AIは考えてくれる。でも、実行はしてくれない。AI時代のチームマネジメント/NOKIOO・小田木朝子さんと考える、AIとチームのこれから
更新日:10月6日

【この記事のまとめ】
AIで作業は目に見えて速くなった。それなのに、働く時間は減っていない。そんな感覚はないでしょうか。
AIは考えてくれますが、現実の世界で実行はしてくれません。だからこそ、人の時間は「人が動く仕事」に移していけます。
NOKIOO・小田木朝子さんと河原あずさの対談の前半から、AIをチームの一員として迎えるマネジメントを探ります。
【目次】
議事録はAIがまとめてくれる。資料の下書きも、あっという間にできあがる。それなのに、夕方になっても仕事は終わらず、むしろ以前より忙しくなっている気さえする。そんな不思議な感覚を持っている方は、少なくないかもしれません。
この記事は、人材開発・組織開発を手がけるNOKIOO取締役の小田木朝子さんと河原あずさの対談をもとにして作成しています。月1回ペースで続いてきたコラボの3回目、今回のテーマは「AI時代のチームマネジメント」です。対談は前半と後半に分かれていて、この記事は前半(あずさんのチャンネル)をもとにしています。
AIは「相棒」になった。それなのに、仕事は減っていない
小田木さんにとって、AIはすでに仕事に欠かせない存在になっているそうです。
常に傍らで動いて、一緒に仕事をしてくれる相棒みたいな感じになっていて。たった半年とか1年弱の期間の中で、もう切っても切れない関係性にしてしまうAIのパワーに、本当に驚いてますね。
一方で、ちょうど社内で「あれ、そういえば」という話になったことがあると言います。文章を書くのも、考えをまとめるのも、アウトプットにかかる時間は劇的に短くなった。議事録ひとつ取っても、以前は一次メモを取ってまとめて編集していたのが、今では何分の一の時間もかからない。それなのに、働く時間は減っていない。むしろ忙しくなっていないか、と。
ふたりはこれを「AI七不思議のひとつ」と笑い合いましたが、笑い話では終わらない論点です。AIによって起きている変化を、私たちはまだつかみきれていないのかもしれません。
空いた時間を、次の作業で埋めていないか
あずさんにも、思い当たる経験がありました。コンサルティングの仕事が多かった時期、ブラウザのウィンドウというウィンドウに生成AIの画面を開き、ひとつに指示を入れて動かしている間に、別のウィンドウでもうひとつ動かす。複数のプロジェクトを同時に進めようとした結果、日中、目が開かなくなるほど疲れ果ててしまったそうです。AIの処理速度は、人間の認知能力を超えています。それ以来、AIが動いている待ち時間に別の指示を打つのはやめて、目と脳を休める時間にあてるようになりました。
小田木さんは、この「生み出された時間」の行き先をこう捉えます。
何らかの時間は生み出せているはずなんですよね。じゃあその生み出した時間を何に使うのか、そもそも今は何に使ってしまっているのか。ちょっと無自覚だけれども、考えていいテーマだなって、すごく思うようになりつつありますね。
空いた時間を、無自覚に次の作業で埋めていく。それを続けている限り、AIがどれだけ速くなっても忙しさは変わりません。まず、自分が空いた時間を何に使っているかに気づくこと。そこが出発点になりそうです。
AIは考えてくれる。でも、実行はしてくれない
では、生み出した時間は本来、何に使えるのでしょうか。対談の中で軸になったのは、AIにできることと、できないことの線引きでした。
AIにできること:考える・まとめる・書くといった、構想とアウトプットを速くすること
AIにできないこと:現実の世界で人と関わり、人が動いて、何かを作り上げること
現実世界の実行っていうのは、結局、人と関わって、人を動かすとか、人に動いてもらうとか、人が動くことで現実の何かを作り上げるとか。そこの精度を上げることに時間を使えると、AIの中で構想するものと現実の世界がいい感じに前進していくことが、うまくリンクするのかもしれないなって思い始めています。
この小田木さんの言葉を、あずさんは「それはすなわち、マネジメントですね」と受けました。AIが空けてくれた時間の行き先として、人を動かし、人と一緒に何かを作り上げる仕事、すなわちマネジメントが浮かび上がってきます。
AIを「一人のメンバー」として迎えてみる
AIの話になると、つい「人かAIか」という二者択一や、仕事の奪い合いの構図で考えてしまいがちです。対談で出てきたのは、それとは違う「AIを含めたチームを作る」という発想でした。
