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会話のポゼッション率で高まるチームの心理的安全性

「偽の心理的安全性」に要注意!チームの忖度が隠す本当の課題

記事の3行要約

  • サッカーの「ポゼッション率」を会話に応用すると、チームの心理的安全性が可視化できる。

  • 理想は全員の発言量が均等になること。そこから「違い」を活かすチームビルディングが始まる。

  • 強いチームは、凸凹を打ち消すのではなく、組み合わせて新しい絵を描いている。



「ポゼッション率」という視点がチームビルディングを変える


 Potage株式会社代表取締役、コミュニティ・アクセラレーターの河原あずさです。


 ワークショップやチームビルディングの現場に立つ中で、私が大事にしている指標があります。それが「会話のポゼッション率」です。


 ポゼッション率といえば、サッカーを思い浮かべる方が多いかもしれません。90分の試合の中で、どちらのチームがどれくらいボールを保持していたかを示す数値です。浦和レッズが53%、鹿島アントラーズが47%。そんな具合に、ゲームの主導権がどちらにあったかを読み解くための指標として使われています。


 この概念を、チーム内の会話に転用してみます。すると、チームビルディングにおいて見落とされがちな、とても大事なことが浮かび上がってきます。



心理的安全性の高いチームは「25%ずつ」で話している


 ここで皆さんに問いかけてみたいのですが、4人のチームで会話をしているとき、理想的なポゼッション率の配分って、どれくらいだと思いますか。


 答えは、25%ずつです。


 これは私の現場感覚だけでなく、心理的安全性の研究からも裏付けられていることです。心理的安全性の高い組織では、メンバー間の発言量がほぼ均等になっているという特徴がある。逆にいえば、発言量に大きな偏りがあるチームは、心理的安全性が低い状態にある可能性が高いということです。


 たとえば、リーダー格のAさんが全体の70%を話していて、残りの3人が10%ずつ。あるいは、経験年数の近い2人が合わせて80%、若手2人で20%。こうした光景は、どの職場でも見覚えがあるのではないでしょうか。


 声の大きい人に発言が偏ると、何が起きるでしょうか。発言量の多い人は「いい議論ができている」と感じているかもしれません。しかし発言量の少ない人は、本音を言えないまま、顔色をうかがい、忖度し、「まとまっといたほうが楽だな」と口をつぐんでいる......そこには、表面化しにくい意識のギャップが横たわっています。この「気持ちよく話しているつもりの人」と「黙っている人」のあいだにある溝こそが、チームの一体感を蝕む原因になっているのです。



均等な発言から始まる「違いを活かす」チームづくり


 では、心理的安全性の高いチームは何が違うのか。それは、メンバー同士がお互いの発言量を意識し、自然と均等になるように配慮しているという点です。


 Aさんが話し始めて、少し長くなったなと感じたら、「ところでBさんは、この件についてどう思いますか?」と振る。Bさんの意見を聞いたら、「Cさんはどうですか?」と広げていく。こうして全員がテーブルの上に自分の考えを並べることで、はじめてチームとしての合意形成が動き出すのです。


 ここで重要なのは、全員が同じ意見を持つことではありません。むしろ大事なのは、それぞれの「違い」が見えるようになることです。


 チームビルディングにおいて、違いは排除すべきものではなく、活かすべきものです。全く同じ人間が4人集まっても、チームはうまく機能しません。なぜなら、価値というものは「違い」から生まれるからです。


 パズルのピースを想像してみてください。ひとつひとつのピースには、出っ張っているところと凹んでいるところがあります。これはそのまま、一人ひとりの得意と苦手に言い換えられる。出っ張りと凹みが噛み合うからこそ、ピースは組み合わさり、一枚の絵が完成するのです。



ファシリテーションは「凸凹を見つけて組み合わせる」技術


 僕がチームビルディングの現場で心がけているのは、まず会話のポゼッション率を均等に近づけること。そしてその次に、一人ひとりの「凸凹の形」を見極めていくことです。


 均等に発言できる場をつくると、それぞれのメンバーがどんなことに関心を持っていて、何を得意とし、何に苦手意識を持っているかが、自然と見えてきます。年次も役職も関係なく、対等な立場で意見を交わせる状態。それがあってはじめて、メンバーの凸凹の輪郭がはっきりしてくるのです。


 ファシリテーションとは、単に会議を進行することではありません。発言のバランスをデザインしながら、メンバーそれぞれの個性を引き出し、その組み合わせを見つけていくプロセスです。誰かの凹みを、別の誰かの出っ張りで補う。その掛け合わせの中から、一人では描けなかった絵が浮かび上がってくる。


 僕はこれを「コミュニティ型組織開発」と呼んでいますが、その根底にあるのは、多様な「個」が打ち消しあうのではなく、溶け合うことで新しい価値を生み出すという考え方です。心理的安全性は、その溶け合いが起きるための土壌にほかなりません。



あなたのチームのポゼッション率は、どうなっていますか?


 ここまで読んでくださった方に、ひとつ試していただきたいことがあります。次のミーティングで、チームメンバーの発言量を意識して観察してみてください。


 誰がどれくらい話していますか。話していない人はいませんか。その人は、本当に「話すことがない」のでしょうか。それとも「話せない空気」があるのでしょうか。


 会話のポゼッション率は、チームの健康状態を映し出すバロメーターです。数値化する必要はありません。ただ、意識を向けるだけで、見えてくるものがあるはずです。


 そして、もしポゼッション率に偏りがあると感じたら、「ところで、〇〇さんはどう思いますか?」というひと言を投げかけてみてください。その小さな問いかけが、チームの心理的安全性を育てる最初の一歩になるかもしれません。


 強いチームは、違いを恐れません。違いを見つけ、違いを面白がり、違いを活かして、まだ見ぬ絵を一緒に描いていく。その出発点は、全員が安心して声を出せる場をつくることにあります。


 あなたのチームには、まだ聞こえていない声が眠っているかもしれません。その声に耳を傾けることが、チームの新しい可能性を拓くきっかけになるのだと、僕は信じています。






 
 
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