通るかどうかの不安の表れかもしれない


 河原あずさは、プレゼン資料づくりでよく伝えていることを紹介しました。伝えたいことを最初に出し、基本的には一枚のスライドで言いたいことを言い切る。けれど人は不安なので、いろいろ載せたくなる。

  

 河原あずさはこれを「盛り盛り海鮮丼」と呼んでいます。エビもマグロもサーモンも載っているけれど、どれもこの土地で獲れるものではない。この土地ではアジが一番おいしいのなら、アジの刺身丼をどんと出してほしい。何でも盛り込めてしまう時代だからこそ、本当に伝えたいことを出していくことが大事になる、という話です。

  

 金氏は、盛りだくさんの資料の背景にある部下の気持ちに目を向けました。部下も盛りたくて盛っているわけではなく、通るかどうか分からないから、AIがたくさん出してくれたものをそのまま渡している可能性がある。だから上司の側から「まずは1枚でいいよ。こちらも読むのが大変だから」と伝える。1枚で分からなければ、上司が「分からない」と言えばいいだけです。そう伝えることで、お互いが楽になるのではないか、と金氏は語りました。

  

 河原あずさの言葉でいえば、上司の好物が分からないから、エビもカニもマグロもウニも入れてしまう。刺身ひとつに、わさび醤油をかけて持ってきてくれればいいと言っておけば、そういう資料が届くようになっていく。


 

AIでつくった資料にも、考えた跡を残す


 ここまでの話を受けて、河原あずさは想像で仕事をしないことの大切さを挙げました。自分が求めているものを相手に伝える。部下の側も、想像上の相手のニーズに向けて資料をつくらない。AIとうまく仕事をしていくためには、人同士のコミュニケーションで何を握るかが、一番最初に大事になる。

  

 金氏も、相手を尊重することができていれば、AIがつくったか自分がつくったかは関係ないと話しています。相手にとって一番価値のあるポイントを先に伝える資料にする。それだけでも全然変わるのではないか、という考えです。

  

 ナビゲーターの黄瀬真理は、ひとつ前の回で話題になったアウトプットとアウトカムの話につなげて振り返りました。アウトプットをつくることは、ある意味簡単になった。けれど、それをそのまま持っていくと、本人の思考が入りにくいのではないか。手で書くしかないときは、うまい資料でなくても必ず考えるので、そこに思考と意見が入る。AIで出したものをそのまま横流しするならば、意見は薄くなる。受け取る人が本当に求めているのは、その「意見」なのかもしれません。当たるか分からなくても、相手のことを思って自分の考えをぶつけてみる。そうした部分こそが、これから求められていくのではないか、と語っています。

  

 金氏は放送の最後に、AIとの適切な距離の置き方は、組織単位でも自分単位でも大事になる、と締めくくりました。部下が持ってくる資料に悶々としたときは、部下を責める前に、チームとしてAIとどう付き合うかを決めていないことに目を向けてみる。枚数や「決めてほしいこと」をそろえることは、その最初の一歩になりそうです。


 

まとめ


  • 部下の資料が増えたのは、部下の後ろにAIという「部下」が増え、確かめるべき量が何倍にもなったから

  • AIを使うときに必ず入れるチェックを、ルールとして明文化する。確かめる役割は資料を出す本人が持つことを互いに認識する

  • 一つのアイディアとしては、AIにも部下にも、資料の枚数を先に指定することも有効。一番大事なポイントが返ってきやすくなる

  • 「決めてほしいこと」と判断材料を必ず出してもらう。仕事は分量ではない

  • 盛りだくさんの資料は、通るかどうかの不安の表れかもしれない。「まずは1枚でいい」と上司から伝える

  • AIでつくった資料にも、本人の考えを添える。人同士で何を握るかが最初に大事になる


 

よくある質問(Q&A)


Q1. 部下がAIでつくった資料に間違いが多いとき、どうすればよいですか?


A. 部下一人ひとりの力量に任せるのではなく、AIを使うときに必ず入れるチェックをルールとして明文化するのがおすすめです。AIでつくった資料を確かめるのは人間の責任の部分であり、その役割は資料を出す本人が持つ、とはっきりさせておくことで、上司が確認を抱え込み続ける状態を避けやすくなります。

 

 

Q2. 部下がAIでつくった資料が長すぎて読みきれません。どう伝えればよいですか?


A. 資料の枚数を先に決めて伝える方法があります。AIは少し頼んだだけでも、頼んでいない範囲まで調べて長い資料を返してくることがあります。「何枚までのPDFにする」と指定すると、一番大事なポイントが返ってきやすくなります。部下には「まずは1枚でいい」と伝え、必要になったときに詳しい資料を出してもらえば十分です。

 

 

Q3. 資料を受け取っても、何を判断すればよいのか分かりません。


A. 「決めてほしいこと」と、その判断材料をいくつか必ず出してもらうことを、報告のルールにしてみてください。一見まとまっているように見える資料でも、何を決めればよいのかが書かれていないことがあります。報告の様式を決めておくことで、上司と部下の双方が楽になります。


 

▶ この記事のもとになった対話は、ポッドキャストでお聴きいただけます。

 

 

 「シンクリ!心理的安全性あふれるチームづくり相談所」は、株式会社ZENTech 金亨哲氏とPotage株式会社 河原あずさがお届けする番組です。心理的安全性に関する知見については、株式会社ZENTechのサイトもご覧ください。

 


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