ChatGPTにはChatGPTの、GeminiにはGeminiの、ClaudeにはClaudeの人格がある、とふたりは口を揃えます。小田木さんはChatGPTを仕事のパートナーに、Geminiを植物の育成や雑談の相手にと使い分けていて、あずさんにとってClaudeは、甘い判断に待ったをかけてくれる監査役のような存在なのだそうです。それぞれのキャラクターを見立てて、適材適所で役割をはめていく。まるでチームを組成するような感覚です。
例えて言うなら、超絶記憶力が良くて、超絶アウトプットの速度が速い新人が入ってきたようなものなんですよ。会社のことも業務のことも全く分からないけど、インプットしたら何でも返してくれる。そういう偏った新人に、じゃあどういう役割を与えるのか。周りの人たちとの関係性をどう組み立てて設計していくのか。そういう観点で入れていくと、みんなが腹落ちした状態でAIと関われるようになるのかなって。
このあずさんの見立てを、小田木さんはこう広げます。チームに新しい誰かが加わると、つい今のやり方に適応させようとしてしまう。けれど本当は、新しいメンバーが入ったのなら、仕事の進め方も、誰が何を担うかという分け方も含めて、新しく変えていけばいい。加わった側を今の枠にはめるのではなく、顔ぶれに合わせて仕事の側を変えていく。AIの導入は、その良い機会になるのかもしれません。
Potageで起きた、小さな革命
実際に、Potageの現場でも変化が起きています。PotageではEQ(感情知能)検査のフィードバックに、検査結果を独自に分析したレポートを使っていますが、その作成はこれまで手作業で、1名あたり10時間近くかかることもありました。半年の試行錯誤の末、数値を入れるとAIがレポートを吐き出してくれるところまでたどり着いた、その瞬間に起きた話です。
レポート作りに関わっていた2人のメンバーの業務が、ほぼゼロになったんですよ。そうすると何が起きるかというと、じゃあこのリソースが空いたときに、本当にやってほしい仕事って何だったっけ、っていう問いかけが生まれたんです。人海戦術で何とかしようとしてもらっていたけど、本来それをやってほしくて雇っているわけじゃない。どれをやっていくのが一番組織にとっていいんだろうって、考えるフェーズにようやく入れたんです。
小田木さんが反応したのは、空いた時間を「そこらにあるもの」で埋めようとしなかった点でした。空白ができたとき、手近な作業で埋めるのは簡単です。けれどそこで立ち止まり、本当にやってほしい仕事は何かを問い直す。こうした小さな革命は、これからいろいろな組織で起きてくるのではないでしょうか。
空いた時間の使い道は、選べる
AIが進化すれば、人の仕事は自然と本質的なものに移っていく。そのように言うこともできます。ただ、対談の締めくくりに小田木さんが置いたのは、もう一歩踏み込んだ言葉でした。
移っていくとも言えるし、意思を持って移していきたい、ですよね。さっきのエピソードは、結果的にそうなったというよりも、そこで問いを立てて、そこらのもので埋めようとしなかった。そっちじゃないよ、あっちだよっていうことを、選び取っていけたらいいなって思いました。
AIに時間を奪われて回し続けるのか、生み出した時間で人と関わり、現実を前に進める仕事に踏み出すのか。本当は選べるはずのその分かれ道を、無自覚に通り過ぎないこと。AIを一人のメンバーとして迎え、チームの形ごと問い直していくことが、AI時代のチームマネジメントの入り口になりそうです。この続きは、後半の対談(小田木さんのチャンネル)で語られています。
小田木さんの発信について
小田木さんのVoicy「明日の景色を変える仕事サプリ」では、仕事・キャリア・人生に効く音声を毎日配信中。後半の放送は以下からお聴きいただけます。
Potageからのご案内
PotageはEQ(感情知能)診断とワークショップを通じて、「感情を扱えるチーム」づくりを支援しています。まずは、個人や組織の感情の状態を知るところから始めてみませんか。
取り組み事例を読む
対談の出演者
小田木朝子さん(株式会社NOKIOO取締役)
人材開発・組織開発を手がける株式会社NOKIOO 取締役。Voicy「明日の景色を変える仕事サプリ」パーソナリティ。
河原あずさ(Potage株式会社代表/コミュニティ・アクセラレーター/思考調律師)
EQ(感情知能)と組織調律を軸に、チームづくりを支援。メンバーが本音を交わし、生き生きと成果を上げ続けられる組織づくりに取り組んでいる。





