
事例:
NTT データ様

トップエンジニアが前年比1.5倍増・支援制度誕生──つながりを起点に、学び続ける文化を醸成
組織の課題を明確化し、互いに学び合える関係性を育むコミュニティづくりに伴走するPotage株式会社。2022年10月より、株式会社NTTデータ(以下、NTTデータ)のみなさまと、社内学習コミュニティの活性化プロジェクトを実施してきました。NTTデータにはもともと100近くの自発的な学習コミュニティが存在していました。しかし、その価値は十分に活かされておらず、「どこに参加すればよいか分からない」「誰に相談すると必要な学びに到達できるのかが見えない」という課題がありました。この状況をどのように改善して、学びが連鎖する文化へ変えていったのか。本記事では、そのプロセスと現場の変化をご紹介します。

こんな方におすすめ
キャリア自律や人的資本経営を推進したいと考えている人事・経営企画担当者
社内に学習コミュニティや勉強会があるものの、活用しきれていないと感じている方
制度を整えたのに現場が動かず、モヤモヤしている人事・組織開発担当者

学習コミュニティが眠ったままになっていた理由──人的資本経営の実践を阻む"情報の断絶"
NTTデータの社内には、最新技術、クラウド、デザイン、業務領域別の研究会など、多彩なテーマを扱う学習コミュニティが100近くも存在していました。それらは社員の自発的な熱意から生まれた草の根活動であり、本来であれば組織の大きな資産になるはずのものでした。
ところが実際には、そのほとんどがTeamsのチャネルや口伝えでしか存在を知られておらず、学びたいテーマを持つ社員ほど入口が見つからない──そんな構造的なモヤモヤが積み重なっていました。「どこに参加すればいいのか分からない」「誰に相談すれば必要な学びに到達できるのかが見えない」。こうした声は、決して少数派のものではありませんでした。
担当者である技術革新統括本部の長谷川智亮さんは当時の状況をこう振り返ります。
「コミュニティの数は多いのに、社員が辿り着けない。価値が社内に埋もれたままになってしまう構造そのものを変える必要がありました」
人的資本経営を推進する上で、知識や経験を持つ人につながる「導線」が整っていないことは致命的でした。けれども逆に言えば、導線さえ整えることができれば、既に存在している学びの資産が大きく花開く可能性があったのです。
導線の再設計──"誰がどこで何をしているか"を見える化するところから始まった
Potageが最初に着手したのは、学習コミュニティそのものではなく「人」に焦点を当てることでした。専門領域や活動テーマを軸にしたコミュニティは数多く存在していましたが、そこを牽引するリーダーの想いや学びの背景が可視化されておらず、社員から見ると全体像がつかみにくい──その温度感のなさが、参加への心理的ハードルになっていました。
そこで企画したのが、コミュニティリーダーの活動を紹介するオンライン施策「コミュニティリーダー図鑑」です。月に数名のリーダーに登壇いただき、活動の目的や得意領域、コミュニティの雰囲気などをインタビュー形式で紹介、それらをグラフィックでまとめてイントラサイト上に掲載しました。
社員は、図鑑を見るだけで「この人に相談したい」「このコミュニティなら学びたい内容に近い」と判断できるようになり、自分に合う学びへの入口を見つけやすくなりました。
企画を中心的に進めた技術革新統括本部の荒川和教さんは、その変化をこう語ります。
「図鑑が公開されてから、学習コミュニティに対して社員が抱く心理的距離が一気に縮まったんです」
さらに予想外の効果も生まれました。コミュニティ同士の横のつながりが生まれ、リーダーが抱える小さな悩みや運営上の課題も共有されるようになったのです。それまで孤立しがちだったリーダーたちが、互いに支え合える関係性を持てるようになったことは、施策の持続性を高める上でも大きな意味を持ちました。

現場発の取り組みが経営層を動かす──コミュニティ支援制度の誕生
取り組み開始から半年ほどが経過した頃、本取り組みCommunity Leader’s Community(以下、CLC)の活動を経営層に共有する機会が訪れました。社員がコミュニティを通じて主体的に学び、資格取得・技術向上・他部署連携の促進など、業務成果に直結す る変化が生まれていることを具体的に示した結果、経営層はコミュニティ活動を正式に後押しする姿勢を明確にしました。
この意思決定を契機に、社内コミュニティを支援する制度が立ち上がり、年次イベント「CAMPFIRE」においてもコミュニティが主要コンテンツとして大きく取り上げられるようになりました。

現場発で始まった草の根の取り組みが、制度的な後押しを得て全社へ広がったこと。それは、組織文化が本質的に変化していく上で非常に大きな転換点でした。社員同士の情報や経験が循環することで、キャリア自律や専門性の深化に必要な"土壌"が整い始めたのです。
「組織として学び続ける文化」への進化──Peatixコミュニティアワード受賞が証明する自律学習の価値
CLC(Community Leaders Community)の活動浸透により、社員の行動には変化が表れてきました。技術領域ではPartner Top Engineerの認定者が前年の1.5倍に増加し、難易度の高い資格取得者も増えました。業務で困りごとが生じた際、コミュニティで知り合ったメンバーに相談して解決に至るケースが増え、部門を横断した協働のスピードが高まりました。
また、グループ会社を巻き込んだネットワーキングイベントには700名以上が参加し 、部署や世代を越えた学び合いが自然に生まれています。
研修ともOJTとも異なる、こうした「第三の学びの基盤」は社外からも高く評価され、2025年5月には全国約450のコミュニティの中から「Peatixコミュニティアワード2025」ビジネスコミュニティ賞を受賞しました。
特に、社員の自主的な活動が制度改革や文化変革へと連動し、事業・組織の両面に好循環を生み出している点は、他社事例でもまだ多くない特徴です。
リーダー支援の体系化や、草の根の活動を文化変革へと繋げた推進プロセスが、日本企業における新しい学びのあり方として社会的に認められたことを意味しています。
自律学習コミュニティのつくりかたガイドを読みたい方はこちら
※本活動の成果は日経クロステックの記事にもなりました → 対象の記事を読む
学びを「制度」ではなく「文化」として育てるために──Know-whoが組織を変える
NTTデータの事例が示す大きな示唆は、自律的な学びを支えるのは「制度」ではなく「人とのつながり」であるという点です。
どれほど教材や学習コンテンツを整えても、誰に相談し、どんな経験に触れられるかという"Know-who"の基盤が弱いと、学びは長続きしません。コミュニティリーダー図鑑で可視化されたリーダーの存在や、CLCで形成された横のネットワークは、学びの導線を明確にし、社員一人ひとりの行動変容を後押ししました。
従業員の自律的な学びを支えるのは「学びのための 制度」ではなく「従業員同士のつながり」である──。各自が持つ知見を分かち合う仕組みができれば、ボトムアップで学びが進んでいく。この事例は、そのことを鮮やかに証明しています。
NTTデータの取り組みは、学習コミュニティがキャリア自律の促進、専門性の深化、イノベーション創出、部署間連携の強化など、多方面に波及効果をもたらすことを示しています。Potageとしても、学びのコミュニティを基盤とした組織開発の価値を再確認するとともに、社員の成長が組織の成長へ確実につながる文化づくりを、今後も推進していきます。


